「.」ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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劇場にて鑑賞。記念すべき第一作『スター・ウォーズ('77・エピソードⅣ)』のオープニング・クロール(テキスト・スクロール)をその儘膨らませたシリーズ初の実写版外伝。一連のを知らなくても問題無いと思われるが、少しでも知識があればより愉しめる。世界観を含めた丁寧な描写と迫力ある地上戦が織り込まれ飽きさせない。既存作の間を埋める物語なので、登場人物達の運命は容易に想像出来てしまうが、テンポ良くメリハリが効いたプロットで、希望へ紡ぐラストも余韻を残す。ただ最後近く砂浜で二人っきりのシーンはやや諄く微妙。75/100点。
・多くの魅力的なキャラクターが登場しているが、シリーズお馴染みの“ハン・ソロ”の様な帝国軍側でも反乱軍側でもない立ち位置から描かれており、その立場や背景にも触れられている。更にシリーズでは珍しく帝国軍・反乱軍それぞれに権力争いや思想の相違等により、一枚岩では行かない対立・造反する様が盛り込まれており、作品の厚みを増している。
・饒舌でお節介な“C-3PO”や“ジャー・ジャー・ビンクス”の様なキャラクターによるおふざけシーンは抑えられ、その分重厚でややもすれば説明的過ぎると思わせるシーケンスが多く思え、好みの分かれる処であろう。尚、オリジナル原案でクレジットされているG.ルーカスは、本作をそれなりに評価している。
・物語は『エピソードⅢ/シスの復讐('05)』の三年後──『エピソードⅣ('77)』の16年前から始まり、その第一作の直前迄が描かれている。尚、F.ジョーンズ演じる“ジン・アーソ”が反乱軍から救出される強制労働収容所の在った惑星“ウォバニ "Wobani"”は、“オビ=ワン(ケノービ) "Obi-Wan(Kenobi)"”のアナグラムである。
・本作と同じ時系列(『エピソードⅢ/シスの復讐('05)』と『エピソードⅣ('77)』の間)で、ジェダイの生き残りが描かれたスピンオフ作で3DCGアニメのTVシリーズ『反乱者たち('14~)』が存在し、現在「シーズ3」迄、製作されている。
・これ迄に公開されたカノン(正史)版に繋がる流れは、『エピソード2/クローンの攻撃('02)』の4箇月後から始まり、『エピソードⅢ/シスの復讐('05)』の直前に繋がるスピンオフ作でCGアニメのTVシリーズ『クローン大戦('03~'04・全25話)』が存在する。更にこれを3DCGアニメとし、劇場公開した『クローン・ウォーズ('08)』も存在し、その後『クローン・ウォーズ('08~'14・全129話)』も製作された。
・"A long time ago in a galaxy far, faraway...."に続くテーマ曲とオープニング・クロールは無く、“暗黒卿”はいるが“ミレニアム・ファルコン”、ジェダイや“スカイウォーカー”を名乗る者、“フォース”を使うシーン等は登場せず、(赤色のみでジェダイの青や緑、紫色のは出なかった)ライトセーバーのチャンバラも無かった……等々、外伝──スピンオフ作としてか、シリーズの幾つかのお約束事は再現されなかった。
・監督によると、本篇の1/3は再撮されたらしく、その殆どは手持ちカメラ等によるドキュメントタッチの地上戦のシーケンスだったと云う。公開前のトレーラーの一つには、F.ジョーンズの“ジン・アーソ”とD.ルナの“キャシアン・アンドー”が設計図の入ったディスクを持って、地上を逃げ惑う本篇と齟齬をきたしてしまうシーンが見受けられる。
・サクッとしたエンドクレジットへの切り替えと表示法はシリーズのそれだったが、全篇における劇伴は耳慣れたシリーズのではなく、J.J.エイブラムスとよく組むMジアッキーノのが殆どで、少々違和感を憶えた。そもそも音楽はA.デスプラが担当していたが、本篇の大幅な再撮に伴いスケジュールが合わず没となり、急遽Mジアッキーノが一箇月で書き上げたものだと云われている。
・S.ワイルディング演じる“ベイダー”卿(心なしか身軽で身のこなしが若々しく思えた)は約一時間程出ないが、物語の肝となる肝心の設計図は2/3以上経過しないと登場しなかった。エンディングクレジットの最後になるロゴの手前、"Thanks"欄の最下段にはC.フィッシャーが表示されていた。そして殆どのシーンを竹馬に乗って撮影に臨んだと云うA.テュディックの“K-2SO”に心を奪われた。
・G.ヘンリーが演じた“モフ・ターキン”は、故人となったP.カッシングの容姿となる様に1コマずつ修正が施されたと云う。ラストで登場するI.デイラの“レイア・オーガナ”にも同じ手法が用いられている。この修正加工以外にもこの二人のキャラクターは、『エピソードⅣ('77)』の没カットを用いたシーンがある。
・クライマックスで登場する反乱軍のパイロット“ゴールド・リーダー”、“レッド・リーダー”等は『エピソードⅣ('77)』の没カットを使用している。同じくクライマックスで登場する女性パイロットは、『エピソードⅥ/ジェダイの帰還('83)』の没カットを使用している。
・『エピソードⅥ/ジェダイの帰還('83)』でカットされた“モン・モスマ”の(どこか松居一代を彷彿してしまった)G.オライリーは同じ役で出ていた。印象で云うと“キャシアン・アンドー”のD.ルナはギョロ目と髭が若かりし稲川淳二に思えた。亦、『エピソードⅧ('17予定)』の監督が決定しているR.ジョンソンは、スーパーレーザーを調整するトルーパー役でカメオ出演しているらしい。
・イラストによるコンセプトアート迄収録された豪華なパンフレットは、登場する用語や世界観も補足しており、簡易版資料集と云える。ただF.ウィテカー演じる“ソウ・ゲレラ”紹介ページの足元だけはご愛敬。
・鑑賞日:2016年12月21日(水)