「コインと同じ人の心」レディ・プレイヤー1 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
コインと同じ人の心
圧倒的世界観
ゲームの中のリアリティと2045年のアイオワ州の世界観を見事に作り出している。
物語の構図はいたってシンプルだが、VR世界の中とゲーム世界の中のリアリティ感が抜群過ぎてすばらしい。
そしてテーマ性
些細な勇気と友情
人生で体験した些細な勇気を出せなかった後悔と、VR世界ならではの出会いと友情
この友情はリアルなものであると主張することで生まれる近未来への希望
さて、
現実世界でもそうだが、VR世界であればなおさら支配欲が現実的な意味を持つのだろう。
IOI 株主 ソレント 多額の出資とプレイヤーを使ってキーを取得するために翻弄する。
目的はハリディの財産
この目的のためにすべてをかけて争うのは人間の性だろう。
しかし作者はその根源に焦点を当てている。
グリガリアスゲーム社を立ち上げたハリディとモロー
ハリディの死 親友の死 喪失という現実とモローの思い
女性に奥手のハリディは、あのとき彼女をダンスに誘わなかったことを一生後悔したこと。
そんな彼のことを誰よりもよく知りたいと思っていた主人公ウェイド
彼の心の揺らぎ 人生の揺らぎが何かを探り当てていく。
それこそがハリディの感じた人生 人生に付けた足跡
それは決して心地いものではなく、むしろ人に知られたくないことだろう。
しかしハリディはそれをカギのありかを示すヒントにした。
本当の人の心
そこにあったのは単なる後悔ではなく「本当の気持ち」
喜びも傷つくのも本当の気持ち
謎解きをしながらウェイドはアルテミスと出会い、仲間たちと出会う。
最後に勝ったのはウェイドだったが、彼は自分がグリガリアスゲーム社のオーナーになる契約書にサインしなかった。
「同じ轍は踏まない」
その事が招いてしまった現在のIOIという存在
そうしてウェイドはすべての株式を手に入れるが、それはハリディやモローが思った通り、彼ら5人で分配し、IOIを分割排斥、そしてごみ溜めに住む住人らに新しい住処を提供することを決めた。
これからの勝者の思想
日本人にとってはよく聞かされた昔ばなしのように至極普通の話に感じるが、この再分配の概念は欧米人にとって新しいのだろう。
しかしアバターとは面白いものだ。
なりたい自分 人間の様態でなくてもいい 宇宙人やバケモノ、機械でもいい。
各々が思った通りの姿で遊ぶ。
この自由さの中に支配したい概念が持ち込まれることで発生する不自由さの再来。
ボーナス目当ての宝探し
勝ったものだけがすべてを手に入れられる概念。
人本来の資質
これらがしっかりと設定され描かれている。
そしてどれだけVR世界の中にハマっても、週2日だけはその世界をクローズドする新しいルールの採用。
この価値観
中々すばらしい作品だった。
ただ、
作中に登場するアメリカ合衆国宇宙軍そっくりなマーク
これは翌年の予言なのだろうか?
このあたりがどうしても陰謀論となる要素だ。
人々がVRの中で生きる世界
現実という失望から逃れる世界
そこに集まるお金
この作品の結末のようになるのはとんでもなく難しいように思う。
作品としての新しさ面白さは際立つものの、実際の人の性は果たしてどんなものだろう?
「コイン」のように裏表が変化する人間の心
これこそがこの作品が指摘している点なのかもしれない。