トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のレビュー・感想・評価
全97件中、61~80件目を表示
偏屈にまっすぐに生きた男の話。
5月に公開していた「ヘイル、シーザー!」と時代が重なります。「ヘイル、シーザー!」ではよく分からなかった戦後ハリウッドと赤狩りについて、すこし理解を深める事ができました。また、そういったことを除いても、単純に良作だと思います。
共産党員だったトランボさんは、赤狩りが激化する映画業界で奮闘していましたが、聴聞会に引っ張り出され、証言を拒否したところ、議会侮辱罪で投獄されます。服役後に、再起を図るも、難しい。なりふり構わず、偽名で、B級映画の脚本・手直しを破格で山ほど引き受けて、糊口を凌ぎます。妻・娘たちも仕事の手伝いに借りだし、家族のための仕事が、仕事のために家族を振り回す、見事な本末転倒となり、妻・長女から反発を受け、トランボさんは態度を改めます。その内、黒い牡牛(知らない映画です)とローマの休日にて偽名でアカデミー賞を受賞します。
その後、長女に言われてローマの休日は自分が書いたっていいなよと進言されたり、変わり者のスター俳優、監督から脚本書け書け、本名でのせちゃると後押し(ごり押し?)をうけ、スパルタカスと栄光への脱出を書き、映画界に表立って復帰していったというお話です。
ラストに、1970年ごろだったかに、過去を振り返ったスピーチをする場面があり、そのスピーチがすばらしかったです。裏切らざるを得なかった者も、戦いの中で命を落とした者も、みんなつらかったよね的内容(酷い要約ですみません・・・)でグッと来ました。
劇中ではローマの休日は俺が書いたもんね!とテレビのインタビューでゆってた気がしますが、wiki調べによると、ローマの休日を書いたのがトランボだと分かったのは彼の死後だったようです。
家族の物語としても素敵でした。妻が、正に賢妻って感じで、基本は夫を信じるだけなんだけど、本末転倒の生活で大事なものを見失った夫への抗議は的確でした。そして、エルファニング演じる聡明な長女がまたよい。父の娘ですよね・・・。ちゃんと謝ることのできる男と、そんな男を愛する女でしたよ。家族みんなでアカデミー賞の授賞式みて、やったーパパナイス!ってハイタッチする感じもほのぼのいい感じです。
ヘレンミレンが気取った帽子の反共コラムニストを演じており、いい味出していました。コミュニスト迫害のために、映画会社の偉い人が必死に隠していたユダヤ人であることを持ち出して脅したりしていました。彼らを首にしなければばらすぞというやつです。そういえば、映画産業には多くのユダヤ人が関わってきたと聞いたことがあると思いました。そのかかわりはおおっぴらなものではなく、名前を隠す必要があったのだなと想像しました。
また、裏切ったコミュニスト仲間の俳優が、あんたら(脚本家などの裏方)は名前を変えたら生きる道もあるけど、俳優は顔を隠せない。思想を捨てなければ仕事がもらえない、仕方がなかったと訴えていました。それもそうだと思いました。その選択を、陥れられた方としては許せないけれども、一定の理解はできるという描き方でよかったです。
役者はあまり知らない人ばかりでした。ヘレンミレンとジョングッドマン(バッドで大暴れ最高)とエルファニングぐらいでしょうか。なんせトランボ役の方を全然知りませんでしたから。
水に浸かっての執筆風景やインコをなでなでする感じが変人って感じで好きです。
才能で生き延びる
どんな時代も生き残る才能は有るんだなあ。
映画はよく見るが脚本に注目することはなかった。脚本家以外の映画人の登場やタイトルが話に(私的には)リアリティを与えてくれる。
過去の名作が心の中でさらに分厚くなる。
後半良い
ローマの休日が大好きなので、母と行きました。前半は、メリハリなく、眠気に襲われましたが、後半は見応えありました。
奥さん役のダイアン・レインが素敵でした。美しかった。
役が実名だったので、鑑賞後に母と昔の映画の話で盛り上がりました。
最も書いた男。
トランボと聞いても今ひとつピンとこないと思うが名作
「ローマの休日」の脚本家(だった、実は)と聞くと分かる
人も多いんじゃないだろうか。何と彼は二回もオスカー
を受賞している(でも偽名で)非常に有名な脚本家なのだ。
彼の才能に対し時代は皮肉なもので、当時は赤狩り旋風
真っ只中、共産主義者の彼はハリウッドから追放される。
有名なハリウッド・テンの一人となるが、監督や俳優にも
被害者は多数いる。チャップリンなども恐れられて追放、
身を守るために同業者を密告する者が多数いたのも事実。
監督のエリア・カザンが名誉賞を受け取った時、皆が拍手
しなかったのは彼が密告者だったからで、今作ではエド
