トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のレビュー・感想・評価
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映画史を俯瞰する上で欠かせない時代の傷跡を扱った硬派なドラマ
この脚本家の半生はとびきりのドラマに満ちている。当人にしてみれば苦闘の連続だったに違いないが、彼をこれほどの逆境へと追いやったことで歴史に名を残すほどの名作が誕生したのだから運命とは皮肉であり、滴り落ちる水、打ち続けるタイプライターのキーが巨大な岩を砕くことだって往々にして起こりうるのだ。初めはイデオロギーに関して頑なだった彼が、自身の投獄や仲間を失ったことで徐々に戦略的になっていく様の、まさに「史実は小説よりも奇なり」の巧みな転身ぶり。またそんな彼を支える家族の団結力もまた、映画に独特のダイナミズムをもたらしてやまない。そんなドラマを堪能しつつ、第二次大戦後の映画界に吹き荒れたレッド・パージの様子を追放される側から描く視点は、映画の歴史についてもっと知りたいと思う者にとって大きな財産となるだろうし、この潮流の中で有名スターたちが各々どのような主張を展開していたのかもわかって勉強になった。
現在、ハリウッドに民主党支持者が多いのは、マッカーシズムの反動・・・と聞いたことがあります。
マッカーシズムが吹き荒れた50~60年代のハリウッド。共産主義を信奉していた脚本家が辿る苦難の道を描く物語。
当時のハリウッドの状況は定期的に観ることが出来ますね。ハリウッドとしては、相当なトラウマを抱えているのだと思います。
私も、それらの映画の鑑賞や、ネット等で最低限の知識は持っているつもりでした。それでも、「ローマの休日」や「スパルタカス」「栄光への脱出」を作った脚本家が、長く表舞台からパージされていることは知りませんでした。
映画は、トランボとその家族の苦闘の半生をしっかりと活写。
自らの名前を出せず、或は自らが書きたいものを書けない苦しみ。その苦しみを共有することになる家族。それらのエピソードが胸に刺さります。
その苦しみの描写が秀逸なだけに、煌びやかなネオンを背景にしたケネディのコメントにカタルシスを感じることが出来ました。
私的評価は4.5にしました。
エンタメに徹した共産主義者
トランボの脚本からイデオロギーは感じない。それに驚嘆する。ハリウッドに敵視されるほどの思想をもっているなら作品にそれがあらわれてしかるべきだからだ。ところがトランボの書いたのはすべて完全なエンタメで、しかもゴーストで書いたのが二度もオスカーを獲るほど天才だった。トランボの脚本は才能にあふれていたがイデオロギーはいっさい漏れ出なかった。ローマの休日に共産主義を感じますか?
このことをわかりやすくするために逆の例を言うと新聞記者を書いた某記者にはイデオロギーはあったが才能はなかった。いやイデオロギーなんてものもなくて自己顕示欲だけがあった。だが映画新聞記者は賞をとったので某記者のようなごろつきリベラルの地位を向上させてしまった。日本映画界自体がリベラルがつくってリベラルがほめそやす構造をしているからだ。キネマ旬報系のお百姓さんたちが年度ごとに集まって荒井晴彦がベストで山崎貴がワーストというリストをつくっては悦にひたっているのが日本映画界。ぜんぜんいらない。とっとと滅んでしまえ。
ただし映画トランボは操作的であるとも批判されている。批判がでるだけでもさすがハリウッドである。あんだけばかな内容だったにもかかわらず映画新聞記者を公的に批判しているやつはいなかった。知ってのとおり新聞記者は政府が内緒で細菌兵器つくってまんがなという超弩級与太話なんだがそれを日本中がほめた。繰り返すがリベラルがつくってリベラルがほめるそれが日本映画界だからだ。
操作的であるとする批評家の言及は、共産党がたんなる野党のように見えてしまうこととブラックリストに載った者が全員無実のように見えること。
