「密室サスペンスもの」10 クローバーフィールド・レーン M.Kotaroさんの映画レビュー(感想・評価)
密室サスペンスもの
予告編を観た時に抱いた印象とはかなり異なる内容だった。ひとことで言うと「密室もののスリラー/サスペンス」。『クローバーフィールド』と関連がありそうなSF的要素は最後の最後になって顕著になるものの,それまではシェルターを舞台にわずか3人の登場人物がおりなす心理戦と恐怖を徹底的に描き出す。
シェルターの所有者であり,主人公の女性ミシェルを「監禁」したハワードの存在が本作品の恐怖のキモだ。通常であればハワードは,この手の映画によくある「精神を病み狂気をはらんだサイコパス」として登場したはずだ。「大気が汚染されて人類は死に絶えた」だの「来るべき時に備えてこのシェルターを作った」だのという発言だけを取り上げれば,そう思えるのも当然。ハワードの発言の真偽を確認するすべがないので,観客はミシェルと同じような心理状態に陥る。このオヤジは真実を語っているのか?それとも単なるサイコパスなのか?
最後の最後になってついに宇宙船(明らかに地球上の存在ではない)と異星人(これも明らかに地球上の生命体ではない外見)がその姿をあらわし,ハワードの狂気に満ちた発言が全てではないにせよ真実だったことが明らかになる。
ハワードが実の娘を殺したかもしれない異常殺人者である可能性は払拭できないが,彼が主張する一見すると突拍子もない「終末論」は,実は正しかったのだ。狂気と正気が同居しているハワードの存在こそが,この映画が醸しだす独特の恐怖感の象徴である。
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