「密室サスペンスの傑作!『クローバー・フィールド』の続編にしたことが低評価の理由か…?」10 クローバーフィールド・レーン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
密室サスペンスの傑作!『クローバー・フィールド』の続編にしたことが低評価の理由か…?
モキュメンタリー・パニック映画『クローバー・フィールド/HAKAISHA』の精神的続編。物語上の繋がりはないが、固有名詞や世界観に共通する部分が見受けられる。
地下シェルターに閉じ込められた女性ミシェルの脱走劇と、世界に訪れた異変を描くSFスリラー。
囚われの主人公ミシェルを演じるのは『ダイ・ハード』シリーズや『スイス・アーミー・マン』のメアリー・エリザベス・ウィンステッド。
ミシェルの婚約者ベン役として、『イエスマン ”YES”は人生のパスワード』『ハングオーバー!』シリーズのブラッドリー・クーパーが、声のみという形でカメオ出演している。
製作は前作に引き続きJ・J・エイブラムス。
脚本に名を連ねるのは『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(脚本)『セッション』(監督/脚本)の、後のオスカー監督デイミアン・チャゼル。
前作はモキュメンタリーで制作されたパニック系怪獣映画だったが、本作ではジャンルを完全に変更。普通の三人称視点かつ密室でのサスペンス映画となっている。
この変更は個人的には大賛成。モキュメンタリーは酔うので苦手だし、前作は内容的に面白いとは思えなかったので…。
『クローバー・フィールド』の続編ということであまり期待していなかったのだが、予想に反した映画の出来に大満足!これ、密室サスペンスの傑作では!?
冒頭から突然の交通事故。そして何故か監禁されているというショック。
監禁している男はどう見ても不気味だが、自分は命の恩人なのだと言う。男は名をハワードと名乗り、世界は滅亡し地上は汚染されていると彼女に説明する。
ここまでの展開が非常にスピーディー。そのため全くダレないし、観客にミシェルと同じ混乱を与えてくれる。
物語の求心力も強く、早く続きを教えて〜!という気持ちを掻き立ててくれます。
この映画の凄いところは、登場人物がシェルターの中にいる3人だけという点。(厳密には助けを求めてやってくるおばさんがいるが、主要キャラはこの3人だけ)。
ハリウッドのSF映画で、ここまでコンパクトに作られた映画というのは本作以外ではなかなか思い当たらない。
しかし、コンパクトだからといって、地味でつまらないのかというと決してそんなことはない!
謎の男ハワードがむちゃくちゃ不気味なため常に緊張感があるし、彼の言っていることのどこまでが本当かわからないため、このおっさんが良い人なのか悪い人なのかわからないというミステリーに、どんどん引き込まれていきます。
ミシェル、ハワード、そして第三の男エメット。密室での時間を3人で過ごしていくうちに徐々に打ち解けていき、和やかなムードになるが、ある出来事でそんな雰囲気が一変する。
ここからの展開も手に汗握る感じでよかった。ハワードいい奴じゃん…からのやっぱヤバい奴!
展開としてはベタだが、演出のうまさと俳優の演技力が相まって濃密な緊張感が生まれていく。
終盤のvsハワード戦も含め、この密室サスペンスパートはかなり楽しめた♪
ただ、勿体無いと思った点もあり。
ハワードは実は殺人鬼でした😱という展開なら、やっぱりシェルターの何処かから白骨化した遺体が出てくるとかじゃないと。
死体というブツが出てこないとケレン味に欠けるかと。
最終盤になると、物語のテイストがガラッと変わる。
このクライマックスのSF展開は正直蛇足だと感じた。ハワードに比べると、宇宙人に怖さが足りない。
しかも最後は手作りの火炎瓶であっさりと…。ちょっと拍子抜け。
元々は『クローバー・フィールド』の続編ではない、別の映画として企画されていたらしいのだが、確かにこれは『クローバー・フィールド』シリーズでなくても良いかも。
前作を期待している観客から「こんなのクローバー・フィールドじゃない💢」という感想が出るのも致し方ないか…。勿論『クローバー・フィールド』のタイトルが入るだけで興行成績が大きく変わるのだろうが…。
SF要素がなくてもしっかり面白かったので、どうせ宇宙人オチにするのなら、もっと強烈でどぎつい展開にしないと映画全体が尻すぼみになってしまうな、と。
エンディングはかなり好き。人生から逃げ続けてきた主人公が、最後は自ら戦いを選ぶ。これまたベタだけどクールじゃないですか。
デイミアン・チャゼルがどれだけ関わっているのかはわかりませんが、彼の作品はどれもエンディングがビシッと決まっているので、観ていて気持ち良いです。
世界滅亡の危機という世界設定の中で、たった3人の登場人物を使い、ミニマムなサスペンスを展開するという意欲作。個人的には大満足です👍
bion様
コメントありがとうございます😊
そうなんです!実はデイミアン・チャゼルが脚本を書いているんです!
彼が関わっている映画は例外なくエンディングがカッコ良いので、オススメです♪