トランボは事実上マルクス・レーニン主義を根底とするスターリンや金日成を含むソ連式共産主義の支持者だった。共産主義は基調的に暴力革命を辞さない姿勢を是としている。むろん日本共産党もそうだ。だったら警戒はまぬがれず、やみくもに迫害されたわけではない。それが映画では不当な弾劾をうけたような見え方をしていると指摘された。
ただなぜトランボの脚本人生がドラマチックだったのかといえば赤狩りの真っ盛りだったからだ。映画はたしかに操作的で、トランボの陥った悲運に同情的である。とはいえ赤狩りという特殊状況下にあったことをかんがみるとトランボに同情せざるをえない。
この事情をつきぬけるのがトランボの才能だった。トランボは作家としての能力をすべてエンタメに転化していた。繰り返すが、それに驚嘆した。
たとえば日本で思想をもった人を想像してみたとき、彼/彼女はエンタメをつくれますか?たとえばフェミニズム。しおりさんは自身の体験をエンタメにできましたか?だれでもいい、リベラルなやつをつかまえてきて、彼/彼女はその思想がいっさい漏れ出ないエンタメをつくることができますか。・・・。日本人にはそれが難しく、概して日本の思想家活動家は思いを物語にトランスフォームすることができない。日本の思想家活動家にローマの休日が書けますか?つまりトランボは天才脚本家なだけでなく、ものごとを分けて考える分割思考力があった。
たとえば映画に出てくるトランボの仲間で癌で亡くなるアーレン(Louis C.K.演)は架空の人物だそうだが、かれは自身の共産思想を作品「エイリアンと農夫」に投映させた。エイリアンが労働者の権利を語り、資本主義の病理と中産階級の慢心を説く・・・。これじゃ俺まで赤狩り公聴会に召喚されちまう──と、B級映画製作会社キングブラザーズのジョングッドマン演を怒らせた。
つまり凡人の思想家活動家が脚本を書けばそうなる。考え方の土台となる共産思想が物語にもにじみでてくる。それがトランボにはなかった、そのことに驚嘆したという話。
そんなトランボにも自らの思想を投映したやりたい映画があってそれが原作脚本監督をしたジョニーは戦場へ行った(1971)だが、それ以外は個をおしころして受注作品や恋愛や西部劇をかきまくった。ウィキをみたらフランクキャプラのIt's a Wonderful Life(1946)にも初稿参画していたしパピヨンもトランボが書いた。
つまり、この全体像のなにがすごいのかというと、内情を知らない我々から見えることに過ぎないが、彼の人生には共産主義らしき左翼的あるいはリベラル的な行動がなかった。逆に言えばなぜ共産主義を標榜していたんだろう。なぜそれを主張する必要があったのだろう。共産主義的なことをしないのに。
今(2025年2月)アメリカには赤狩りのような粛清が敷かれている。推進しているのはトランプ大統領とイーロンマスクだ。トランプは就任早々大統領令に署名しまくって国土から不法移民を、女性競技からLGBTQを追い出した。先日マスクは何百兆円という不透明なお金の使い方をしていたUSAIDという海外支援団体を鶴の一声で解体させた。コラボの何百倍もの規模で公金をちゅうちゅうする第三セクターを一瞬でなきものにしたということだ。
そういうことをがんがん実践するトランプやマスクはひでえのか?と・ん・で・も・な・い。庶民にとってみたらLGBTQも意図不明なNPOもたんなる利権にすぎない。リベラルや多様性を掲げる意識高い系は「差別だあ」と叫んでお金儲けをしている活動家、我田引水事業主にすぎない。
わたしたちが今のアメリカに見ているのは有言実行という日本ではSFになってしまった言葉の実演なのである。
すなわちトランボはラストのアメリカ脚本家組合ローレル賞の受賞スピーチにおいていわれなき迫害をうけたこと、結果的にダイアンレイン演じる妻やエルファニング演じる娘たちに苦渋を強いたことを観衆に向かって泣訴するのだが、そりゃアメリカのせいというよりはあなたが共産主義者だったからだろう。
でもトランボはローマの休日やオールウェイズや数々のいい話を書いて庶民を楽しませた天才だったのでそれらが許容できる──そんな話だった、と個人的にはとらえた。
カークダグラス役もジョンウェイン役も似ていなかったがエドワードGロビンソン役のマイケルスタールバーグは似ていたと思う。苦み走った顔付きでいろんな白黒映画で見た記憶がある。
