「魔法少女になりたいんです!!2016年全米を騒がせたVVなホラーをおっさんはこう見た!」ウィッチ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
魔法少女になりたいんです!!2016年全米を騒がせたVVなホラーをおっさんはこう見た!
魔女の作り方については、なにも決して新しいモノではなく、特に君たちのよく知っている作品としては、「魔法少女まどかマギカ 新編 叛逆の物語」というのもあるので、そのことについては触れない。
それら、えてして共通して言えるのは、悪魔とは結果として「そっと手を差し伸べる救済者」の存在と描かれている点である。
2016年全米を騒がせた本作だが、公開する劇場は新宿武蔵野館のみ。ある意味、悪魔の巣窟だが、実際そういう客層だったので、それはそれで楽しく鑑賞。
その意味では、魔女、と聞くとニヤニヤする君たちはぜひ観に行ったほうがイイ。
「ウィッチ」
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1630年、ニューイングランド。ウィリアムとキャサリンの夫婦は、敬けんなキリスト教生活を送るために5人の子どもたちと森の近くにある荒地へとやって来た。しかし、赤ん坊のサムが何者かに連れ去られ、行方不明となってしまう。家族が悲しみに沈む中、父ウィリアムは、娘のトマシンが魔女ではないかとの疑いを抱き、疑心暗鬼となった家族は、狂気の淵へと転がり落ちていく。
というのが、映画コムの紹介するストーリー。
しかし村を出た理由は怪しい。村の連中と対立しただけで、当時、セイレムの魔女裁判、という背景もあり、近辺のニューイングランドでもそのようなことはあったという前提でいうと、彼らは魔女だと、疑われていた可能性もあるし、魔女裁判にうんざりし、村を出た、ということかもしれない。
いずれにせよ、ここでは彼の「強い思い(こみ)」のみが語られるだけだ。
本作、よくキューブリックの「シャイニング」に似ている、という意見もあるが、「シャイニング」とは逆である。「シャイニング」はもともと狂った主人公が、そういう環境で、「目覚めた」だけであり、オカルトチックな描写はあっても、根本は彼自身の行動原理によるものであり、心霊現象は彼の妄想といってもいいようにできている。第一、キューブリックはオカルトを信じていない。
一方、本作ははっきりと、ルシファーと魔女の存在を描いている。
当時の人間としては、「黒山羊はルシファー」と知っていると思われるのだが、なぜ飼っていたのか、までは描かれていない。つまり、本作は、敬けんな信者が堕ちる話ではなく、敬けんであると思い込んでいる「すでに堕ちてた家族」の話とも取れるわけだ。
父親は薪割しかしないダメ親父。この親父の最期は、必要以上に割られた薪に埋もれて死ぬところは、本作の唯一の笑いどころ。だが彼にしてみれば、「自分のした仕事に埋もれる」という結果。
母親はまるで母親の役割をしない。この母親の最期は、最初に失った赤子が戻ってきたという幻覚を悪魔に魅せられ、カラスに乳首をつつかれる。だが、彼女にしてみれば、赤子に乳を吸わせているのである。
長男は、主人公である姉の胸元に欲情。結果、爆乳の魔女に誘われ、死の接吻を受け、素っ裸で恍惚とした表情で死ぬ。そう、彼もまた爆乳に抱かれ、キリストに赦しを得たという幻覚を見て死ぬ、という己の欲求を満した死。
双子の兄弟は、純粋無垢ゆえの残酷。それは常に現実からの逃避。黒山羊ルシファーとの会話を経て、魔女にいけにえとして宙に連れ去られる。
そんな家族の長女は
「悪魔からいかにスカウトされるか?」から、「いかに悪魔にスカウトしてもらうか?」に変わる。
みんな狂っていくのではなく、信仰に「狂っていた」結果、「幸福な」落としどころに落ち着くのである。
追記1
原題 VVITCH
タイトルがW(ダブリュー)ではなくVV(ヴイ)。
「V」は「ピースサイン」「ヴイ」「5」
一体なにを示すのでしょうね。魔法少女になりたければ、調べてみるといい。
追記2
セイレム魔女裁判については、映画「クルーシブル」という超傑作があるよ。そっちのほうが「ホラー」。
本作の森にいたのは、ウィノナか?(ただし爆乳ではなく、老婆の方)