ダンケルクのレビュー・感想・評価
全124件中、1~20件目を表示
「生への執着」に絞った、戦争ドラマのない戦争映画。
◯作品全体
自分の頭の中にある戦争映画とは、少し違う感覚の映画だった。
映画において戦争ドラマは登場人物が気の合う・合わないを抜きにして、軍隊の規律によって強制的に同じ空間いるのが常だ。その中で衝突したり、理解しあったりすることでドラマが生まれるわけだが、本作にはそうした戦争ドラマコミュニティはほぼ存在しない。
陸を舞台にしたトミーの物語は、一貫して生き残るための脱出口を探し続ける。そこに生身のドイツ兵は描かれず、立ちはだかるのは砲弾と階級や部隊に縛られたイギリス兵だ。後にフランス兵だとわかるギブソンとは長く時間を共にするが、会話らしい会話を一切していないのが興味深い。それによって兵士同士のドラマではなく、生き残ることへの泥臭い執着に焦点が絞られていた。
そして陸から溢れる生存への執着に呼応するように、空からは生存への脱出口を作り出す姿が描かれる。計器が壊れても戦う姿は陸の兵士とは対比的だが、墜落してしまえば生き残るためにもがかなければならないのは陸の兵士と同様だ。
それぞれがもがき、生き残ることで、イギリスという国家も生き残る。この部分は海での物語で遊覧船の船長が「国が滅べば帰る場所はなくなる」と話していたが、ミクロな視点でもマクロな視点でも「生き残るために」に一貫していた作品だった。
生き残るため最善を尽くすことに、多くの言葉はいらない。「ドラマ」よりも「執着」を描いた本作は、戦争映画でありながら戦争ドラマを描かない独特な作品だった。
◯カメラワークとか
・ポジフィルムっぽいグラデーションのかかった空、海の青が印象的だった。
・序盤で街を抜けて海岸にやってきたトミーのカットが良かった。奥に色彩豊かな街があって、手前には鈍色のコンテナが並ぶ。色のコントラストがかっこいい。
序盤はかっこいいレイアウトが多かったけど、後半はアクションが多くて撮り方も普通のアクション映画だったのが少し残念。ラストの燃料が切れた戦闘機のシーンも綺麗ではあったけれど、ちょっとフィクション臭さが強かった。
◯その他
・セリフがほとんどないっていう試みは面白いんだけど、序盤でトミーたちが担架を運ぶシーンで乗り遅れそうなのに「どいてくれ!待ってくれ!」とか言わないの意味わかんないし、ギブソンはフランス人だから喋らないっていう意味付けみたいなものをトミーにも与えてやって良かったんじゃないかなって思った。
戦争映画に「時間」の概念を絡ませた異色作
もぬけの殻となったダンケルクの市街地を抜け、海岸線がスクリーンいっぱいに広がった瞬間、これまでに感じたことのない映像の深遠さが胸を貫いた。そしてここから陸・海・空の3つのタイムラインを駆使したダンケルクの撤退作戦が展開するなんて誰が予測しえただろう。
さすがノーラン作品には「時間」という概念が密接に関わってくる。『インセプション』と同じく3つの異なった時間の尺度を展開させる手法には舌を巻くばかり。その結果、各々のテリトリーが交錯する「点」にて運命がスパークするわけだが、この語り口はもはや戦争アクションを超えた、緻密なるサスペンスの域と言えるだろう。
ちなみに、本作ではトム・ハーディが操縦する戦闘機内に響く無線音声の中でマイケル・ケインのカメオ出演がある。かつてケインが『空軍大戦略』で空を滑空していた映画史を押さえておくと、ノーランの密かなこだわりをさらに深く咀嚼することができるはずだ。
故国へ連れ帰れ! 〜 ダンケルクからの救出
1940年の第二次世界大戦、ドイツ軍に包囲され、フランス北部のダンケルク海岸に追い詰められた英仏連合軍兵士33万5千名を救出した「 ダイナモ作戦 」を、ダンケルク海岸・海上・空、それぞれの兵士達の視点から捉えた作品。