imdb7.4、RottenTomatoes75%と79%。
【米ソの冷戦下で起こったハリウッドでも行われた赤狩り。人権、名誉、仕事、命を失った人達の中で、稀代の名脚本家ダルトン・トランボが後世に残る名脚本を書く姿を、彼を支えた家族の姿と共に描き出した逸品。】
ー 赤狩り:狭義では1940年代末から50年代にかけて、共和党議員ジョセフ・マッカーシーらによって、”共産主義者”とレッテルを貼られた人たちがはっきりとした根拠なしに攻撃された時代。ドナルド・トランプを育てたとされる悪名高いロイ・コーンがジョセフ・マッカーシーの右腕で有った事は、有名である。ー
◆感想<Caution!内容に触れています。>
今作では、自由の国アメリカで70年前にこのような非人道的な事が行われていた事を、そしてハリウッドでも行われていた事を描いているのである。
但し、今作ではダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)達、ハリウッド・テンを生み出し、ブラックリストを生み出した当時の政治状況を明らかにする中で、赤狩りに加担したゴシップジャーナリスト、ヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)などを登場させているが、主としては闇の時代においても、名を変えて脚本を書き続け、別名義でオスカーを二度も獲得したダルトン・トランボを支え続けた、妻クレオ・トランボ(ダイアン・レイン)を始めとした家族が彼を信じ、葛藤の中支える姿を描いているのである。
今作を観ると、高名な俳優やその後大統領にまでなった人物が、非米活動委員会のメンバーだった事が分かるのである。
だが、ダルトン・トランボが、自分の脚本が名前が出ない事が分かっているのに、一日18時間、週7日間働くのである。そして、漸く70年代にその名誉が回復された時に、彼が満場の観衆の前で行うスピーチは感動的である。
<トランプが再び大統領になり、日本を含めた世界は成り行きを見守っている。だが、私は彼が掲げる自国ファーストという思想や、力で相手を屈服させる政治手法が大嫌いである。望むべくは、再び赤狩りの様な思想統制が、ロシア、中国に次いでアメリカでも起こらない事を願うのみである。
今作では、突然”共産主義者”である(あった)という事実のみで(劇中で描かれているように多くの人は無関係である。)人権、名誉、仕事、命を失った”赤狩り”という思想統制の恐ろしさと、それに屈せずに家族と共に戦った稀有な脚本家の半生を描いているのである。>
赤狩り時代にどう生きる?
77点ぐらい。『ローマの休日』や『黒い牡牛』の脚本家
12カ月のシネマリレー2024-2025、にて鑑賞。
面白そうには思えなかったんだけど、エル・ファニングが出てる事と評価が良さげ、だったので…
そしたら、ダイアン・レインも出てて得した気分(笑)
ダイアン・レインは『ストリート・オブ・ファイヤー』とかの80年代のイメージが強かったんだけど、お年を召された近年の方が好きですね。
渋くてカッコイイのと人情味を感じるようになった(笑)
『ローマの休日』や『黒い牡牛』などの脚本家が赤狩りの標的にされる話だけど、
個人的には『黒い牡牛』の秘話が知れた事が興味深かった。
闘牛を観た時、最後に牛が殺されて観衆は喜んだけど、その事に自分は違和感を感じ、悲しかったと。
『黒い牡牛』は、牛を助け守ろうとする優しく純粋な少年の話です。
以前、観て感動したんだけど、今回つながって興味深かった。
映画ファンなら、ハリウッドの赤狩りを知っておいた方が、より映画を楽しめると思います。
12カ月のシネマリレー2024-2025、の第4弾(2025/2/7~)では、同じく赤狩りの話で、
ジョージ・クルーニーやロバート・ダウニー・Jr.が出てる『グッドナイト&グッドラック』が上映されますよー。
評価は75点じゃ低く感じ80点じゃ高すぎる感じなので77点ぐらい、星的には厳しく3.5。
「赤狩り」の嵐の中、したたかに脚本を書きまくったトランボ
