「体験映画の超傑作」彷徨える河 tさんの映画レビュー(感想・評価)
体験映画の超傑作
アマゾンの映像が凄かった。それだけでも観る価値あり。近代から全く切り離された世界に没入できた。
セリフによる説明的なシーンがほぼ無い。よくある擬似体験型の映画。しかし、この映画は、製作者のその熱意をすごく感じる。今まで俺が観てきた体験型映画の中では、トップになるかも。映像が凄いだけじゃなくて、ざっくり言えば、原住民族たちの世界の認識方法を伝えるという、ただその一点のみを実現するために、全て(演出、音楽、脚本、役者)が構成されていた。
さらにすごいのは、この映画から近代的な形式的な価値観(・・・と、言ったら良いのか)を意図的に削いでいること。「西洋文明は原住民族をこんなに酷く搾取していたんだ」みたいな、近代的な思想が全く感じられない。だからすげー。近代人の思想や主張や見方を削いでる。
カラマカテ(原住民族)の「物を捨てろ」ってセリフが印象的。
原住民族は「所有する」という概念が無いのかもね。むしろ、彼らは自然から「所有されている」と考える。
人間は自然の所有物(原住民族の考え方)。
自然は人間の所有物(近代人の考え方)。
どちらもフィクションなんだよね。
この映画を見ると「所有する」という近代人の考え方自体が、土台、人間には無理ゲーであることを示唆しているような気がした。「所有する」って脆弱なフィクションなんだよね。所有権など、いつだって捨てられるし、自分以外のみんなが所有権を信じなければ、効力を発揮しない。
対して、人間は自然の所有物というのは、自然界の摂理だから、とても強力なフィクションなんだよ。
布教区周りのエピソードは、近代人の「所有」というな考え方がいかに馬鹿げていて、害悪であるかを示していた気がする。
さて、「近代人」と「原住民族」どちらが賢いと言えるのだろう?
自然界の摂理を全く理解していない近代人の方がよっぽどバカに見えるんだよね。
改めて思ったことなんだけど、この映画、音がめっちゃ良い。この映画を印象付けているのは音なんだよな。河の音(+ジャングルの音)がずーっと流れ続けている。音の力ってすげぇ(音の力というよりも人間の身体の神秘なのかもしれませんが)と改めて思う。
風の音って、木がないと聞こえないんだよな。風で木が揺れるから風の音が聞こえる。
水の音は、海か川がないと聞こえない。