ワード・G・ロビンソンがそれと同じ立場で描かれている。
しかし何よりこの時代を言葉で表現したトランボの最後
の演説は爽快だった。生活のためやむを得ず密告せざる
を得ない立場に追い込まれた者を恨んではいないと丁寧
に語る彼が言葉にも人間力にも優れていた人だと分かる。
家族を愛し大切にした父親像も描かれ、のちに反発する
娘や忠告をする妻も彼が生活の全てを握っていることを
よく認識していた。家族揃ってテレビで授賞式を見る姿
はなんと微笑ましいことか。呼ばれる名前は偽名なのに…
トランボが指名された理由に仕事の速さが挙げられるが、
オリジナルを仕上げた上に手直しまでも請け負っていた。
もの凄い仕事量をかなりの速度で仕上げる力を持った人
だったことが分かる。仕事のできる人ってやっぱり速い。
彼を支えた妻をD・レインが好演。その他J・グッドマン、
H・ミレンなど、共演陣も豪華に怪演していて素晴らしい。
やっぱりハナシが面白くなきゃ映画じゃないでしょ~と
常に思う自分は、かのおバカヒーロー映画が発した真の
ヒーローは脚本家だと評するオープニングに多いに賛同。
トランボの作品はローマ以外にも面白い作品がたくさん
あるので、若い世代も観たら納得がいくんじゃないかな。
(ただ黙々と書き続ける姿に感動。闘うならそこだよね!)
誰もが知るローマの休日を創った男の話
前提知識無くとも楽しめた。
赤狩り、ハリウッド・テン、映画連盟等等、知らなくてもスッと入る。
家族愛の物語。
トランボの主義を曲げない生き方も凄いが、
それを支えた妻子はもっと凄いと思った。
エンドロールのインタビューも泣ける。
ジョン・ウェインが悪者に見えてしまうのは、トランボ側視点だと仕方無いのだろうか。
マイケル・ダグラスの父カーク・ダグラスが男気溢れていて格好良かった。
ヘレン・ミレンが憎たらしい女性を演じていたが、素晴らしく憎たらしかった。
ナショナリズムを糾弾する映画
アメリカはナショナリズムの精神構造を代表とする同調圧力の非常に強い国で、それは今も昔も変わらない。アメリカ人のナショナリズムこそ、世界を駄目にしてきた元凶なのだが、誰もそのことに触れない。ナショナリズムを否定するとアメリカでは生きていけなくなるからだ。アメリカだけではない、たいていの国で生きていけなくなる。
国家を第一義とするナショナリズムは、人間の自由と尊厳を大切にするヒューマニズムと正反対の思想である。ヒューマニズムの主張は尤もなのだが、ナショナリストからはエゴイストあるいはコミュニストと非難される。ヒューマニズムの主張は穏やかなのに対し、ナショナリズムの主張は攻撃的で高圧的で、時として暴力的である。そして大抵の場合国家権力を掌握しているのはナショナリストである。議論ではヒューマニストに敵わないが、権力を背景にした暴力で圧倒する。ヒューマニストは黙りこむことになる。
民衆はというと、世界を立体的に考えることができない多くの人々は、ヒューマニズムを理解することができず、ナショナリストの大義名分の圧力に抗うことができない。むしろナショナリズムの一員として全体に同調し、高揚する。肩を組んで「America the Beautiful」なんかを歌うのが幸せなのだ。
トランボはヒューマニストである。したがって、当然ながら反戦思想の持ち主だ。第二次大戦前後のアメリカでは反戦思想の政党はアメリカ共産党だけだったから、彼は共産党に入党する。そこにソ連との冷戦がはじまり、レッテル張りをするのが得意なナショナリストの格好の標的となってしまう。マッカーシーの赤狩りの餌食となったのだ。そしてトランボたちを攻撃している中にロナルド・レーガンやジョン・ウェインといった有名俳優もいたことが少なからずショックだった。
この映画は、酷い目に遭いながら、不屈の精神力で脚本を書き続けるトランボと彼を支える家族たちの苦闘の映画である。
トランボの生き方は見事だったが、映画はそれだけではなく、ナショナリズムの恐ろしさも端的に伝えている。
思った以上に良作
主人公、ダルトン・トランボの不屈の姿勢に励まされるだけでなく、
夫のせいで本当は様々な苦難を経てきたはずの夫人が、夫と闘うという形で支えるシーンが素晴らしかった。
あんな父親なら、時には反発しても、娘は父を尊敬するでしょうね。
思想を国家権力が取り締まる愚かさ、そこにハリウッドが積極的に加担してしまった過ち、このことを忘れないためにも大切な映画です。
風呂場で映画の脚本
ローマの休日に脚本を書きアカデミー賞を受賞した脚本家の実話です。
ハリウッドの赤狩りの話は他の映画でもあったので知ってはいたのですがこのトランボという人の事は全く知りませんでした。
評判良かったので劇場鑑賞しました。
共産党員という事で弾圧され酷い目に遭いますがやっぱり才のある人は違いますね!