この映画製作に関わった監督と俳優始め全てのスタッフの信念に脱帽!なんで日本でもっと宣伝しなかったんだろう?自分が気がつかなかっただけなのか?ハリウッドの赤狩りの実態はまるで知らなかった。投獄までされるとは!ユダヤ人は今はアメリカ合衆国が支援する大富豪というイメージだが、当時は名前でわかる、といってハリウッドでユダヤ人はユダヤ人であることをなるべく隠していたことにも驚いた。ナチがユダヤ人にありとあらゆる仮想敵イメージをベタベタと貼りまくっていたのと同様のことを戦後のアメリカ合衆国もしていたことがわかった。
シナリオライターとして抜群の才能をもった天才のトランボとその家族を軸に、アメリカ合衆国の同調圧力、常に仮想敵国を必要とする北米「愛国心」の胡散臭さが生々しく描かれていた。そのど真ん中に置かれたトランボが逆説的だが私にとって救いだった。ユーモアがあって夫としても父親としても頼もしい。妻や娘の言葉に耳を傾ける男、裏切られても友の立場を理解する男、仕事でいっぱいいっぱいで逆ギレもする男。世界や状況や人間そのものをよく見つめ観察し自由に頭の中でしなやかに考える人だから、あんなに素晴らしいセリフや気持ちを描くことができたんだろう。
トランボの妻が素敵だった。家族の写真をカメラで撮って現像もする。楽しいピクニックでジャグリングしたり、パンチングボールをこっそり出して「こうやるのよ!」と娘のニキに伝授、誰を考えてか、は聞かれても言わない!そんな妻=ママをお前は一日一回は笑わせるんだよと息子に頼んでトランボは刑務所に向かう。インテリで理知的な妻。時代が異なっていたら主婦ではないだろう。
JFK辺りから潮目が変わり、「ローマの休日」も「黒い牡牛」も実作者であるトランボの名前で改めてアカデミー賞が授与される。トランボにとって賞なんてどうでもいいだろう、自分の名前が自分の手許に戻った、それに一番ほっとしたと思う。合衆国政府の圧力に屈したハリウッドの歴史が、リベラルなハリウッドというイメージを作りそれが#Me Tooの流れに繋がったのだろうか。映画「オッペンハイマー」における赤狩り、共産党員だったか否かをしつこく聞く公聴会を思い出した。赤狩りはハリウッドだけではない、北米全部に吹き荒れた北米の嫌らしさ全開の嫌な空気だ。その北米の言いなりになっている国に居るのは誰?絶望的になる。
おまけ
カーク・ダグラス役がダグラス本人よりかっこよかった気がする!ダニエル・クレイグ的雰囲気があってブルーの目が美しかった。
非常に手堅く堅実な伝記映画だね。
脚本家で米国共産党員だったダルトン・トランボは、議会証言を拒否して服役する。彼は、「ハリウッド・ブラックリスト」のうち、特に有罪判決を受けた10人、「ハリウッド・テン」の1人となる。
釈放後のトランボは、『ローマの休日』を書いたが、友人に名義と報酬の一部を渡す。彼は、B級映画の脚本家として働く一方、妻や子供たちとの不和も生じる、、、。
実在の脚本家、トランボを描いた伝記映画。脚本にひねりが無いと言えばそれまでだが、非常に実直かつ、手堅い演出で描き切っている。
東西冷戦下、赤狩りやハリウッドテンなど、鑑賞前に、背景知識は知っておいたほうが良いかも。
主演のブライアン・クランストンの演技が素晴らしく、ともすると善悪に単純化されすぎる物語を、弱者が時代の流れに耐え抜いて名誉を回復する物語へと、力強さと彩りを与えている。
エンタテイメントがイデオロギー対立の嵐に巻き込まれた不毛な過去を描く
米国のレッドパージ(赤狩り)、いわゆるマッカーシズムについては、2005年のジョージ・クルーニー監督作『グッドナイト&グッドラック』があったが、本作はそのハリウッド版ということになろうか。
ジョセフ・マッカーシー上院議員が共産主義者摘発活動を行った時期は1950~1954年の5年間で、米国での赤狩りもその期間に限定されていると思っていたのだが、本作を見てそうでないことを知った。
調べてみると、マッカーシーの活動の舞台は上院政府活動委員会小委員会だったが、ハリウッドの赤狩りは主に下院非米活動委員会を舞台に47~60年頃と、より長期間実施されている。マッカーシーの失脚と共にその権威は失墜し、59年には赤狩り当時の大統領だったトルーマンに「今日、この国で最も非米的な物」と批判されながらも存続し続け、廃止されたのは75年になってから。