未だ若きイギリス陸軍兵士トミー( フィオン・ホワイトヘッド )、民間の徴用船船主ドーソン( マーク・ライランス )、戦闘機スピットファイアを操る英国空軍パイロット、ファリア( トム・ハーディー )とコリンズ( ジャック・ロウデン )、何度も攻撃を受ける桟橋で乗船の指示を出す英国海軍中佐ボルトン( ケネス・ブラナー )。
ドイツ軍からの爆撃を受け撃沈する艦艇。生存をかけ海へと身を投じる兵士達。
極限状態での兵士達の孤独な戦いを、臨場感溢れた映像でクリストファー・ノーラン監督が描く。
ー 我々は決して降伏などしない
ー ダンケルクスピリット
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕)
取り残されたものと逃げ延びたもの
第二次世界大戦の初戦、ドイツ軍に追い詰められた連合軍が撤退した史実「ダンケルクの戦い」を描いた作品
桟橋まで無事たどり着くも運に恵まれず戻ってきてしまう二等兵
無謀だと思いながらも遊覧船で出港する船乗りの親子
劣勢だけども死力を尽くすイギリス空軍のパイロット
これら三軸の目線で描きやがて一つにまとまり物語が終焉を迎えるのは上手い構成だなと感じた。
主人公の一人の二等兵は無事フランスから逃げ延びるも、パイロットの一人が捕虜になり、桟橋にいたイギリス軍の上層部が泣く泣くフランス軍を見捨てなければいけない、ひょんなことで命を落とす少年が出てくるなど、ちょっとビターなラストだけれど「誰かを助けたい」そんな人間の強さや優しさがこのメッセージなのかなと思った
そんなドラマ面も良かったですが音を立てて飛来するju87爆撃機、次々と撤退する船を襲撃するhe111双発攻撃機、飛行機好きだからこういう軍用機がしっかりと演出されているのが嬉しかった
ダンケルク魂
英国人監督が撮った、英国人にはものすごく受けるであろう映画。陸海空の3つの視点(それぞれにメインキャラクターがいる)からダンケルクを見せ、そしてそれらがシンクロする仕掛けになっていて、よく出来ていると思う。この監督はCGが嫌いらしい(英国側の戦闘機はたった3機しか出てこない)のだが、音響効果も相まって臨場感は凄い。特に火の海のシーンは印象に残った。ドイツ兵は全く出てこないし、敵と撃ち合うシーンもほぼ皆無なので戦争映画と思って観たら肩透かしかも。映画を観終わって改めて歴史を検証してみたら相当史実を脚色しているようだが、映画なのでまあそれは許されるだろう。知らなかったのだが、英国には"ダンケルク魂"という言葉(最後まで諦めない強い気持ち)があるらしい。不思議なのは、何故ここまで追い詰めたのにドイツ軍は英国軍が脱出する時間を与えたのか?ということ。
怖いけど何か心動かされる
................................................................................................
第二次大戦で英仏連合軍がドイツに攻められ、軍の10万人が孤立する。
国は本土決戦に向けて救援軍を出さず、民間に救出を依頼した。
大きく分けて次の3つの群像劇から成る。
英国陸軍の8人組が脱出船に乗るも撃沈され、オランダ商人の船を奪う。
しかしうち1人が実は仏兵と分かり、重量オーバーのため下船させようとする。
そんな折に乱軍になってみんな何とか助かる。
依頼を受けた遊覧船の船長が命がけでダンケルクに向かう。
で不時着したパイロット2人を助け、さらにダンケルクで大勢救出。
しかし事故で乗組員一人が命を落とす。他にも民間船が集まり大救出劇に。
戦闘機3台が救出作戦の援護に向かうが2人が撃墜され海に不時着。
彼らは上記で救われる。そして残り1人が敵戦闘機を撃墜。
これにより救出作戦は一定の成功を得る。
................................................................................................
