「今までのない戦争体験で恐怖を感じる」ダンケルク レインオさんの映画レビュー(感想・評価)
今までのない戦争体験で恐怖を感じる
「海」「陸」「空」で織り成したスペクタクルな画面で戦争を見せるというより、戦争をリアルに体験させる映画。
一方で、また「海」「陸」「空」はそれぞれ観客の全く異なる感情を呼び起こす。
「海」はダンケルクを囲んでダンケルクからの脱出の難関であり、最も恐怖の象徴でもある。深海や水中に溺れる人々のシーンはかなりのインパクトと危険の信号を作っているはず。
「陸」は島で無形の牢屋そのもの。イギリス人、フランス人...誰でも脱出しようとするが、そうにはできない。
「空」からは危機と希望はともに降りてくる。敵軍の戦闘機は爆弾を投下して陸と海の人たちの命を脅す。イギリスのパイロットは逆に兵士たちの希望となる。兵士たちの安全を確保するために敵軍の戦闘機を墜落させなきゃいけない。
三者のシーンは心理的に観客に違う感情体験、身体的に違う視覚体験を与える一方で、それぞれ関連し、壮大な脱出映画を成している。
特にこの映画の前半はイデオロギーのものをあんまりに深く持たず、揺いでいるカメラでダンケルクからの脱出の緊張感と絶望感をうまく出している。
国から首相からすでに見捨てらるイギリスの兵士たちは、自分のホーム(国)へ帰る決心は失わない。
が、
彼らは、自らの命のため、他人の命を漠然と捨てられる。
しかし、それは決してイデオロギーのものを強調しないというわけでもない。
最後にホームから多くの人々が船で援助を与えるとき、国の予定以上の兵士たちが救われた。彼らは故郷に帰っても想像のように嫌われるより、全ての人が彼らを歓迎している。
生きて帰ってきたらそれで十分だと。
すなわち戦争は国のためというより、全てのイギリス人のためのもの。
兵士たちはホームからの人々に救われ、また返って国=ホームの人々を守るんだ。
第二次世界大戦はすなわちホームの人々、世界の人々のための戦争だ。
それまで見せられた脱出も、最後に観客に戦争の神聖を伝えるためのものとなる。全ては人々(兵士とイギリスの市民)の助け合いに収束するのだ。
特にきになるところは、船長の息子は、殴られて死んだ男の子の死を「犯人」に言わなかったところ。「犯人」と言っても戦争で精神的な問題のある男だ。本当には誰のせいでもなく、戦争あるいはドイツ軍のせいなのだ。
この映画は、最後にこそ、何のいわかんもなく、自然に大きな世界平和のための戦だと第二次世界大戦を定義し、前後にバランスよく、イギリス兵士たちの参戦、ダンケルクからの脱出にある大きな意味を伝えた。
映画を観終わって、とにかく海のシーンで息苦しさを感じたり、CGなども使わないことと、カメラワークの独特なアングルで作られた臨場感に圧倒されたりした!