「「今日は皆さんにちょっとラグナロクをしてもらいます」」マイティ・ソー バトルロイヤル 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
「今日は皆さんにちょっとラグナロクをしてもらいます」
MARVELスタジオ作品の中でもやや重厚な路線が
特徴だったマイティ・ソー、3作目にして路線変更!
予告編もタイトルもB級感バリバリだった訳だが、
銀河の果てにブッ飛ばされた雷様ソーが故郷アズガルドを
目指す今回の道中は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
のようにライトでポップなノリでした。
...
謀略大好き弟ロキも、怒りの巨人ハルクも、今回は
これまでと違ってちょっとヌけててユーモラス。
新登場のヴァルキリーは呑んべえバイオレントガールだし 、
新門番スカージは二丁マシンガンに“デス”&“トロイ”と
名付けるようなイタすぎるセンスの持ち主だし、
ジェフ・ゴールドブラムもとぼけた口調で強権発動。
(あと隣のおばさんが色々と怖い)
主人公ソーはそんな周囲に振り回されて終始ドタバタだが、
本人も負けじとノリノリでジョークを飛ばしまくり。
音楽もこれまでと全く雰囲気が違い、
予告編でも印象的だったレッド・ツェッペリンの『移民の歌』
(カバーだけど)をクライマックスに持ってきたり、
ソー=雷様=電気ということなのか、70~80年代風な
エレクトロレトロなスコアもバリバリ利いている。
死の女神ヘラとの因縁や父王の秘密、ラストの展開など、
アズガルドにとって色々と衝撃的な出来事も起こり、
雰囲気的にも物語的にも大きなシリーズ変換点となった。
...
この路線変更が受けたのか、興行・レビューとも好調な本作。
このサイトでも軒並み高評価、なようなのだけど。
残念ながら個人的にはあまりこのノリに
ついていけなかったというのが正直な感想。
別に軽いノリがキライな訳ではないのだが
(『アントマン』とか超好き)、
さすがに今までの設定をブッ壊し過ぎではと感じたり、
ノリがライト過ぎて本来もう少しエモーショナルに
なりそうな所まで軽い感じになってしまっていたり。
...
まず、どうしたハルク、変身してるのに全然怒ってないやん。
ちょっと喋るくらいなら笑えるが普通に会話成り立つし、
“怒れば怒るほど強くなる”という設定は無いも同然だし、
出番もソーとデカい狼と闘っただけでおしまいって……
そんなお笑いと消化試合だけみたいな扱いでいいの?
ヘラ姉御もね、最初の無双っぷりこそスゴかったが
(タダノブー!!(泣))、そこからは細切れに登場しては
怖い雰囲気を出すだけで、あまり強敵感の無いまま退場。
物語の半分がソーVSノー天気な独裁者に割かれているので、
どっちがメインの敵だったか分からなくなるくらい。
あの最期もなんかフラストレーション溜まるしねえ。
ソーがパワーアップした意味あんまり無いじゃない。
せっかくオーディンの後継ぎとして覚醒したのに。
そもそもヘラが『アスガルドに留まれば留まる
ほど強くなる』という謎の前提にもピンと来ず、
ヘラが力を得ているアズガルドは都市を指すのか
土地を指すのか空間なのか、その辺が曖昧で釈然としない。
まあファイアー魔神スルトさんはアズガルドをまるごと
破壊したのでその辺は考えなくても良くなったが。
せっかくの大御所ケイト・ブランシェットを
勿体無い使い方してるなあ、と。勿体無いと
いえばアンソニー・ホプキンスも同様で、ずっと
捜してた父オーディンとの別れとかもアッサリだし、
彼が戦争に明け暮れていた過去の話も中途半端だし。
前作まであれだけ必死に守ってたナタリー・ポートマンも
「フラレた」の一言だけで済ましちゃうしねえ。
そこはまあ色々と制作上の都合なんだろうけどさ。
...
『人民こそ国である』という父の意志を継ぎ、流浪の民と
なったアズガルドの人々を導く王となるソーの成長譚、
という要素は好きではある。
原題通りのラグナロク(北欧神話における『終末の日』)
が本当に起きてしまうのも、思い切った展開だとは思う。
だけどそこも含め、あらゆるドラマが本作は薄い。
「今日は皆さんにちょっとラグナロクをしてもらいます」
みたいな(どこのビートたけしだ)。
なんというか、全体的な印象として「ノリが軽い」
というより「キャラや物語の扱いが雜」と感じてしまい、
たぶんそこが僕が本作を好きになれない理由だと思う。
という訳で、イマイチの2.5判定。
2.5~3.0で迷ったが、ちょっと厳しめに。
これまで鑑賞したMARVEL作品の中では、
一番楽しめなかったかな。
<2017.11.11鑑賞>