やはり戦争は怖いなって思うなあ。色んな狂気が生まれる。
劇場で見たんで、銃弾の音が正直怖かったわ。
みんな助かってって、祈るような気持ちになってしまう。
しかし敵は戦闘機が出るだけで、陸軍も近くにいるはずなのに姿を見せない。
一体どこに敵がいて、どうやってそれから逃れたのかよう分からんかった。
あと日本みたいに生きて帰った兵が叩かれることなく、
よく生きて帰って来たって国民に歓迎されるのが象徴的、これが嫁の感想。
3つの視点の臨場感と生死の境
砂浜1週間、救助に向かう船1日、空軍1時間を平行して描きながら、最後に時間軸が交わって合わさるという手法。無駄なセリフや説明を極力省いた映像、カットでシチュエーションや心情を描く。砂浜には、救助を待つ40万人の兵士。相手の攻撃に対しては無防備で、怯えていて戦う意
欲は低い姿で描かれる。船の視点は、民間人が様々な船を持ち寄って徒手空拳で救助に向かう感じ。途中、兵士を拾うが、メンタルやられていて暴力振って、そのとばっちりで弟が亡くなるも、一言も責めない。戦争のせいでそうなった理解していても、ちょっと不自然?父が早く関われば、何とかなったのでは? 船の視点は、兵士を第一に考える、何でも助けてあげたいという心情か。空の視点では、限られた燃料、壊れた燃料計に関わらず、自分のことは後回しにして、メッサーシュミットや相手の爆撃機を撃墜していく英雄的な扱い。実際、最後はエンジンが止まった後も良い仕事をする。
兵士を乗せた掃海艇(砂浜から脱出した脱出した兵士含む)が爆撃されるところで、3つの時間軸が交わる。あのシーンをそれぞれの視点から見ると、こういうドラマが進行していたのかっていう面白さ、物語の交わる感じがあった。神の視点で見れば、こんな感じなのかもしれない。
自分は、満潮を待つ船のシーンが印象に残った。船の横腹に穴が空き、敵の射撃訓練?と騒ぎつつ、穴から浸水。穴を塞ごうとした兵士は銃弾に倒れる。船から出れば人がいることがばれる。そのままいても浸水して沈没。エンジンを動かすが、人がいることがばれるわけでハチの巣へ。上官がいずに、助かろうとしている場面では、合理的な判断ができずに、「お前が先に行け」という、なすり合いになるっていうのがリアルだった。
また、戦場における生死の境は、数十センチ。ちょっとずれていれば砲弾や銃弾の餌食になっていたって描き方も、戦場を雄弁に語っていた。
こういう戦地からの脱出劇をリアルに描いたという意味では、恐らく始めてであろうし、3つの視点をリアルかつ丁寧に描いていて、戦場にいるかのような、確かに監督が言う通り体験的な映画であった。
感情が揺さぶられるということよりも、実際の戦場で脱出しようとする際に起こっていることを重層的に描こうとしたという映画か。
ダンケルクの名誉ある撤退
ダンケルクの名誉ある撤退(1940年5月26日~6月4日)
ドイツ軍に完全に包囲されたフランスのダンケルク。
その10日間。
英国陸軍2等兵のトミーがドイツ軍に襲撃されて、
たった一人生き残り、ダンケルクの浜にたどり着く。
そこまでの「陸の一週間」
ドーソンなどの民間船が救助に向かう「海の一日」
6月4日のイギリス軍の戦闘機に襲いかかるドイツ戦闘機を
迎撃する「空の1時間」
その「陸・海・空」の戦いががクロスして描かれる。
異様なほどの緊迫感と臨場感そしてラストに従って起こる高揚感。
撤退という後退を描きながら、戦意が高まっていくのは何故だろう。
ケネス・ブラナーのボルトン海軍中佐。
英国戦闘機スピットファイアのパイロットのトム・ハーディ。
その他の大物俳優はほとんど出演していない。
多くは名も無き若き兵士たちだ。
だが、この映画の何が新しいのだろう?
