ある戦争のレビュー・感想・評価
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人道的に人を殺す任務 と 背負わされる罪の意識
戦場の日常ってきっとこんな感じなんだ、とか、戦闘の中の切迫感ってこんな感じなのだろう、と私にはリアルに感じられました。戦場と日常の対比も説得力があり、クラウスの苦しみ、奥さんの辛さがひしひしと伝わりました。自分なら何ができたのだろう、どう判断するのだろう、罪の意識とどう折り合うのだろう、と思いは広がります。でもそれは、答えはない問いです。
2021年8月の完全撤退後の観賞だったこともあり、戦争を決めたかの国の元大統領はせめて罪の意識に苛まれているのだろうか、と思いは俯瞰に跳躍します。そして、例えばウクライナで民間人への攻撃ばかりが非人道的だと報道される裏で、ウクライナ兵、ロシア兵たちの失われた命や心の傷を思うと、心がつぶれるような気持ちになります。
ただ、気になったのは、タリバンの残虐な描かれ方。西洋世界からの、一面的な解釈であるように思えて、その点は残念でした。
〔翌日〕
翌2022年5月15日は沖縄復帰50周年。その報道に接していると、また、違う見方も生まれてきます。
アメリカ軍兵士は沖縄で罪を犯しても、基地に逃げアメリカに帰国。当たり前のように、罰を逃れてきた歴史を見ると、この映画に疑問がわいてきます。
デンマークは、ホントに、これほど積極的に戦争犯罪を裁いてきたのでしょうか。
この映画が製作されるまでに、開戦から14年間もアフガニスタン紛争を戦ってきたデンマーク。
うがった見方をすれば、この映画はプロパガンダです。
曰く「デンマークは国際法を遵守し、正義の戦いを続けていますよ。タリバンは自国民を残虐に殺害し、恐れられていますよ。アフガン国民はデンマーク軍に助けられ、活動を支持していますよ。デンマーク軍兵士は、判断ミスも犯し罪の意識に苛まれるけれど、最善を尽くしていますよ」と。
「西洋の民主主義は正義」「非西洋の政治・社会は劣っている」この上から目線が、いったいどれだけ多くの人を殺してきたことか。
たぶん、この監督はプロパガンダという意識なしに製作しているようにも、思われます。
でも、それって意識的なプロパガンダより、かなりたちが悪い。
自分が正義の側に立っている、という独善。
そうした自己認識の恐ろしさに、改めて気付かせてくれた映画。
そんな解釈の方が、正解に近いような・・・。
アフガン派兵されたデンマーク兵
倫理と理論
この世界の片隅に地獄がある
地獄は出来事そのものではなく、体験から起こる不信、疑い、無力感、恐怖、絶望だ。
地雷で重傷を負った仲間が、生きてメッセージを送ってくれる。
生死は紙一重だけれど、0と1ほど違う。
基地に助けを求めてやってきた家族を、明日と言って帰らせたが、彼らには明日はなかった。
あそこは戦闘地域?
敵は見えない。バイクに子どもを乗せて行く男は敵?
トラックに乗っているのは敵?
見えない敵が見えない恐怖をどんどん膨らませていく。
戦争法など法律にタリバンは拘束されていないが、外国人部隊は法を守り住民に信頼されてこそ任務を遂行できるとは思いながらも、見えない敵に見られている恐怖の中で、自分の決断を法に基づいて説明することはできないなと感じた。
殺されるのも殺すのも怖い。その怖さが地獄かもしれない。
守れなかった足
戦争
この任務に、意義があるのか?
駆けつけ警護の訓練。暴徒に囲まれた国連スタッフを、自衛隊が救護する訓練を、テレビで見ました。ところで、あの暴徒の中に、プラスチック爆弾でできた、ジャケット羽織る人がいたら…。
選挙の前に、是非多くの方に観て欲しい。それに、法律を作る人達もね。現場の過度なストレスは、机上では伝わらないと、痛感します。
私事ですが、先日、事故に遇いました。?の次の瞬間、!です。最善を尽くしたつもりでも、後から、別の選択肢があったのかと、考えてしまうものですね。
「ハドソン川の奇跡」では、ありませんが、即断即決が要求される瞬間が、突如やって来る。皆さんも、思いあたる節あると思いますが、それを後から、糾弾される気分って、どんな感じですかね。仲間が死ぬのを、黙って見ているのが、最善とは思わないですけど。
少し含みのあるラストのような気がしますが、いずれにせよ、交戦規定どうりに、人を殺せ!。それが戦争と殺戮の違いだ!。と言われたような、ちょっと苦い話です。
まぁ、確かに、戦争なら、何でもOK にしたら、世界は狂気と憎悪で、潰れてしまうことでしょう。しかし、その任務に、どんな意義があるのか?。外交手段として、人が人を殺すことが、正当化される世界と、そのルール。早く終わらないかな。この国の防人の皆さんが、銃の引き金を引く前に。
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