「クールじゃない!」ブラックパンサー うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
クールじゃない!
王位を世襲する国であり、国際問題には非干渉主義。そして高度に発展した文明をあえて隠し、後進国だと思わせておいて侵略を防ぐというユニークな国ワカンダ。リアリズムのかけらもないが、どことなくニンジャの国のイメージを持たれていた日本を思わせる設定だと思った。移民も受け入れないし、希少な金属ヴィブラニウムを加工して文明の粋を追求する姿勢はバブル全盛期のようだ。
黒人のカルチャー、主にアフリカ由来のものを集めて構成した映画で、とにかく出てくる人物のほとんどが黒人というおよそ見たことのないストーリーは、世界的に大ヒットしているそうで、「クール!」のひとことで受け入れられた、シンプルなムーブメントに見える。しかし、これはマーベル・シネマティック・ユニバースの中でも「マイティ・ソー」と実は同じ構成の映画である。
どこかで見たことがあるようなお話を、全部黒人のキャスティングで撮っちゃっただけのことなのに、すごく大げさにウケているようにあおられて、見に行かないと時代に置いて行かれるような気持にさえなっていた。もともと、特殊メイクで原形をとどめないほどに加工された映像からは、その役者が黒人かどうかいまやそれほど重要ではないと思える。その証拠に、本作に(素顔で)出演しているアンディ・サーキスの存在がある。
彼は、普段は特殊メイクを施され、素顔がスクリーンに登場することのないスーツアクターのような存在だ。なのにこの映画では数少ない白人のキャストとして暴れまわっている。素顔で。顔の露出に関してはむしろ黒人が多すぎて女優の何人かは区別が付かないほどキャラがかぶっているほどである。アメリカの映画が大作ほどダイバーシティ=多様性を謳うのも、そのほうが国際的な映画マーケットでウケるから、ヒットするからだそうで、現実のアメリカ社会を反映したものではなく、世界戦略の一環に過ぎない。
だからあえてこの映画に言いたい「クールじゃない!」と。どうしてこの映画がこんなにウケるのか理解できない。こきおろすほどでもないが私には普通の出来の映画に見えた。
以下、気になったことをいくつか書いておく。
(ネタバレですご注意を)
・ところで主人公がブラックパンサーに変身して戦う理由がよくわからんのだが。
・赤いドレスを着た女性が長い槍で戦うシーンはまるで「最期のジェダイ」振付師が同じ人なのか
・劇中にアベンジャーズのキャストはほぼなし。あれだけ豪華にコラボしまくった「スパイダーマン・ホームカミング」はすべっていたのに。オリジナルキャストで勝負する姿勢はいさぎよし。
・高度な文明の発達は、主人公の蘇生に得体の知れない呪術なのか、儀式なのか、医療なのかとにかく説得力なさすぎるでしょ。雪に埋めるって、アフリカであり得るか?
・マーティン・フリーマンの役どころはエージェント・コールソンとかぶっている。
・ とにかく黒人の豪華キャスティング。うれしすぎる。特にスターリングKブラウンはさすがの演技力。