「「マーイケール・ベイ!」——ハルハラ・ハル子」13時間 ベンガジの秘密の兵士 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「マーイケール・ベイ!」——ハルハラ・ハル子
在リビア・アメリカ公館襲撃事件を取材したノンフィクションを映画化。
監督脚本マイケル・ベイ。
【ストーリー】
2012年。
北アフリカに位置するリビア国、その主要港湾都市ベンガジ。
そこは世界でもっとも危険な、イスラム教スンナ派の支配する地域だった。
市内の住宅地にあるアメリカ政府公館では、CIA局員による情報収集チーム"アネックス"が極秘裏に活動していた。
諸事情で武官は置けず、警護は民間軍事会社GRSにゆだねられている中、遅れてリビア入りしたフリーの傭兵ジャックは、各所で武装した民間人による不法な臨検がおこなわれるようすに、一触即発の緊張を嗅ぎとる。
そんなさなか、隣接するアメリカ領事館に新たな大使が派遣される。
領事館の防衛戦力主体は、地元のリビア人兵士。
反対するGRS派遣員たちだが、CIAにも大使館職員たちにも楽観がはびこっていた。
そして9月11日、かつて同時多発テロが決行されたその日、反米スンナ派にとって信仰心がもっとも高まるその夜に、領事館をとりかこむ群衆が暴発、暴動に発展してしまう。
GRSは大使を救出に向かうが——。
この事件の前年に、あの強烈に反米で旧東側陣営(ソ連中国)のイスラムの顔だったアメリカの仇敵カダフィ大佐が内戦でついに倒され、非常に不安定で危険なリビアを舞台にした実話ベースのストーリー。
いつものトンデモ展開やカーチェイスを封印した、マイケル・ベイ作品としてはとび抜けて地味な作品です。
それでもエンタメとしての基礎はしっかりしており、激戦区となったアメリカ公館は事前にわかりやすく説明してあります。
建物の四方すべてが敵地なのですが、とくに厄介なのがゾンビランドと名づけた一角。
敵が無限湧きするゾーンです。
バトルシーンも鑿岩機やトランスフォーマーなどの超変態兵器は出てこず、訓練された兵士に取り囲まれてからはアサルトライフルで牽制して後方から狙撃手がスナイピング、さらに相手がスナイパー殺しの迫撃砲を用意すると、屋上勢しっちゃかめっちゃかにされちゃうリアルな展開。
めっちゃ好きです。
マイケル・ベイ監督作で唯一ソフトを買ったのがこれ。
大使やCIAのデスクワーカーたちは感情移入無用とばかりにさっさと説明済ませて、そのリソースを戦闘するステージの構築や撮影に割りふるこの潔さ。
すべてがラストのバトルへ収束する、完全に冒険エンタメの面白み。
『アメリカンスナイパー』やら『ローンサバイバー』が撮られた時期の、実話ベースのリアル系戦争映画の一つですが、市街での防衛戦という一風変わった舞台になってます。
主人公コンビはいるんだけど、主役がいないというか、あえていうなら暴動それ自体が主役なのでしょう。
メイン撮影地は地中海のマルタ共和国。
リビアから海をへだてて北に200キロの小さな島国です。
ちなEU加盟国。
あとはイスラム圏舞台ではおなじみのモロッコでも撮影されたそうですが、まだまだ危険なリビアで撮るわけにもいきません。
アメリカンスナイパーも一部モロッコ撮影でしたけど、たぶんみんな思うんでしょうけど、ぜったいに建物とか服とか民族とか風俗ちがうんだろうなあ。
この手の戦争映画はまず現地では撮れないからしかたないけど、イスラム圏、それもリビア人からはツッコミとか抗議とかいっぱいあるんだろうな。
外国映画の日本描写も大概ツッコミどころ多いですけど、あんな感じで。
もひとつ言いたいのはタイトル。
原題直訳ですけど、ちょっとハリポタみがあって、ほほえみこぼれますね。それは君だけだよ。
どれだけリアルを意識して悲惨な状況を作っても、悲壮感うすめにキャラ付けしてあって、どこかゲームじみて見えちゃう。
これはもうマイケル・ベイ監督の持ち味です。
そういうところもふくめて、身構えずに楽しんでほしい映画です。