「僕は泣けなかった」聖の青春 Ringoさんの映画レビュー(感想・評価)
僕は泣けなかった
後ろの方で泣いてる人がいて、その人が羨ましかった
自分は泣けなかったからだ
物語の中に集中して入り込めなかったことが主な原因かもしれない
どうしても、現実の羽生善治や村山聖が脳裏にチラついてしまうし
将棋の対局のシーンでは「どんなことを考えて演技してるんだろう」「本物が考えていることとは全く別だろう」「本物の表情や挙動を見て真似ているんだろうな」
などなど、全くもって自分の、現実の将棋情報が、物語の中に入るのを邪魔していた
加えて泣けなかった理由の一つに村山聖の人間性そのものが、自分の中に入ってこなかったことがひとつあるかもしれない
というのは、確かにこの映画で、村山聖がこれまでどのような振る舞いを人に対してしてきたかというのは分かったのだ
あらゆる暴言、傍若無人な態度は少し目に余るくらいだったし、実際にそういう態度をとったからこそ、そういった表現がなされているのだと思う
しかし、彼が一人でいるときに
どんなことを考え、どんな感情で、何に向き合っていたのかは伝わってこなかった
彼が一人でいるときは
漫画を読んだり、将棋を打ったり、まあきっとそういうことをしたんだろうけど、本物の村山聖が、一人でいるときはどんなことを主にして、どんなことを考えながら生きていたのかは分からない
それは仕方のないことなのだけれど、そのせいか映画においての村山聖(松山ケンイチ)が他人の目を通して見た一人の【キャラクター】でしかなかったのではないかと、自分は見えてしまった
自分は毎週NHK杯戦を見るのだが、習慣的に将棋を見る機会がある人にとっては、あまりこの映画の中に入る(没入する)ことが難しいのではないかと思った
もし自分と同じような人で、感動して泣いたような人がいたら、ただ自分の感受性が腐っているだけなのかもしれません