「”キング”ではない”コング”。興行としての完成度が高い怪獣映画」キングコング 髑髏島の巨神 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
”キング”ではない”コング”。興行としての完成度が高い怪獣映画
「キングコング」のリメイクといえば、ピーター・ジャクソンの「キング・コング」(2005)が最近作だが、オリジナル「キング・コング」(1933)を尊重したジャクソン版は、恐竜と闘う。しかし今作は、純然たる"怪獣映画"なのだ。ここが重要。
「ジュラシック・パーク(ワールド)」シリーズは、生物学・自然科学のリアリティではあるけれど、"怪獣映画"は、いい意味で"興行(エンターテイメント)"でなければならない。本作の"キングコング"は、人間の味方なのか敵なのかという命題を抱えている。プロレス的には、"ヒール"なのか、"ベビーフェイス"なのかである。VFXを最大限に駆使して作られた、こんな満足度の高い"怪獣興行"はない。
鑑賞は最低でも3Dで、できれば4Dをおススメする。一度もテンションを緩めない、全編"100%怪獣映画"に仕上がっている。見どころは、まさしく"VS 怪獣(スカルクローラー)"である。映像は3Dを前提に作られているし、スカルクローラーの吐き出す汚物に、4DXの効果を知るはず。
舞台設定はオリジナル版を使いながらのスピンオフにして、怪獣たちの存在理由はギャレス・エドワーズの「GODZILLA ゴジラ」(2014)と共有している。そしてベトナムをロケ地にしてヘリコプター編成が飛ぶ風景、真っ赤な夕日は「地獄の黙示録」(1979)だ。
過去には、ハリウッドが東宝に許可を得て「GODZILLA」を作ってきたように、東宝もRKOに使用料を払って「キングコング対ゴジラ」(1962)、「キングコングの逆襲」(1967)を作っている。そして、いよいよハリウッド版ゴジラシリーズ、"モンスターバース"の幕開けとなる。
本作の原題は「Kong: Skull Island」。そう、"キング"ではないのだ。それは続編のタイトル「Godzilla: King of Monsters」(2019/仮)が示唆するとおり、ゴジラこそが唯一の"キング"なのである。
エンドロール後のサービス映像で、"ゴジラ"、"モスラ"、"キングギドラ"を想起させるイメージが流れる。最近のハリウッド映画はシリーズものばかりで、もうたいへん。
(2017/3/25/ ユナイテッドシネマ豊洲 / シネスコ /字幕:アンゼたかし)