「終わりよければすべて良し」あなたの旅立ち、綴ります kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
終わりよければすべて良し
心にガチガチと鎧を着込み強迫的に生きてきたが故に成功したものの充実しなかったクソババアが、自分に自信のない記者アンと交流しながら、人生の最終幕で自分を見つめ直すという、ちょっと良い話です。
逃げたり守ったりせず、自分の人生を生きろ!といった最近のホドロフスキー大師匠とテーマは同じだな、との印象。「意味ある1日を生きなさい」とか、大師匠が言いそうなセリフです。
とはいえ、主人公の金持ちババア・ハリエットは妥協せずに自分を貫いて生きてここまで来たことが伝わります。まだまだ保守的な時代に女性が成功するには本当に大変だったと思います。でも、その代わりに犠牲にしてきたものがあまりにも大きかった。それは、音楽を愛する繊細な感性や、心許せる人たちとはしゃぎ、笑い合うこと。これらは成功には不要なモノですから。
強いて言えば、自分の半分を生きていた、といったところでしょうか。アンとの出会いで彼女は自分の半身を取り戻す旅に出れたのだな、と捉えています。
DJをこなしている姿や夜の湖で遊んだシーン、モーテルでの笑いあった一夜は多幸感に満ち溢れていました。
アンはハリエットとの対話で彼女の中の忘れ去られた感性を引き出しましたが、その時のアンの表情が素敵でした。ハリエットは、あんな顔で自分の話を聴いてくれる人はいなかったはず。アンはエッセイスト志望ですが、物語を通して見るとインタビュアーの適性がありそう。
そんなアンですが、家族まで描かれていた割にはキャラの輪郭がぼやけていたように思えます。自信のなさの根拠って?彼女はどう生きてきた結果臆病になったのかを描いてほしかったです。
まぁ、ハリエットの「まだ少女」というセリフが彼女のすべてを語っているとは思いますが。特に理由はなく、単に幼く大人への一歩を踏み出せない、というか。母親との別離が彼女の精神発達の遅れに影響を与えており、ハリエットが母親機能を果たし、自分の人生を生きるようになった、とも言えそう。しかしエンディングでアンダルシアに行くのはやっぱり少女っぽいように思えます。アンダルシアって、アンの少女性の象徴では?行くことで決着させる、と考えられるかもしれないですが、本作の食い足りないパートは主にこの辺ですかね。
演者はおしなべて魅力があります。アマンダ・セイフライドは目玉がでっかすぎますがすごく綺麗でファンになりました。重めのロングボブの髪型がとてもイカしてます。