ともかく新鮮なのだ。
ともかくリアルなのだ。
今そこで起きてる戦闘のように、迫ってくる。
多分、カメラだ。
撮影がいい。
目の前、手の届くすぐそこに兵士がいて、戦艦に魚雷がぶつかり火を吹き
海は火の海。
兵隊はゾロゾロと船底から出てきて、船から這い出す。
夜の海に浮かぶ兵士たち。
本当に6月4日の穏やかな海で良かった。
凍えるほど寒くない。
呑まれるほどの高波もない。
不幸中の幸いかな。
ハンス・ジマーの音楽は主張せずに寄り添う。
メロディ・ラインよりオーケストラの低い響きを優先する。
「ダンケルクの救出」
居合わせた40万人の兵士のうち33万五千人が
救出されました。
名誉ある撤退。
民間船に応援を要請したチャーチル及び連合軍の指揮官。
この民間船(貨物線、漁船、遊覧船、救命艇にヨット)
民間船は沖で待つ駆逐艦に兵隊を乗せてピストン輸送。
この撤退作戦を【ダイナモ作戦】と呼ぶ。
ダイナモ・ルーム(ダイナモとは発電機のことで、
ドーバー城地下の海軍の指揮所の一室)
そこにイギリス海軍の中将ラムゼーが作戦を計画し、チャーチル首相に
ダイナモ・ルームで作戦を説明した。
民間船と民間人が救出劇に参加して、大きく貢献したことで
連合軍の士気は大いに盛り上がったのでした。
ダンケルクの戦いを今に伝える映像が素晴らしかったです。
脱出という勝利
まずは兵士たちの行動を追体験しているかのような臨場感のある映像に驚かされる。
兵士めがけて発射された銃弾や爆撃のリアルさ。
もちろん銃弾は目には見えないが、金属などにぶつかる破裂音や船倉に空いた穴の描写がとても生々しい。
またこの映画では何度も登場人物が海水に飲み込まれそうになる。その恐怖もとてもリアルに感じられる。
ただこの映画は戦争のリアルをそのまま描いた作品ではない。
もちろん戦争の悲惨さを伝えてはいるが、ノーラン監督らしい時間と空間の使い方に工夫が施されており、編集の巧みさが観る者にある錯覚を感じさせる。
物語は三つの視点から展開する。
まずはダンケルク海岸に取り残されたイギリス兵とフランス兵の視点。
兵士を救うためにダンケルクを目指す小舟の船長たちの視点。
支援のために飛び立った三機のスピットファイアのパイロットたちの視点。
そして時間の流れも、それぞれに陸では一週間、海では一日、空では一時間と異なっているのに、あたかも同じ時間軸で展開されているように描かれている。
これがこの映画のトリックであり、観る者に差し迫る緊迫感を与える。
この映画はそれぞれのパートのある時間を凝縮して描いているのだ。
だから実際には陸の兵士たちは、救助を待つために一週間という長い時間を強いられているにも関わらず、映画の中ではまるで怒涛のごとく追い立てられているように感じる。
加えて陸と海と空のそれぞれのシーンがまるでリンクしているかのような描写が、映像にさらなる緊迫感を与える。
沈没する船から脱出する兵士の恐怖心と、海上に不時着したスピットファイアのパイロットが海水から逃れようと焦る姿が重なる。
さらに最後の一機のスピットファイアのパイロットも燃料切れとの戦いに焦らされる。
実際はドイツ軍側もダンケルク海岸に残された兵士たちに対し、全面攻撃を仕掛けられずにいたらしい。
そして民間の小舟が一斉に兵士の救助に向かったという史実もないらしい。
しかしこの映画は、ドイツ側の爆撃は差し迫ったものであり、兵士たちを救出しようと小舟が一斉にダンケルク海岸を目指したように見せている。
これを嘘と捉えるべきか、映画の見せ方の上手さと捉えるべきか。
同じシーンを別の角度から何度も描くのもかなり効果的であると感じた。
視点が変われば見え方はまったく異なる。
突き詰めればドイツ側にも正義があり、また違ったドラマが見えてくるのだろう。
だから戦争には真の正義などないのだと思う。
そして戦争で戦うことは決して名誉なことではない。
沈没する戦艦から危険を顧みずに兵士たちを助け出そうとしたギブソンという新兵。
