「続編が無い事で特別な愛着を抱ける作品です。」ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
続編が無い事で特別な愛着を抱ける作品です。
2017年元日に“TOHOシネマズ六本木ヒルズ”のスクリーン2にて3D字幕版をオールナイトの最終回(日付としては1月2日)で鑑賞。
ジョージ・ルーカス監督が生み出し、現在はディズニー傘下で製作されている『スター・ウォーズ』シリーズ。2015年に10年ぶりに製作された実写版の新作となった『フォースの覚醒(エピソード7)』の大ヒットが記憶に新しい状況で、実写版としての初のスピンオフ作品である本作『ローグ・ワン』が登場し、期待度を高くして観てきました。
時は銀河帝国が支配する暗黒の時代。幼い頃に母親(ヴァレン・ケイン)を帝国軍のクレニック長官(ベン・メンデルソーン)に殺され、科学者の父親(マッツ・ミケルセン)から引き離されて育った女性ジン(フェリシティ・ジョーンズ)はある日、反乱同盟軍の秘密基地に連れていかれ、モン・モスマ司令官(ジュネヴィエーヴ・オライリー)から帝国の宇宙要塞“デス・スター”の建設に父親が関わっている事を聞かされる(粗筋、ここまで)。
“新三部作(99年〜05年)”よりも賛否が分かれ、否の方が多かった『フォースの覚醒』を個人的には楽しめ、ここでのレビューでも満点評価で絶賛したのですが、振り返ると、話に大胆さが無く、全体的に守りに入った作り、憧れを抱けない世界観などが、あまり納得いかず、いつ観ても面白い作品なのは間違いありませんが、「何か違うんだよな。今までと」という気持ちになり、レビューの点数を“4.0”か“3.5”ぐらいまでに修正したくなる一作だったので、本作はそうならない作品である事を願いながら観ていました。幸い、それを願う必要もないぐらい、文句の無い傑作に仕上がっていて、とても満喫できました。
私にとって『スター・ウォーズ』シリーズは『ターミネーター』シリーズと並ぶほど愛してやまない作品で、何度観たのか分からないぐらい数多く観ており、全てに愛着があるのですが、本作を観るまで、『新たなる希望(エピソード4)』に関しては全く疑問に思わなかったものがありました。それは「なぜ、デス・スターに弱点が存在するのか」という事で、同作のクライマックスで反乱軍の司令部が弱点を解析し、それが明らかになり、パイロットたちが出撃しても、ダース・ヴェイダーの率いる迎撃・追撃部隊に次々と撃墜され、なかなか、その目標地点に到達できず、弱点はあっても困難を極めた戦いだっただけに、何度観ても、弱点の存在理由を考えたことは無く、本作において、その存在理由が明らかになった途端に、「これは今まで疑問すら持たなかったことだ」というのに気づき、それに気づかせてくれた事で、今後に『新たなる希望』を観る際の視点が変わりそうな種明かしを見られただけで、意味のある作品だと思っています。
プロデューサーのキャスリーン・ケネディを除けば、殆どのスタッフが『フォースの覚醒』とは違い、作品の趣旨なども大幅に違いがあるので、比較して観るのは間違いだと思いますが、本作は話、設定、キャラクター、映像、音楽など様々な部分で大胆な要素が多く、一部で“俳優不要論”が沸き起こりそうなデジタル技術でのピーター・カッシングが演じたターキン提督の再現(俳優の若返り技術は近年、盛んになってきていますが、既にこの世を去った俳優を甦らせるのは例が無い筈)、C-3POのプロトコル型やR2-D2のアストロメク型でも、“新三部作”に登場した戦闘用モデルとも違うタイプの“K-2SO”の造形と映像表現でドロイドに新機軸をもたらし、『新たなる希望』の直前の話なのに“AT-ACT”、“タイ・ストライカー”、“U-ウィング”といった“旧三部作(77年〜83年)”に出てこない乗り物を登場させたり、アニメの『クローン・ウォーズ(08年〜13年)』と『反乱者たち(14年〜)』のキャラや映像(スター・デストロイヤーが一度に複数、“シュッ”とハイパースペースから出てくる)を出したり、取り入れる、“新旧”の懐かしのキャラの再登場など、“旧三部作”のファンを敵にまわしてでも、“新三部作”で世界観の拡大を行って、壮大さを見せたルーカスの姿勢を発展させていて、そこが“旧三部作”を愛するあまりに模倣しすぎて、世界観を狭くしていた『フォースの覚醒』よりも評価したいところ(“エピソード8&9”では本作並みの大胆さに溢れたものが観たい)で、お馴染みのオープニング・クロールやメインテーマが流れなかったり、本来はSF冒険ファンタジーなのにリアルで若干、シリアスな作風になっていても、大胆な要素が多く、憧れを抱ける『スター・ウォーズ』の世界が戻ってきたと実感しながら楽しみました。
本作で最も新鮮だったのは、主要キャラに今までとは違った意味で特別な愛着を抱ける点で、過去作ではルーク、ハン・ソロ、レイア、チューバッカ、3PO、R2、ヴェイダー、オビ=ワン、パドメ、パルパティーン等は、それぞれの三部作の始まりの段階で、次回作への登場(“旧三部作”の時は最初から三部作前提では無かったとの事ですが)が決まっていて、それは『フォースの覚醒』のレイ、フィン、ポー・ダメロンらも同じで、三部作が前提になっているだけに最初の作品で「この人たちが今後も主役を飾るんだな」と分かっている点で、ハラハラやドキドキが薄れつつありますが、本作は続編の予定が無く、終わり方からも続編は無さそうで、前日譚が作られたとしても、大半のキャラが本作で初めて出会うので、勢揃いする事は無く、本作限りの役割だけに、どんなに愛着が沸いて、「彼らの活躍をもっと観たい」と願っても、それが叶う可能性は殆ど無いので、キャラの特殊で特別な愛着を抱けた事が素晴らしいと思います。主人公から悪役に至るまで、嫌いなキャラが居らず、感情移入も、それぞれに出来るので、少し勿体無い扱いではありますが、もし、これで続編などが出来た場合には、この特別な感じが消えてしまうかもしれないので、何も製作されない事を願っています。
一つ残念だったのは、元日のオールナイトでの鑑賞だっただけに客席が空席だらけだった事で、とても面白い作品なので、もっと多くの人たちと観て、その時間を共有したかったと見終わってから、思いました。それ以外は大満足で、期待して観に行った甲斐があり、「繰り返し、観たい」と強く思うほど、全てを気に入っています。