「最も書いた男。」トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
最も書いた男。
トランボと聞いても今ひとつピンとこないと思うが名作
「ローマの休日」の脚本家(だった、実は)と聞くと分かる
人も多いんじゃないだろうか。何と彼は二回もオスカー
を受賞している(でも偽名で)非常に有名な脚本家なのだ。
彼の才能に対し時代は皮肉なもので、当時は赤狩り旋風
真っ只中、共産主義者の彼はハリウッドから追放される。
有名なハリウッド・テンの一人となるが、監督や俳優にも
被害者は多数いる。チャップリンなども恐れられて追放、
身を守るために同業者を密告する者が多数いたのも事実。
監督のエリア・カザンが名誉賞を受け取った時、皆が拍手
しなかったのは彼が密告者だったからで、今作ではエド
ワード・G・ロビンソンがそれと同じ立場で描かれている。
しかし何よりこの時代を言葉で表現したトランボの最後
の演説は爽快だった。生活のためやむを得ず密告せざる
を得ない立場に追い込まれた者を恨んではいないと丁寧
に語る彼が言葉にも人間力にも優れていた人だと分かる。
家族を愛し大切にした父親像も描かれ、のちに反発する
娘や忠告をする妻も彼が生活の全てを握っていることを
よく認識していた。家族揃ってテレビで授賞式を見る姿
はなんと微笑ましいことか。呼ばれる名前は偽名なのに…
トランボが指名された理由に仕事の速さが挙げられるが、
オリジナルを仕上げた上に手直しまでも請け負っていた。
もの凄い仕事量をかなりの速度で仕上げる力を持った人
だったことが分かる。仕事のできる人ってやっぱり速い。
彼を支えた妻をD・レインが好演。その他J・グッドマン、
H・ミレンなど、共演陣も豪華に怪演していて素晴らしい。
やっぱりハナシが面白くなきゃ映画じゃないでしょ~と
常に思う自分は、かのおバカヒーロー映画が発した真の
ヒーローは脚本家だと評するオープニングに多いに賛同。
トランボの作品はローマ以外にも面白い作品がたくさん
あるので、若い世代も観たら納得がいくんじゃないかな。
(ただ黙々と書き続ける姿に感動。闘うならそこだよね!)