「真剣での殺し合いのような」聖の青春 LR_eryさんの映画レビュー(感想・評価)
真剣での殺し合いのような
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将棋に命を懸けたといえばかっこいいけれど、将棋に取りつかれて将棋しかできない将棋から離れることも逃げることもできない人たちの映画でした。
二十年前の話だから、美術も小道具も地味に古くて、生活臭がすごいのです。の汚部屋、錆びた軽トラと店舗、油染みた定食屋、黄ばんだ古本屋に爽やか看板娘。 旅館のきれいな障子と年季の入った襖、文字通り血と汗が染み込んだ駒。おじさん詰め込んで群れて煙草臭い控室。対局中の脂汗。
病気はあるけれどそれ以上に将棋しかできない村山さんは、無愛想で失礼でだらしないのだけど、周りのみんなが放っておけなくて助けてくれる、でも、やっぱり愛想なし。
羽生さん(役の東出さん)が、またおかしい。台詞は少ないけど扇子いじりの癖や貧乏ゆすりや目力、追い詰められて感情吹き出してる姿、勝ちにいく時の恐ろしい冷静顔、感想戦の自己解説。無表情っぽくて頭の中計り知れない天才のむき出しの感情や絶対理解できない怖さ全部見せてくれた、かも。
殺し合うような大局を何度も重ねながら、お互いろくに話もしない、差しで飲んでも話が弾まない、と、噛み合わない二人なのだけど、将棋の話になったときは、ラブシーンかとたじろぎました。
将棋の頂点に近いところまでいかないと、見えないものを二人で見ることができたのでしょうか。
ちょっと変わった棋士の伝記、じゃないです。将棋はいいぞみんなやろうぜ映画でもないです。闘病頑張る映画でもないです。 村山さんと羽生さんの殺し合い履歴見ながら緊張感満喫する映画です。 太ましい松山ケンイチ目当てでいいので、聖の青春見てください。胃がじりじりするよ!
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