「【今作は一卵性双生児のギャングの兄が一人の女性に恋した事で、精神的に不安定な弟との絆に罅が入り破滅していく様をトム・ハーディが一人二役で見事に演じており、改めて彼の凄さを認識する作品なのである。】」レジェンド 狂気の美学 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は一卵性双生児のギャングの兄が一人の女性に恋した事で、精神的に不安定な弟との絆に罅が入り破滅していく様をトム・ハーディが一人二役で見事に演じており、改めて彼の凄さを認識する作品なのである。】
ー 今作では、レジー・クレイ(トム・ハーディ)に惚れられ、結婚したフランシス(エミリー・ブラウニング)のモノローグで物語が進む。
終盤の展開を見ると、巧い構成だと思う。-
■1960年、ロンドンが舞台。
理性的で頭が切れるレジー(トム・ハーディ)と、精神的に不安定で”精神安定剤”を常用している、切れやすいロン(トム・ハーディ:2役)による一卵性双生児のギャング、クレイ兄弟がロンドンの裏社会を支配していた。
レジーが経営するナイトクラブは繁盛し、彼は表舞台でも名を馳せていた。
だがレジーが部下の妹フランシスと恋に落ち、彼女のために悪事から距離を置いてナイトクラブの経営に注力し始めると、レジーが服役している際にロンはナイトクラブでしたい放題の事をし、ナイトクラブから客は居なくなる。
そして、ロンは悉く、レジーが困る事をしていくのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、トム・ハーディが、性格が全く違う一卵性双生児のギャング、レジーとロンの兄弟を見事なる演技で魅せる作品である。
同じフレームにレジーとロンが収まっているシーンでも、観る側は演じているのがトム・ハーディだと、右脳では理解しつつ、左脳では全く違う人物として違和感なく見てしまう程である。
・ご存じのように、トム・ハーディは肉体派演者でありながら、演技派としても優秀なるが故に現在の地位を築いている。
特に記憶にあるのは「ダークナイトライジング」での痛みを抑える薬の吸入器を顔面に付けたトム・ハーディと認識できないペインを演じた時の凄まじい怒りを帯びた”目”であり、盛り上がった方の筋肉である。
今作でも、特殊メイクなどが使用されているようだが、トム・ハーディの一人二役演技は飛びぬけている。
・物語の展開としては、ロンがレジーの大切なモノ、-その代表はレジーと結婚したフランシスである。-を、悉く壊しつつ、兄弟の最後の絆がギリギリ残っている描き方が、印象的である。
・60年代の英国の雰囲気も、ロンとレジーや、ロンの腹心であるマッド・テディー・スミスを演じたタロン・エガートンのビシッと決めたスーツ姿が上手く醸し出している。
・ロンが、手下のジャックに自分が常用していた”精神安定剤”をフランシスに与えていた事実が分かる最終盤の展開。
理性的であった筈のレジーは、”精神安定剤”の過剰摂取で自死したフランシスの仇を取るために、ロンの目の前でジャックをナイフで滅多刺しにして、その場を去るのである。
そして、クレイ兄弟は”フランシスのモノローグが流れる中”破滅して行った様が、語られるのである。
<クレイ兄弟は実在した兄弟だそうであるが、写真を見ると全く似ていない。今作でも記述したように、トム・ハーディが兄弟を一人二役で演じているが、全く違和感がない。
今作は、改めて、トム・ハーディが凄い役者である事を認識させてくれる作品なのである。>