「珍作」レディ・プレイヤー1 JIさんの映画レビュー(感想・評価)
珍作
荒廃した未来世界、ヴァーチャル世界「オアシス」で開発者の遺言に駆られた人々が、一斉にゲーム世界での宝探しを競う。中盤からは非道な組織と年若い主人公等との争いになり、主人公側が勝利。ゲーム内にいた開発者から現実で生きる素晴らしさを説かれ、現実での幸福な人生を始める。
アクションとコメディの映画で、内容の半分以上が引用、パロディネタという珍作。
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最近、アメリカでの過去の人気作のリメイク、日本でのアニメやマンガの実写化が話題になりますが、今作はそういったものに共通する、映像的な面白みに注力しています。つまり、既に知っているものが作り変えられ、再提示されることで新鮮に見えるという愉快さを、極度に積極的に用いたエンターテイメントでしょう。
セリフ上では制作者たちから「ねえ、この映画知ってる?」「このネタ分かる?」って言われているみたいな、オタクっぽいネタが頻出です。
ただし、私はセリフでの引用ネタはあまり面白がれませんでした。字幕で読んでいるから、というのが大きいかもしれませんが、引用の仕方がオシャレに感じられません。セリフにもう一捻り欲しかったかもしれないです。「メカゴジラ!」「アキラの金田のバイク!」ってわざわざ言わなくても良いような気がします。(世間的には盛り上がってるのにスミマセン。)
ただ、未来の人が何十年も前の娯楽の話で盛り上がっている、というのはちょっと面白いと思いました。
アクションシーンはかなり好きです。めちゃくちゃにゴチャゴチャしてはいますが、迫力があったし、大人数が入り乱れている感じが賑やかで良いです。ゲーム世界という気楽さのおかげで、現実なら結構悲惨な破壊のシーンを痛快に楽しめました。死が深刻な問題じゃないので、巨大な相手に突っ込んでいっても、恐怖感よりむしろワクワク感の方が勝っています。
ただ、後半の、現実とゲーム世界での危機が並行するのは、ちょっと余分な気がします。現実に見せかけた映像で敵を騙すシーンは面白かったけど、敵の陣地内に潜入して…とか敵の車が乗っているトラックに体当たりしてきて…みたいなチマチマしたスリリング要素はなくても良かった気がします。そこに別に驚くような視覚体験や、印象的なアイディアはなかったように思います。有名キャラが暴れまわるのを集中して観ていたかったです。
恋愛要素も、ゲーム世界での恋愛というのはちょっと新鮮ですが、それ以上は特に新しさはないような気がします。
(もちろん、私の好みの問題ですが)
映画の最終的なメッセージが、現実の方が素晴らしい、的な内容だったのにはやや説教臭さが感じられ、スッキリしないです。ヴァーチャル世界のおかげで現実が一層楽しくなった、とかではダメなのでしょうか。
とはいえ結局のところ、知っているキャラがハイクオリティな映像で動き回っているという視覚体験だけでもかなり面白がれましたので、観て良かったです。