偽名を使って脚本を書き2度のアカデミー賞受賞!!!
ローマの休日の脚本がまさか風呂場でタバコを吹かしながら書かれていたとは。。。
これが実話とは思えないトランボの人生その才能!
見応えありました。
脇役もダイアン・レイン、エル・ファニング、ジョン・グッドマンとキャスティングもいい
エンタテインメント色たっぷりの社会派映画
米ソ冷戦がはじまった1940年代後半から、米国では共産主義的思想の持ち主を徹底的に弾圧した。
ハリウッドとて例外ではなかった。
いや、大衆への影響が大きいことから、その弾圧はすさまじかった。
ダルトン・トランボもそのひとり。
いや、ハリウッドの共産主義の中心人物と目され、徹底的に排除された。
しかし、トランボは変名・偽名を使い、仲間とともに次々と脚本を書き続けていく・・・
という事実に基づいた映画で、とにかく面白い。
興味深い、ではなく、面白いのである。
その面白さの中心は、トランボそのひとにある。
とにかく、信念の人である。
自分を曲げない。
自分にできることは書き続けること。
ただし、主義主張、メッセージを重視するのではなく、量だ。
その量の中から、「質」が現れる。
「質」は、作品の質であると同時に、そのひとの内面の質だ。
「ひと」が認められることで、主義主張を通そうというのだ。
まぁ、やりすぎて、ワーカホリック状態になり、家族との危機も迎えるのだけれど。
この映画では、トランボを演じるブライアン・クランストンも素晴らしいが、妻役のダイアン・レインが素晴らしい。
いつもは控えめだけれども、家族の危機に際しては、言うべきことは夫に言う。
このシーンが良かった。
実話なので、エドワード・G・ロビンソン、ジョン・ウェイン、カーク・ダグラス、サム・ウッド、オットー・プレミンジャーなど、ハリリウッドの面々が登場するが、なかでも、カーク・ダグラスが酷似。
さらに、映画コラムニストのヘッダ・ホッパー役のヘレン・ミレンが憎々しくて、これまた良い。
社会派テーマをエンタテインメント色たっぷりに仕上げるのは、かつてハリウッドが得意としていたものだが、これは久しぶりにそういった類の秀作佳作である。
数々のSNS炎上が、この出来事の再演で無いと良いが・・・
第2次世界大戦終結後にアメリカで起きた赤狩りの対象となり、映画界から追放されてしまったダルトン・トランボの伝記映画。
いやぁ、あの『ローマの休日』にこう言う隠された逸話があるとは知りませんでした。脚本には、「あこの作品は、あの人っぽいよね」と言う癖が有るような気がするんですが、専門家ばかりのアカデミー会員は、見抜けなかったんですかね?あるいは、この時のアカデミー賞受賞は、陰ながらにトランボを応援していたアカデミー会員の影の努力の賜物なんでしょうか?
『ローマの休日』以外にも、大ヒット映画の脚本に関わっていたトランボは、一種の天才ですね。見た事はありませんが、『スパルタカス』とか『栄光への脱出』とか、いやぁ、すごい作品ばかり。
見ていて思ったのが、自由に考えていることを主張していくことの大切さと、それを守ることの難しさ。いまSNSでは、誤った正義感・自己の価値観の押し付けによる過剰なバッシングが多いですが、この当時の赤狩りもそれに類するというか・・・、時間軸的には逆ですね。いまの過剰なバッシング傾向は、当時の誤った赤狩りに通じるものがあると強く感じました。
ちょっと意外に感じたのが、ヘレン・ミレンが、正にbastardとでも言われるべき人間を演じていたところ。いやぁ、本当に悪くて嫌な奴でしたね(笑)。あんな役を演じられるのも、ヘレン・ミレンが一流の女優であるからなんでしょうが。
それにしても、途中までは「トランボの作品は最高だけど、トランボ本人は人間としては最低だ」と思っていたんですが、奥さんの“激怒”により改心した所も中々凄いと思います。そう言うところがないと、こう言うヒット作品ばかり書き続けられないんでしょうね。
骨のある内容だが重くなく、ユーモアもあり、わかりやすい。ラストのス...
