「戦争を見せる映画ではない、戦争を体験する映画」ダンケルク chibirockさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争を見せる映画ではない、戦争を体験する映画
待ちに待ちました。そして待ったかいがあった。
ノーランが実話、しかもテーマは戦争…どうなるのか全く想像つかなかったけど、どっからどう見てもノーラン作品でしかなくて安心。
そんな期待感とIMAX効果も手伝い、初っ端から異様な緊張感。
重いBGMとのしかかるような曇天模様を映す冷たい映像、それだけで戦争というものの異質で非情な本質が伝わる。
「戦争映画」にはつきものの血しぶきや銃声、うめき声、叫び声、涙、男女や家族のドラマ、人間らしくて生々しいものがこんなに排除されているのに、戦争って本当に怖いと思わせる。
それはこの現場にいるかのような映像・音響効果が、戦争が人間ひとりではどうしようもできない、とてつもなくでかい天災のように見せられ、絶望にも似た気持ちになるからかもしれない。
その絶望に光を差し込ませるのは、勇敢な人々。
その彼らにすら、余計なドラマを与えて美化するようなことはしない。
本当の戦争とは、他人の生い立ちやその後なんて知る由もないまま、任務を遂行し、走って、あがいて、生きのびるか死ぬか、そういうものなんだという冷たい現実を思い知らされる。
「過酷な現実」を見た、というショックは、
「すごい映画」を観た、という充実感、満足感とないまぜになって
やっぱり、こんなにのど元握られるような思いをさせてくれるノーランて偉大だな、と、改めてノックアウトされた土曜日。
役者も、よかった。もちろん。