後に彼は戦死したイギリス兵に扮したフランス兵だったことが分かるが、英雄的行為はまったく報われず、イギリス兵に罵られ、最後は沈没する小舟の中から逃れられずに命を落とす。
ダンケルクに向かう小舟に同乗したジョージという青年。
彼も戦争で何かの役に立ちたいと願ったが、ダンケルクに行き着く前に戦場には戻りたくないと暴れた兵士の巻き添えで命を落としてしまう。
彼らの死はとても虚しい。
最後にこの映画を観て第二次世界大戦中の日本とはまったく価値観が違ったのだと思わされたのが、ダンケルクの脱出に関する記事の内容だ。
記事はイギリス兵の脱出を勝利と報道していた。
どんな状況でも生き残ることが尊いのだ。
燃料切れで不時着したパイロットのファリアが、ドイツ兵に囲まれ捕虜にされようとも、前をしっかりと向いて生きている姿に心を打たれた。
リアルな兵士
実際に戦場にいた一介のヒラ兵士にとって前線とはこうなんだろうという
リアルさを観ているこちら側も味わったようだった。
上層部は自分たちを何の意図があってどうしたいのかもよく分からず、
目の前の助かるかもしれない何かに
必死にしがみつくしかない。
頭の良さや人柄の良さや勇気あるなしは生死を左右するものではない。
とにかく細い運をなんとしても掴むしかないのだ。
苦労した英雄も本国に無事帰還してめでたしめでたしとは終わらない。
特定人物の紆余曲折に伴う感情と感動を求めてるとガッカリするだろう。
その一方で無理に盛り上げるドラマよりも、
一歩引いてクールに映し出したもので観客が自由に考えたらいいという
好みの人にはたまらなくハマる作品。
IMAXで撮影されており、最大限活かされた鑑賞を望むならIMAX推奨。
乗り物酔いしやすい人は普通の2Dをお勧め。
戦闘機の旋回や船の揺れが常に画面にあるのでその点は注意。
でもパイロットと船乗りのカッコよさにグッときます。
Take Me Home, Country Boats. 時間の相対性を、戦火の三面鏡が映し出す。
1940年に行われた「ダンケルク撤退作戦」を、異なる三つの側面から描き出した戦争映画。
監督/脚本/製作は『ダークナイト』トリロジーや『インセプション』の、後のオスカー監督サー・クリストファー・ノーラン,CBE。
ダンケルクへと向かう小型船舶に乗り込んだ青年ジョージを演じるのは、『ベルファスト71』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のバリー・コーガン。
戦闘機スピットファイアでダンケルクの撤退作戦をサポートする英国空軍パイロット、ファリアを演じるのは『インセプション』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ,CBE。
同じく英国空軍パイロット、コリンズを演じるのは『否定と肯定』のジャック・ロウデン。
防波堤で撤退作戦の指揮を取る海軍将校、ボルトン海軍中佐を演じるのは『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『シンデレラ』(監督)の、レジェンド映画人サー・ケネス・ブラナー,CBE。
ジョージ達に救出される英国兵を演じるのは『ダークナイト』トリロジーや『インセプション』の、後のオスカー俳優キリアン・マーフィー。
英国陸軍「高地連隊」の二等兵、アレックスを演じるのは大人気ボーイズグループ「ワン・ダイレクション」の元メンバー、ハリー・スタイルズ。
ファリアとコリンズが所属する小隊の指揮官の声を演じているのは『ダークナイト』トリロジーや『インセプション』の、レジェンド俳優サー・マイケル・ケイン,CBE。
音楽は『ダークナイト』トリロジーや『インターステラー』の、巨匠ハンス・ジマー。
👑受賞歴👑
第90回 アカデミー賞…録音賞/編集賞/録音編集賞!✨✨
第71回 英アカデミー賞…音響賞!
第43回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…編集賞!
