ミッドナイト・スペシャルのレビュー・感想・評価
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何かが著しく欠けているが、人間ドラマは素晴らしい
『MUD』や『ラビング』のジェフ・ニコルズ監督が放つSFミステリーだが、日本では劇場未公開でDVDスルー。安易な設定で結末も弱いが、その一方で「人間ドラマ」としては見応えがある。
もしかすると本作は、ニコルズ監督が『テイク・シェルター』のイメージをさらに壮大に描いた作品なのではないか。マイケル・シャノンが少年を抱き上げて走る姿は『シェルター』を彷彿させるし、得体の知れない何かが迫り来る不安を刻んでいる点も似ている。ただ、本作はもっと娯楽性を帯びた作りになっているため、それに見合うだけの「手応え」が欲しかった。
とはいえ、この監督の映画はいつも、自分の命以上に大切なもののために奔走し続ける大人の姿が描かれるが、その役目に担うシャノンとエドガートンの名演はとてつもなく素晴らしい。彼らを見ているだけで十分なドラマを堪能した気分になる。何かが著しく欠けているが、なぜかそれを含めて愛おしさを感じる。本作はまさにその類いの「知る人ぞ知る」作品と言えそうだ。
ゴーグルでなんとかなるの?
けっこう好みだけど
【未来は…/地味だけど示唆を含んだ作品】
地上波(深夜帯)で放送しなかったら、ずっと知らないままの作品だったと思う。
皆さんの評価は低いように思うけれど、これまでに何度となく取り沙汰されてきた終末論や、危機を煽り人々をコントロールしようとする政治など人間の愚かさと、理論物理学でも話が出るパラレルワールドなどSFらしい示唆も含んでいて、僕は結構好きでした。
超能力を備えた少年アルトンと、父ロイ、母サラ、友人ルーカスの、SFという割には、どちらかというと静かな逃走劇だ。
アルトンは何を見せるのか。
(以下ネタバレ)
映画ではカルト教団の終末論は暗示的な程度なんだけど、考えてみたら、僕たちの世界は、ノストラダムスの予言を乗り越え、ミレニアムを迎えても、どこかに終末論を抱えたままだ。
911のテロ、04年のインドネシアの大震災、311の東日本大震災と原発事故、最近の気候変動が原因と思われる頻発する災害などあるたびに、終末論者は危機を煽る。
ノストラダムスを乗り越えたと思ったら、今度は、マヤ暦の記載が終わった後は世界は滅亡すると言ってみたり。もう、これも乗り越えたんだけどね。
映画は、政府の執拗な追跡がメインに描かれるが、政府は人々に何を隠したいのか、何をリスクと考えているのか、さまざまな謎を抱合したまま、アダム・ドライバー演じるNSAの調査員も巻き込んで、アルトンは目的の地に辿り着く。
エンディングも暗示的で、SF作品だが決して娯楽的ではない。
想像力を要求しているようだ。
伏線の回収とは一定の距離を置いた、この暗示的なエンディングが、評価を分けているのではないだろうか。
整然として、美しいパラレルワールドの景色。
終末論や恐怖を煽るより、もっと他に選択肢はあるのではないのか。
それが、この作品のテーマなのだ思う。
理屈より感性
竹取
ITお兄ちゃん
とても丁寧に作られたSF秀作
タイトル通り真っ暗なシーンがあるので明るい部屋で見ないほうがいい。
すっぴんのキルスティン・ダンストはじめ何気に豪華キャスト、しかも皆きっちり仕事してるので作品に厚みがある。
何でもかんでも全部説明したり明確にする必要がないのがSFのいいところであり、予算の都合でチープになりがちな部分をしっかり作り込んであるのがいい。
子を思う親の気持ち、男の友情を描く良作ドラマ。
回収してほしいことがありすぎて…
「ラビング」でのジェフ・ニコルズ監督の演出が気に入ったので、他の作品を求めてレンタルショップへ久しぶりに足を運ぶ。
カルト教団から、特殊な能力を持つ我が子を救い出し、来るべき審判の日にしかるべき場所へ向かうという話。
ところが、どういう審判なのか、子どもの目的は何なのか、どのような能力なのか、さっぱり分からないまま終了。
一番気になったのは、途中からすっかり出番がなくなったカルト教団の教祖(久しぶりに観たサム・シェパード!)のその後である。
そういえば、「ラビング」でも、いい味出していた強面の保安官が、途中から全く出なくなった。
色々な材料のうちの少しでも回収してほしかったな。
「心配いらないよ」という息子に対し、「心配するさ、それが親の役目だ」と優しく突っぱねる、無愛想だけれど温かみのある父親像は、「ラビング」にも受け継がれた監督のこだわりのように思えた。
家族の絆が描きたいのだから、カルト教団はどうでもいいだろ、とは思えなかったけれど。
マイケル
子を守るのが親である。
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