「軒並みノーラン作品が嫌いなおっさんは本作をこう見た。」ダンケルク しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
軒並みノーラン作品が嫌いなおっさんは本作をこう見た。
クリストファー・ノーランの世間でいうベストって何だろう。
ファンが選ぶノーラン作品ベスト10
1位.「ダークナイト」
2位~5位.該当なし
6位.「メメント」
7位~8位.該当なし
9位.「インセプション」
10位.「インターステラー」
そもそも10作品も監督作あったかすら覚えていないが、はっきり言って、こんな感じだろ。(「インソムニア」とか、ひどかったなあ)
「ダークナイト」はヒース。
というオレは、「ダークナイト」自体は全く好きでなく、ノーランの「リアル路線」を鼻で笑ってきたオレからすると、「リアル路線」の崩壊が笑える、というか、むしろそれがありがたかった「ダークナイトライジング」が一番好きだ。
「ダンケルク」
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そんなオレなので、本作をあまのじゃくにレビューするしかないわけで、はっきり言って本作に思い入れは全くない。
1).ノーランの、いつものスタンスが嫌い。
今回もリアル路線(笑)の、CGを極力使わない(当たり前だが、全くではない)、といううたい文句が鼻につく。というか、それが作家性や作品のスケールを委縮させていることに知りつつも、開き直っている感があり、まあ、それこそが「作家性」なのかもしれないが。
2).今回も音がうるさい
緊張感?冗談でしょ?どう見てもただうるさいだけ。本作、はっきりいってジマーの劇伴を取っ払った「無音」のほうがよかったと思う。
突如背後から売ってくるライフル音、海岸沿いの行進の足音、静かな海上の船のエンジン音、遠くから徐々に近づいてくる飛行機の音。
あくまで個人視点の作品で、スケール観は「実写」で撮れる範囲のものなので、音響なんか、ここぞという使い方であるほうがよかったのではないか。
3).カットバックが相変わらずうまくいっていない
時間軸の違った視点での展開。これは、彼の持ち味で、実はそうではないと思う。ただ、そういうのが好きなだけにしか見えないほど、緊張感を削ぐことが過去作にも多い。ストーリー自身に自信がなく、時間軸の操作でごまかしてきている点はこれまでもみられる。
4).「プライベートライアン」との比較について
「プライベートライアン」は、良しあしはともかく、「戦場」のリアルを凄惨描写で描き、一方で「ヒロイック」な物語性を持たせたものだった。
その方向から、いやオレはCG使わないから、大スケールな戦争映画作らないよ、とか、いやオレは時間を操るマジシャンだから、ストーリーは上手く書けないけど、複数の違った視点でのヒーローを描くよ、とか言って、それとの勝負から「あからさま」に逃げている。
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だから、結果とってもいびつな作品に今回も仕上がっている。
だがそれは、ノーラン自身、やれることをやって作品を作る、という意味で、作家としてのスタンスは素晴らしいということを評価しないといけないのかとも思った。
そう考えると、今回の作品は、2)の「うるさいだけ」がオレにとって大きなマイナス点だけで、ノーラン作品としては、とっても「個人的な思いの詰まった」作品なのだと思うようにオレはなった。
CGを多投しない自身の趣味を貫き、描写はあくまで、個人視点での「戦場」。カットバックは確かに上手くいっていないが、ストーリーに頼らない、「違った視点での個々のヒーロー像」を描こうとしているゆえの、ノーランのこだわりが詰まった「スケールの小ささで描く戦争映画」は十分伝わった。
とにかく、もうハンス・ジマーと組むのやめてほしい。映像作家、という売りの作家であるならば、劇伴を入れないことで得られる緊張感、という表現方法もあるだろう。
追記
「ライジング」の次にこれが好き、というオレもかなりいびつではある。なんだけど、まあ、1日で忘れてしまう程度の内容だけどね。