当代一の人気監督クリストファー・ノーランにとって初となる歴史劇。
描くのは1940年6月に起こった「ダンケルク撤退作戦」(通称「ダイナモ作戦」)。イギリスではかなり知られた作戦らしいのだが、私はこの映画で初めて知りました。へー。
この戦いのすぐ後、ナチス・ドイツによってフランスが占領されるのですね。そんでもって1944年、『プライベート・ライアン』(1998)でお馴染みの「ノルマンディー上陸作戦」が決行される、と。なるほどなるほど。
こういう戦争映画を観ると、なんとなく歴史に詳しくなって、なんか得した気分😊
ノーラン映画というと、どの作品も無駄〜にシリアスというか、みんな眉間に皺を寄せてウンウン唸っているようなものばかりで、「もっと気楽にやろうぜ…😅」と言いたくなるのだけれど、今回は歴史的な事実がそもそも超絶煮詰まったものであるため、このノーラン特有の辛気臭さが気にならない。作中の出来事のシリアスさとノーランの作風がピタッとマッチしていたので、超進退窮まった物語なのにも拘らず、むしろこれまでのノーラン作品の中で一番ストレスなく鑑賞出来たように思う。
「ノルマンディー上陸作戦」と対をなす「ダイナモ作戦」。面白いのはノルマンディーを描いた歴史的名作『プライベート・ライアン』と、ダンケルクを描いた本作もまた、対称的なものになっているということ。
『プライベート・ライアン』では登場人物の内面描写や血みどろでドラマチックな戦いに重きが置かれていたのに対して、本作では人物の内面描写や大規模な戦闘はほとんど描かれず、ただただダンケルクという地で起こったこととその結末が語られていく。
セリフが少なく、登場人物の性格や出自どころか名前すらもほとんどわからないような作品なのだが、その無機質な構造が戦争というシステムの巨大さや凶暴さ、そして何者でもない若者の人生を無作為に飲み込んでいく不条理さを強調しています。
戦場にはヒロイズムも綺麗事も存在していない。そこにあるのはただ、「故郷へ帰りたい」という想いだけ。
このあまりにもシンプルな戦場描写/人物描写が、千の言葉よりも雄弁に人間心理の本質を語っている。
本作は陸(防波堤)、海、空の三つの側面からダイナモ作戦を描き出している。
戦争映画において、一つの戦闘を複数の側面から描くというのはまぁ割と常套手段。
わかりやすい?例だと『機動戦士ガンダム』のクライマックスも、アムロvsシャア、カイ&ハヤトのモビルスーツ戦、ホワイトベースでの白兵戦が同時に描かれていた。
しかし、この映画の特殊性は、三面それぞれの時間の流れが違うところにある。
陸(防波堤)は1週間、海は1日、空は1時間と、停滞している状況では時間の流れが早くなり、高速で動いている状況では時間の流れが遅くなるという、相対性理論の基本原理を映画内の時間に落とし込んでいる。
これは常に「時間」を題材に映画を撮り続けているノーラン監督らしいアプローチではあるが、それを戦争という状況下に当て嵌めて作劇するというのは、まぁ見事という他ない。
「時間の操作」というと何やら大仰に聞こえるが、これはどの監督でも自然に行っていること。2時間の映画で2時間しか時間が進まないなんて、そんな映画の方が珍しい訳で。
しかし、ノーランの面白いのは、それを根掘り葉掘りほじくって映画を作っちゃうところ。とどのつまり、彼にとっての映画作りとは、時間をどこまでいじくりまわせるかの実験に他ならない。映画が進むにつれて物語がこんがらがって訳わからなくなるというのはノーラン作品の特徴だけど、これは映像を弄ることこそが彼にとっての主題であり、物語は二の次くらいに思っているからなんだろう。
その点、本作は時間を存分にいじくりまわしながらも、物語が最後まで破綻せず綺麗に纏まっている。
作劇の巧さという点においては、ノーラン史上最高傑作と言って良いのではないでしょうか!✨
まぁ正直言うと、大規模な戦闘場面は無く、ひたすら兵士が水責めにあっているという場面が続く映画なので、面白いか面白くないかでいえばそりゃ面白くはない😅
とはいえ、ダンケルクの絶望的な状況を観客に伝えることには成功しており、息が詰まるような鑑賞体験ができるという点においては、他の戦争映画以上のユニークさを持った作品である。
もしこれが2時間30分とか3時間とかのランタイムだったのならBoo👎と言いたくなったかもしれないけど、106分というちょうど良い時間に収めてくれていたから全然オッケー👍
