「息をのむ緊張感」ダンケルク autumn003さんの映画レビュー(感想・評価)
息をのむ緊張感
字幕上映と、映画.com様の吹替上映イベントで、両方のバージョンでスクリーンで見ることができました。
とにかく、鑑賞中の緊張感がすごい。
吹替上映イベント時は、待機列に居たのが9割方若い女性で、声優ファンのようで不安だったのですが、トークイベントでアレックス役の増田さんが「没入感」と評していただけあり、皆息をのんで作品に見入っていました。
一周目(字幕)の方は、予備知識0で行ったため、時間軸のズレや人間関係を観終わってから自分なりに整理して理解するまで、多少時間がかかりました。
二周目(吹替)時は、ある程度分かってから言ったので、字幕とのニュアンスの差異や、細部の動きまでしっかり確認できました。
以下は人物についてのネタバレを含みます。
【陸】
戦争だから仕方ないとはいえ、アレックスのクソっぷりが目立ちました。都合三度もギブソンに助けられておいて、真っ先に追放しようとするとは。桟橋の下にいたトミーに回収されたのも、沈む船で扉が開いたのも、救命ボートでロープを貰った恩も仇で返してきました。とはいえ、ギブソン(仮)も英国兵の撤退に乗じて仏兵が逃げようとする、というのは問題なので、英国兵側の立場なら確かに…と考えさせられる部分ではあるのですが。結局ギブソン(仮)は英国まで行けなかったので、水没する船のシーンは本当に悲しかったです。
トミーは重油で炎上する海からピーターにギリギリ捕まえてもらえて、最後列車のシーンで民間人の失望どころか「生きて帰ってきた」こと、ダンケルクの撤退戦を讃える新聞と、差し入れされるビールを見て、「祖国への帰還」というものの温度が伝わってくるようでした。
【海】
キリアン・マーフィー演じる名前のない英国兵が、戦争のショックとはいえジョージの直接の死因というのと、友人を殺されたピーターがあんなに若いのに怒りを押し込めて、ジョージの死を隠すのも、考えさせられました。
二周目を見て、二度目にジョージの容体を尋ねられたとき、ジョージはすでに死んでいたため、回答するまでピーターが「目で迷う」のが確認できて、身内から戦争の死者が出ているドーソン一家は、最後の新聞社への働きかけも含めとても立派な精神を持っていると感じました。
【空】
個人的には、陸が脱出、海が救援、空が戦闘といった役割分担だと思っているのですが、空軍パートは見ていてカッコいいです。
ジャック・ロウデンは本作で初めて知りましたが、今後も色々な作品に出てほしいと思います。パイロットの軍服の映える、華のある俳優だと思いました。トム・ハーディの演じるファリアとジャック・ロウデンの演じるコリンズは、二機になってもコンビネーションが抜群で、ファリアとの別れや一機になったファリアへのコリンズの声援には、胸が熱くなります。空戦パートは、ファリア一機になってからが本番というか、とても見入ります。
そして、ファリアの最後も本当に熱い展開です。帰投する燃料は残すように序盤で通信がありますが、隊長機ロスト後、計器の異常のあるスピットファイアで奮戦するファリアの行動は、男気と愛国心を感じます。
残り燃料を考えて、一度戻るか敵機追撃のためダンケルクに向かうか逡巡するシーンがあります。そこで単機で進むことを選択し、最後も燃料切れでプロペラもろくに回らない機体でなお敵機を墜とし、完全撤退の済んだ浜に一人着陸し、愛機を燃やした後敵軍に拘束されるエンドとは、胸がいっぱいになりました。
引き換えすだとか、撤退中の浜に下りて自分も船に乗って撤退するということを選択せず、最後まで軍人だったファリアの魅力に持っていかれました。
近日リリースされるBDでまた繰り返し見たいと思います。