西部戦線1953のレビュー・感想・評価
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同じ文化同じ国の人の戦争という哀しみ
思いのほか、、、タイトルからくるイメージと異なり、
笑って泣いた。こんなに全編を通して笑ってしまった映画ももないし、笑いの合間にうまく泣かせてくれる。
同じ国、同じ言葉同じ文化の人たちの戦争なのよ。そのことを思い知らせる強い映画だ。
戦車の中密室で、荒屋で蜂の大群におそわれて、南か
北かどちらについてるのかわからない村人たちと、
言葉がぜんぶわかり食文化も宗教的行事もライフステージの過ごし方イベントのやり方も全て共有している人たち。2人の兵士。
村で子供が生まれるシーンも、村人たちが力を合わせて戦車を引き上げてくれるシーンも、同じ文化と歴史を共有している朝鮮半島の歴史をそしてなぜこのような分断が引き起こされたかを語る。
敵味方がよんどころない事情で図らずも一致協力して現状打破しようとする物語は珍しいものではないがこの2人は同じ朝鮮人であり誤解や文化の違いがそもそもない、南朝鮮軍北朝鮮軍も村人もしかり基本同じコンセンサスのもとにある。この映画で唯一異質なものとして出てくる(そして異質な笑いになる)のは中国共産党の兵士達だ。
2人仲良く川釣りの帰りの蛍の道の思いっきりキラキラファンタジーのシーンは、人類の長い歴史、すなわち戦争の歴史のなかでこれまで人類が絶滅しなかった理由そのものを示しているだろう。前半で南朝鮮軍ソルギョングたちが、人間が始めたことだからそのうち終わるだろうと言っていた。
ソルギョングがうまい。若者の方も魅力的だ。
蜂刺され顔も最高だし、最後まで死の匂いを感じさせながら諦めない、希望を捨てない人間の姿を強く見せてくれた。
ほんとに数々の悲惨な戦争体験の中、数々の笑いで、おなかいたくなるくらいで、最後は一体どうするのか、、、これでもか、これでもかと引っ張るラスト。
南朝鮮の上官が休戦と聞いてもすぐに砲撃をやめられないのと同じだとおもう、この映画が終わりそうで終わらないのも、北の人も南の人もあと少し進めば故郷に帰れる、家族に会える、家族を弔える、、、そんな諦めることができない人たちがたくさんいるのだろうと思う。笑いながら泣き、泣きながらも笑いを抑えることができないよくできた映画だ。
飛べずに道を駆ける戦闘機、を追う、ボロボロの戦車、を追う猛スピードの牛車、、とか、ありえない、今思い出しても笑える、二度と見られないすごい光景。
主役の2人に負けず劣らずの助演賞は、戦車と2人にずっと寄り添った牛車の牛さんだろう。
見てよかった。ほんとに。
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