「いわゆる『脱出劇』」ダンケルク いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
いわゆる『脱出劇』
ダンケルクという場所においての撤退戦が第二次世界大戦序盤で起こったということは、ヨーロッパの人達からすれば学生時代の歴史の勉強での一つの常識なのだろうが、日本だと、世界史を専攻しないと全く存じ上げない地名であり、出来事である。
自分は単純に監督であるクリストファー・ノーラン作品だと言うことだけで、しかも監督が推奨するIMAX上映を大枚はたいて観てみようと思った次第だ。
ストーリー内容は他レビュー既出であるからここでは触れない。大まかに三つの場所でのそれぞれの話の流れを群像劇風に、しかしおのおのが後半クロスしていく形で収斂していくという展開である。それぞれの登場人物のバックボーンは余り触れていない。ということはあくまでも今正に、この海岸から対岸のイギリスへ逃げるというその一点に集約されることになる。そして、敵方である独軍も表立っては登場しない。戦闘機や銃での攻撃はあるのだが、あくまでもカメラの被写体は英兵のみである。
ただ、少々観づらくしているのが、話がクロスする際、ちょっとだけ巻き戻して場面転換しているので、所々話がこんがらがってしまうのが難点である。そうでなくても欧米人の顔の区別がつきづらいのに、同じ戦闘服、油に塗れた顔等々で、誰が誰なのか見落としてしまう。それに輪をかけて前述の通り、戦闘機でのドッグファイトと、海上での救出劇がクロスする中で、戦闘機から観た船、船から観た戦闘機、そこのカメラワークというか編集が、多分意図したのだろうけどしかしなんだかもたついてしまう感じが否めない。多分巻き戻しが相当後ろまで戻ってしまう為、概視感が残ってしまうのが原因なのではないだろうか?
ドラマ性もあまり強調しないように制作されているのも今作の特徴だろう。なるべくリアリティを追求することに重きを置いた結果として、山らしい山が感じられず、ただ、『淡々』というイメージに包まれてしまう。
まぁ、日本軍での『天皇陛下万歳』よりも、こっちのほうが余程人間味があって共感を得たのだが(上手く知恵を使い、嘘をついても救出船に紛れ込む事とか)、やはりノーラン監督はSFを摂って欲しいと改めて願う作品であった。
IMAXで観る理由もあまり感じられなかったのが残念である。