「自己犠牲が美しいという、テロリストと同じ思想の人達が多いことが怖い。」ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
自己犠牲が美しいという、テロリストと同じ思想の人達が多いことが怖い。
『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー(2016)』
原題: Rogue One: A Star Wars Story
(あらすじ)
"スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望"の終盤で、デス・スターの設計図は「多くの尊い犠牲によって得られた」的な台詞がありますが、 その"尊い犠牲"のお話です。
スピンオフですね。今回はジェダイ達の物語ではなく、歴史に名を残さない一般人の物語です。
私語りになるんですが、"スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999)"で「所詮、お前と俺は違うんだよ」とジョージに言われ、いや!そんなことないよ!と縋ったのに、その後のエピソード2と3で、徹底的にジョージに捨てられ、ボロボロの私は、「もうSWは観ねえ!観るもんか!この私の頭の中で、新シリーズは作るんじゃい!それでいいんじゃい!」と、厨二らしい決心したんです。
なので、"フォースの覚醒(2015)"も未見でした。
けど、それを察したギャレス監督が「さとちゃの好きなイップマン(ドニー・イエン)出すからさぁ。それとさとちゃが好きな地上型兵器をバンバン出すからさー」と言われ(幻聴)。
あ、私、地上兵器の方が好きなんです。AT-ATとか、AT-STとか。
あの弱点を隠そうとしないフォルム(笑)
ブローザー・ブローディですら、レッグウォーマー的な物で細いふくらはぎを隠していたのに。あのアンバランス感。萌えます!
決定的なのは、レイア姫役のキャリー・フィッシャーさんの急逝。
何か、予感がしてたんですよ。
だから、いつ観ても良いように、事前に新旧3部作のセルフ・一挙放映は済ませてました。
あのー、こんなテンションで、本作を観て参りました!
うんと、2回(笑)
トータル、まぁいい出来だったと思うんです。
「所詮お前と俺は違うんだ」と、捨てられはしなかったですね。
むしろ「さとちゃ、こんなの好きっしょ?」と接待された感じがしました。
それ、ありがたいっちゃーありがたいですけど(すみません)。
もう、SWと和解してもいいような出来上がりだと思います。が、大絶賛とまではいかないです。
あ、偉そうですみません。理由は、後半でネタバレ含めお話します。
でも、画が旧3部作寄りになっていて、実際そこに存在している感が凄い。生々しい。
惑星ジェダの空の切ない色調とか、どっかのビーチで撮影されたラストの戦闘シーンとか、あの熱風を感じる密林とか。懐かしい古めかしいモニターとか、ワープとか。
あと、"スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望"は、シリーズの中でも一番の爽快ハッピーエンドだと思うんですが、あのハッピーの裏には、正義の為なら手段を選ばない集団がいた。
スターウォーズって、単なる美しい話しだけではない。っていう部分も、新鮮です。っていうか、はっとしました。
時代ですねー。勧善懲悪とか流行んないっすもんね。
新3部作で我慢ならなかった、"CGの悪いとこを全面に出した山崎貴クオリティ"な軽薄感("海賊と呼ばれた男"の感想は近いうちに!)がなかったので、とにかくほっとしました!