ノーランのフィルモグラフィーの中では地味な作品だけど、むしろこういう映画にこそノーランの資質は活きるのではないでしょうか?グロいシーンも無いし、万人にお薦めできる作品です♪
『生き残っただけだ。』 『充分だ』
『何が見える。』
『故国だ』
ナショナリズムを煽る台詞だが、
『生き残っただけだ。』
『充分だ』
この言葉が良い。
一年くらい前にIMAXで見た。時間経過になれるのが大変だった。
最後のメッサーシュミットを落としたのはスピットファイアなのか?それだけが、疑問で矛盾している。もう一度見たが、このシーンから、時間軸は一つになっている。スピットファイアが落としているのだろうが、カット割りになっている。3回見てもそのように見える。
折角、ダンケルクで生きて帰れたんだから、ノルマンディー上陸作戦はもう少し慎重にすべきだった思う。
戦争における考え方
戦争をテーマにした作品。
ダンケルクという場所でイギリスとフランスの戦争が起きる中、40万人の兵士達が取り残されてしまった。そこから脱出する術があるのか?絶望して自ら命を絶ってしまう人、諦めてただ呆然と過ごす人、この作品の中で様々人の心理が描かれているなと感じた。
そんな中で、どこが焦点になるかと個人的な観点からいうと、戦争に行った兵士達は、もちろんの事ことだがそれよりもその戦争に巻き込まれた一般の人々が一番かなと思った。
戦争に参加した兵士達は、自分達がまともな精神状態でない中で素面を保とうするけど、自分が何をしたのか、何をするべきか?が分からなくなるくらい追い詰められているんだなと思った。
そんな兵士によって一般の人の命が犠牲になってもその人の事を責めれず、これは戦争のせいだと耐えるしかない一般の人の姿がとても勇ましいと感じた。
状況によって人の心理は、幾分に変化する。
そんな中でそれを受け入れるだけの心が自分には、あるのか?と問われる気がした。
臨場感、緊張感が凄い映画だが
冒頭のシーンから緊張感の連続・・・、ただ、結局緊張感だけの映画で終わってしまった。海岸線での戦闘場面というと、どうしても「プライベート・ライアン」と比べてしまう。「プライベート・ライアン」では戦闘シーンは最初だけで、あとは内陸部の戦闘場面となっていくが、どこにいるかわからないライアンを探しだす面白さもあるが、戦友同士の友情が感動を与えた作品であった。
こちらは、特に山場というのがなく、さらに英国軍のえこひいき的な描き方に、英国人以外は見ていて感じが良くないと思う。そういえばノーラン監督はイギリス出身だったんだ。歴史的最高傑作「インターステラー」を作ったあとだけに、ちょっと息切れかな。
あと、主人公の会話が少なく、そのせいか最後まで感情移入できず、臨場感はすごかったものの我々は戦争を傍観者のようにただ見ている観客のようだった。
ただ、空中戦や船が沈むシーンの迫力はさすがにノーラン監督らしく、こだわりが感じられ、それだけでも見る価値は充分あるかもしれない。
あと、大作の割には映画音楽がイマイチの感あり。いい映画音楽だと何年たってもその音楽を聞くと、映画のシーンそのものが鮮明に蘇るが、この映画に関しては何年か経てば忘れてしまいそう(前期高齢者の私だけか?笑)。雑音か騒音ようなハンスジマーの音楽は、緊張感を高める意味ではピッタリかもしれないが、戦争映画であっても、「戦場のメリークリスマス」や「プラトーン」のような心にしみるような音楽が使われていたら、もっとよかったかな。
期待通り
トム・ハーディが出ているし、キャストが豪華だからずっと見たいと思ってたけど、なかなか機会がなくて見れなかった作品。
テネット公開に合わせて開催されたノーラン祭りのお陰でやっと見れた。
主人公2人が知らない俳優だったため、ごっちゃになったり、時間軸が交差したりして若干分からない部分もあったが、全体的にリアリティもあって面白かった。
トム・ハーディはかっこいい役だったけど、キリアンマーフィー、、笑
見終わって何日かたった今でも、たまにあのフランス人が溺れたシーンを思い出してどんよりした気分になる。
緊迫感ハンパない
登場人物の台詞が殆どない。爆薬、銃撃の音が凄まじく、鬼気迫る効果音で恐怖が増し、映像に引き込まれる。史実は知らなかった。ラスト、トム・ハーディーは捕らえられどうなるんだろう。
戦争の隙間
本当はIMAX版で観たかったのですが
コロナが怖かったので家で我慢…
感想としては
戦争映画としては切り口が斬新
撮り方も斬新で面白かったです
