「被害者たち」13時間 ベンガジの秘密の兵士 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
被害者たち
ベイさんムービーとしてはド派手なエンタメではなく、ドキュメンタリータッチで迫真。
それもその筈。2012年にリビアの港湾都市ベンガジで起きた事件が基。
イスラム過激派の武装集団がベンガジにあるアメリカ領事館を占拠。
この時ベンガジは世界で最も危険な地域の一つだったらしく、襲撃のきっかけはイスラム教を侮辱したアメリカ映画だったという。同時多発テロからちょうど11年目の2012年9月11日にそれは起きた。
領事館は救助を要請。ベンガジにはCIAが秘密裏に設置した“アネックス”がいたが、存在が極秘の為、動く事が出来ない。
アネックスの民間軍事請負チーム“GRS”が命令に背き救出に向かうが…。
戦場シーンの臨場感と迫力は半端ない。
これまで散々ド派手アクションを描いてきたベイさんだが、それらとは違う。リアリティーと恐怖すら感じる。
鳴り響く銃撃音、爆発音。飛び交う銃弾。激しい銃撃戦。
終盤、敵の迫撃砲が炸裂。間近で爆発を受け、チームメンバーは負傷。腕がちぎれ、辛うじて皮膚一枚で繋がっているような状態…。そして犠牲者も…。
地獄のような戦場。
ベイさんだって荒唐無稽なアクションやSFばかり撮っている訳じゃない。“リアル”も撮れる。是非それを、劇場大スクリーンで見たかった…。(日本劇場未公開)
戦場の描写は言う事ナシ。
が、話の方は…。
概要だけ見るとそう難しい話じゃないのだが…、と言うか、事前に概要を知って見たので一応は把握出来たようなもんだが、何も情報仕入れず見ると話についていけない事必至。
とにかく、ストーリー展開が分かり難い。
序盤の経緯、アネックスやらGRSやらの特殊名称。誰が何処に所属しているのやら人間関係や相関図も交錯。
ベイさん印のノンストップ展開がそれに拍車をかける。
今でこそジョン・クラシンスキーは『クワイエット・プレイス』で知られるようになったが、特にGRSメンバーが皆髭もじゃ顔で判別困難。
ドンパチドンパチが始まるとさらに画面揺れも激しくなり誰が誰やら全く分からなくなる。
それがリアルな戦場なのかもしれないけど、何だか誰にも感情移入出来ず、展開もよく分からず、ただリアルで恐怖の戦場を眺めているだけだった。
大使館職員や救出に当たったチームの大部分は生還出来たが、大使やGRSの仲間も少なからず犠牲に。指揮系統の混乱が原因の一つ。
彼らへ捧げられているが、危険を顧みず闘ったGRSを称えるアメリカ万歳映画の感も…。
イスラム側の描写はほとんどなく、ただの敵としたステレオタイプのハリウッド映画だが、誰がいい悪いとか、正しいとか間違っているとか、勝者や敗者はいない。
誰もが犠牲者で被害者だ。