アナキンの動きをCGにされた時には、おいマジか!?って、映画館で言いましたもんね(笑)
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(以下、ネタバレあり)
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SWエピソード4への繋がりだって言ってるので、最初から出オチです。上にも書きましたけど、観客の殆どがエピソード4を観てます。最終的にどうなるか知ってます。
だから、エピソード4の感動があってこその物語。そんなファンの感情に、乗っかり過ぎな、頼りすぎなストーリーは如何なもんかなーと思いました。なんか感動ありきな感じが。
本作後、「フォースの覚醒」も観ました。
で、本作も2回目観賞してみたんですね。
したらやっぱり、SWシリーズ全ての中で、本作の主要キャラが一番弱いです。何故なら心理描写が浅いから。
主人公ジン(フェリシティ・ジョーンズ)は、幼いころに母を亡くし、科学者である父は帝国軍に拉致されます。ま、ジンの父がデススターの設計に深く関わってるんですね。
育ての親ソウ(フォレスト・ウィテカ―)とも、何かしら確執があって、どうやら犯罪者でもあるようです(ソウ、あんなに本編と絡まないキャラなら、要らないでしょう?)。
そんな複雑な生い立ちの主人公ですから、他人に心を開く無意味さを知っているだろう。同盟軍の為に働くなんて、知ったこっちゃねーだろう。と想像していると、何故か父親の命を狙ったキャシアン(ディエゴ・ルナ)&同盟軍の為に汚い仕事をしてた荒くれ者達(ローグ・ワン)と、たいして接点がないまま仲間になってしまう。
しかも、最初は「知ったことか」と言ってたジンなのに、何故か途中で「フォースと共にあらんことを」と……。
い、いつ、その考えに至ったんですか?フォースの、フォの字も言ってないような気がしますけど?
大儀の為に、自分の命をも厭わない。っていう話しかも知れませんが、荒くれ者達は「自分達がしてきた汚い仕事の浄化=贖罪」ですし、ジンに至っては明らかに両親の件に対する復讐でしょう?大儀は、後付けのように思えましたね。
あと、父親。
そんなに娘を思うなら、デススターの要の場所で自爆すればいいよ。
助かるように逃がしておいて、最終的に危険な任務を与えるのか。
父の愛情って、こんなもんじゃないでしょう?
SWって、「愛」で間違うじゃないですか。アナキンは別に、自分の私利私欲の為にダークサイドに落ちた訳じゃないですよ。
「小説は人物のリアル」と、奥田英朗せんせが仰ってました。
こんな奴、おらんやろ。と思われたら、物語は終わり。
SWシリーズの登場人物達は、時に反目し合いながら、だんだんと打ち解けて行くんです。 が、本作はそんなシーンほぼありません。
その点、"フォースの覚醒"は脚本がぐずぐずってしてる部分はありますが、主演のレイ(デイジー・リドリー)、フィン(ジョン・ボイエガ)、ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)を観た瞬間に、直ぐに好感を持ちました。引き込まれました。
賛否あるだろうカイロ・レン(アダム・ドライバー)も、父親の時代に対する歪んだ憧れと劣等感で捻れた厨二で、ヲタなコスプレ野郎。
現代の若者を上手いこと表現してる。
個人的にはこの痛々しいキャラ、秀逸だと思いました。
でも、本作にも魅力的なキャラは居ますよ。そう、ド兄です!
言っておきますが、私はド兄主演の「イップマン」が大好きです。私の好きなカンフー映画ランキングで、上位にくるくらいです。
本作では、宇宙最強の異名を持つド兄の本領発揮です。
でも、そこが、そこがいかんです!このド兄、ジェダイよりつえーじゃん!ってなるもん(笑)
ラストで、みなさん興奮のあのお方の戦闘シーンが観られますが、やっぱド兄の方が上だもん。
座頭市を彷彿とさせるキャラなら、ぜひ日本人で。真田さんで、丁度だったと思いますよ。
ただ相棒のベイズ(チアン・ウェン)は凄いです。存在感あるなぁ。
キャスティングに、お金の匂いはしますけどね。
中国での公開は今月だと思いますが、この2人でどんだけ稼ぐんでしょう?
最期に、私はどうしても大儀の為の自己犠牲が美しいとは思えないです。なんというか、大儀なんか、それぞれの側にある訳ですから。どちら側に立つかで、正義なんか変わるので。
だからそれを掲げて死にゆく人達というのは、考え方としてはテロリストと全く同じだと思うんです。
ラストのビーチ辺りの戦闘シーンに関しても、あれ戦争映画では度々見られる描写で、"スターウォーズ"が感じられなかった。
あ、長文過ぎですね。そろそろ止めないといけない。
ほんと、これは完全なる私の好みだと思うんですが。
ライトセイバーで人間を貫くシーンは、ちょっと止めて欲しい。
そういう武器ではないと思う。
以上、長々とすみません。