第二次世界大戦初期のドイツ電撃侵攻で
敗走する連合国軍をイギリスへ逃がすダイナモ作戦
を陸海空共通の時間軸でザッピングする撮り方は
ゲーム的でもあり斬新でした
ノーラン監督らしく常に何かが起こりそうな
雰囲気の絵が戦争と言う状況と本当にかみ合ってるな
と思いながら見れました
戦争映画というと撃って走ってと勇ましく攻める
シーンをイメージしがちですが
ただ逃げるためだけの用意された味方の兵士達
見えないUボートに脅かされる船
燃料を気にしながら飛ぶ戦闘機
ネガティブな要素しかない中で戦争の中で
どこに希望を見つけるかという焦点があるのかな
と思いました
また機会があればスクリーンで観れるといいですが…
こんな戦地から早く逃げたい
4DX上映で見ました。
前知識ゼロ状態で見たので、状況も敵もよくわからないとこから「英仏」「チャーチル」あたりでボンヤリと状況を把握。
しかし敵は一向に顔も姿も見えず、耳をつんざくような敵機の音がしたと思ったら、爆撃の嵐ですぐ横にいた人が吹っ飛んで倒れていく…。
こんなところからスタートして、場面は陸海空と三箇所がほぼシームレスに切り替わり、どこも安全な所は無く、どこかが危険に陥れば別のところでもまたピンチに…。
すぐ横にいる人の名前も事情も知らないけれど、一刻も早く危険な戦場を脱したいという同じ気持ちになってきます。
後半、船室から顔を出して故国の陸地を見ようとする兵士の気持ちもよくわかりました。
4DXでは銃撃や爆撃のたびに激しい振動や頭の横を風がすり抜けていくのを感じられました。船上や飛行機のシーンでは常にグラグラガタガタと揺れちょっとしたアトラクションに乗っている気分です。
その分、最後にようやっと故国に着いた時にはスン…と静かになって兵士と一緒に一息つくことができた気がします。
最後にはチャーチル首相の言葉が読み上げられますが、撤退という不名誉にうなだれる兵士を労う言葉でありながらも、この戦争がまだまだ続くということが述べられていて、穏やかでいっとき明るい画面と音楽とは裏腹に私個人はやや暗い気持ちを抱えてエンディングのスタッフロールを見つめることとなりました…。
他のレビューを見ると、人間ドラマやアクション面で物足りなさを感じて退屈という意見もあり、確かにそういった感動やスペクタクルを求めて見る人には物足りないかもしれません。
IMAXとマッチした作品
ノーラン作品らしい映像体験を楽しめる作品としてIMAXで観るにはとてもマッチしていて迫力がありとても良かったように思う。とくに銃弾の音は迫力があり自分が戦場にまでいるような感覚になり作品に没入する事ができる。作品自体初鑑賞だった為IMAXかDolbyかで迷ったが、今から見るのであればDolbyの方を選択すれば、さらに作品を楽しめるような気がした。
台詞が殆どない為いかにこの作品に没入し、自分が一人一人の兵士の視点になりきったような見方をすると非常に楽しめたようにも思えた。ただ若干中だるみは感じてしまった。
似たような作品で今年1917があったが、個人的には1917の方が見易く楽しく思えた。まぁこの辺は好みの差か。
ノーラン作品は頭や心を使い時には見疲れする作品も多いが、そういう意味ではこの作品はラフに見られるような作品に個人的には思う。
もちろん深く見ればもっと味が出て深みのある作品なのかもしれないが、個人的には戦場体験ムービーとして楽しませてもらい、それなりに楽しむことはできた。
ただ見るならやはりIMAXなりDolbyが良いように思う。大音響の中見るのと自宅で見るのではかなり印象が変わる作品に思える。
閻魔大王
撤退作戦にスポットを当てているのでか、テーマが戦闘ではないせいか、連合軍側の人間しか描かれない不思議な戦争映画だ。チャーチルの本心は判らないが本土決戦に備えて救援に割く艦船や航空機を抑え40万の兵に対して救出は3万程度と指示していたらしい。にもかかわらず多くの民間船の決死隊がドーバーを渡り兵を連れ帰る。小型船はUボートの標的にならなかったのも幸いした。見殺しを決め込んだ宰相はどの面下げて救出作戦成功の演説をぶったのか、歴史は欺瞞に満ちている。
きっとまた究極の選択、良心のゆさぶり攻撃があると覚悟していたがノーラン監督は今作もぶれていない。絶望の淵に置かれ助かるためには味方や命の恩人すら人として目に入らない恐ろしさを突きつける。ノーラン監督が閻魔大王に見えてきた。
全124件中、1~20件目を表示