劇場公開日 2016年6月17日

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「世界が終わってもボトルキープはしておくべし」10 クローバーフィールド・レーン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5世界が終わってもボトルキープはしておくべし

2016年6月19日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

おそらくは世界観を共有している『クローバー・フィールド』は
アイデア勝負な側面が強かったとはいえ割と楽しめたし、
主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドも
ジョン・グッドマンも大好きな俳優さんなので
ちょっと楽しみにしていた作品。

『遊星からの物体X ファーストコンタクト』や
『スコット・ピルグリムと邪悪な元カレ軍団』など、
M・E・ウィンステッド出演作は個人的にハズレが少ない。
彼女自身も、常に目的を見据えているような強い眼がステキ。
今回演じるミシェルも機転の早さとサバイバル精神を
バリバリ発揮するキャラで、「泣いてる暇があったら
動け! 考えろ!」とでも言わんばかりに、むやみに
喋らず叫ばず行動で示す漢気(?)溢れる主人公。

相対するはジョン・グッドマンだが……いやはや、怖すぎよアンタ。
この方、グッドマンの名は伊達じゃなく、善人役を
演じるとめちゃくちゃ優しく良い人そうなのだけど
怖い役を演じる時は背筋が凍るような演技を見せる方
(『バートン・フィンク』を畏(おそ)れよ!)。
海軍出身のコントロールフリーク、妄執に憑かれた終末論者。
常に“感謝”を強要する傲慢さも怖いし、あのタイミング
での“髭剃り”なんてなんかもうグロテスクですらある。
果たして彼は「狂ってるが馬鹿じゃない」を地で行く悪党か?
それとも人並み外れて神経質なだけの善意の人なのか?
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さて、『クローバーフィールド』の名前を冠しては
いるが、基本的には密室劇の本作。なので
『クローバーフィールド』のようなモンスターパニックを
期待していた向きはガッカリするかもしれないが、
SF要素込みの密室サスペンスとして観れば
実にソリッドかつサスペンスフルな出来。

地下シェルターで潜伏生活を送るミシェル達。
地下シェルターの外がどんな状況なのかは断片的にしか
語られないが、グッドマン演じるハワードが言うには、
「謎の生物からの大規模な攻撃で、地上は毒ガスに汚染された」
まあ言ってる人がイッテる人なので、その情報もどこまで
事実か判断がつかないが、もし本当なら外に出た途端に死んで
しまうので、いつも破裂寸前の風船のように不安定な
ハワードの機嫌を伺うしかないというこのジレンマ。

少しずつ増えていく外界の情報、高まっていくシェルター内の緊張。
室内外からのダブルパンチで状況が目まぐるしく変わる為、
主人公ミシェルは常に一触即発の選択と決断を迫られる。
クライマックスなんてあっちへ走りこっちへ走りの
てんやわんや! ヤケ酒もたまには役に立つのね。
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という訳で、開巻から終幕までずっと頭グルグル、心臓バクバク。
小さな伏線がしっかり回収されていくシナリオも良く、
余韻やテーマ性はほぼ無いが、上映時間中はバッチリ
怖がらせてくれるSFサスペンス作に仕上がっている。
判定3.5~4.0で迷ったが、余韻の点からちょい厳しめに3.5判定で。

<2016.06.17鑑賞>

浮遊きびなご