骨のある内容だが重くなく、ユーモアもあり、わかりやすい。ラストのスピーチには心から感動した。クラシック映画ファンには必見の作品だろう。ただ子供達は成長していくのにトランボとホッパーは最初からかなり老けていて年を重ねていったようには感じられず無理がある。俳優はもう少し若手のほうがよかったのでは。
もう一度観に行きたい!!
五つ星を付けておきながら…
実は最初の数分、睡魔に襲われて意識が朦朧としていたんですよね。
好きなものは好き!
合わないものは合わない!
という性格なので、今回は失敗したかなーと諦めていたのですが(笑)
まさかまさかの巻き返し!!!!!
映画館で、
エンドロールで、
拍手したくなる作品は久しぶり\(^o^)/
最初数分の自分の態度を呪いたくなりました。笑
本当に素晴らしい作品!!!
もう一度、もう一度!映画館に観に行きたい!!!!!
劇中で流れた『ローマの休日』。
やっぱりすごくテンションが上がる!
かっわいいんだよなぁ。。
なんて素敵な映画なのかしら♡
色褪せない名作!
今年大好きな映画の一つになった!
・・・だから、気になったロードショー作品は一本たりとも、劇場で見逃しちゃいかんのだっ!と痛感した一本でした!やはり映画館通いは映画フアンたるもの、絶対必須条項なのです!TV画面で2、300円でレンタルしたDVDソフトをぼーっと観るのとは、集中力も違えば、名作に出会えた瞬間の喜びは、それと代え難い至福の喜び!しかも何も前評判無しで自力でそれに巡り合えた喜び!映画館で感動出来る喜び!この作品で、正にそんな瞬間を味わえました。
この手の「伝記映画」は必ず、後になって「ここは史実と違う」「実際はこんな綺麗事では・・云々」というのが付きまとうのが常だが、個人的に言わせてもらえばそんなのナンセンス極まりない!ドキュメンタリーじゃなけりゃ、「事実」なんてどうだっていいんだから!映画の脚本はその為の物で、演出で感動的に仕上げてあるんだから「事実」とは別の世界がそこには広がっている。・・・別にこの作品に関して、そんな「蛇足」は何も耳にしてないけど・・・。役者でいうと、主人公も良いけど、奥さんのダイアン・レイン!良い女優さんになった!あと安物映画のプロデューサー兄弟の一人、ジョン・グッドマン!決して善人じゃない・・けど悪党でも無く、イデオロギーより、力関係より、兎に角金儲け優先!という味のある曲者を相変わらずの巨体に物言わせて好演してすんごく良かったです。「アルゴ」といい「マチネー」といい、この人ホント、インチキプロデューサーみたいな役ははまり役なんだよなぁ!あとエドワードGロビンソン役の人も良かった!決して友を売った奴だけが悪かった訳じゃない、皆、時代の犠牲者だった、っていう、今から考えると、訳の解らない、アメリカの「狂気の時代」を明確に伝える良い映画でした。ラストのトランボの受賞スピーチからエンドクレジットの映像までのくだりは、涙無くして見られない名シーンです。あ、あと「ヘレン・ミレン」も全く感情移入する隙を与えない極悪非道な悪女ぶりが徹底していて、素晴らしかったです。この映画の趣旨の為に身を投げ打って打ち込んだ演技には頭が下がります。このタイミング、これからのアメリカが、また危ない時代が再来する前触れを告げている様に取れて仕方ありません。今後のアメリカの「良心」に期待を込めて、この映画の成功を祈っています・・・。
頑張れトランボ家
アカ狩りというアメリカの黒歴史のなか、名前を隠しながらも書き続けた脚本家のお話。
トランボは誰が見ても天才脚本家だけど、それよりも奥さんの聡明さと強さが非常に印象的だった。
皆から尊敬されたトランボが尊敬していたのは、きっと奥さんだったんだろうなぁと想像してみたり。
トランボが奥さんの説教に耳を傾けてくれてホッとしたし、それについての「あいつは口数が少ないから…」っていうセリフも最高。娘が着実に父の背中を見て育ってる感も最高。
これは逆境に耐え忍び、戦い続けた家族の物語です。
全97件中、61~80件目を表示