トランボは恐らくはマッカーシーが失脚した54年、もう大丈夫とメキシコから米国に帰国してきたのだろうが、そうは問屋が卸さなかったのである。米国内にはこうした赤狩り組織がまだ存続し続け、民間にも協力組織があり、偽名でシナリオを書き続けねばならなかった。
本作はこのトランボの成功から赤狩りによる転落、投獄。赤狩りに熱意を燃やす「アメリカの理想を守るための映画同盟」とそれに積極的に協力する者、恐怖から共産主義シンパの業界関係者を売る者等々の思想と生活、人間関係のドラマを描いて見ごたえがある。
トランボが三流映画のシナリオ執筆で生活を凌ぎ、さらに仲間も巻き込んで執筆チームを結成して彼らの生活まで支えていくシーンは面白い。
その間、偽名作品で2つもオスカーを獲得してしまい、最後にはオットー・プレミンジャーやカーク・ダグラスら弾圧を恐れない監督、俳優たちの支援もあって、実名で活動できるようになっていくのは痛快である。
本作を見ると、エンタテイメント界が政治イデオロギー対立の嵐の中に巻き込まれると、いかに不毛な結果になるかを痛感させられるが、今、ハリウッドは人種差別を巡る別のイデオロギー対立の嵐の中にいるのではないかという疑念が拭えない。
いつの時代も
気分爽快
強い信念、愛する家族の支え
名作「 ローマの休日 」の原案者、アメリカの脚本家ダルトン・トランボをブライアン・クランストンが熱演。屈辱の刑務所での生活、執筆の様子、彼を支える妻や家族の思い等、見応えがありました。
美しい妻クレオをダイアン・レインが、長女ニコラをエル・ファニングが演じる。
家族の存在が心の拠り所となり気持ちを奮い立たせるトランボの姿、苦悩する彼に対する家族の思いが沁みた。
ー いつも君たちを思ってる 〜 愛を込めて
ー「 王女と無骨者 」
ー 私達は名前を取り戻したと
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕)
『ハリウッドに嫌われた』と邦題の副題『アメリカ合州国に嫌われた』だぜ
『ハリウッドに嫌われた』と邦題の副題が示すが『アメリカ合州国に嫌われた』だと思う。どちらでも良いとは思えない。まぁ、どうでも良いが。
さて『アメリカ共産党』は現在でも存在する。では、なぜ誰も立法に立候補しないか?それはアメリカ共産党は非合法だからだ。つまり、結党は出来ても、上院、下院議員にはなれないと言う事だ。勿論、大統領にもなれない。
先ずはそれを知るべきだろう。自由と民主主義の国たが、法的には大きな壁が存在するのである。
『黒い牡牛』『ジョニーは戦場へ行った』が好きで『エドワード・G・ロビンソン』が好きだった我が亡父に見せてあげたい映画だ。
僕の感想は前述の通り、だから、なぜ『赤狩り』があったかを考えるべきで、1950年は朝鮮戦争が始まる年。だから、この映画では、ジョン・ウェインやレーガンやロビンソンがヒール役をやっていているが、そもそもがアメリカの国策なのだ。
従って、反共の波は収まったわけではない。1960年代に入れば、ベトナム戦争が反共を後押しする。そして、1991年にソ連が崩壊しても、アメリカは反共はそのままである。勿論、中華人民共和国がアメリカにとって仮想敵国だからだ。
つまり、アメリカにとって仮想敵国になった国のイデオロギーを排除すると言う国策なのである。
がしかし、ロシアがその虚を付いて謀反を起こした。それがウクライナとロシアの争いになるのだ。
話がそれた。
この映画で一番触れなければ駄目な点。やはり、エリア・カザンとの関係だと思う。
ハリウッド・テンはこの映画の様に名誉回復するが、エリア・カザンはその反動で嫌われ者に現在は位置している。だから、邦題の『ハリウッドに嫌われた』と言う副題に物凄く不満を持つ。
因みに『赤狩り』は日本にも起きて、それは『レッド・パージ』と呼ばれ、アプレゲールと言う中途半端な時代に『下山事件』『松川事件』『三鷹事件』等の事件が起き、労働者が大量解雇される。これが『レッド・パージ』と言う。さて、そう言う事件が1949年に起きていると言う事を『レッド・パージ』と『赤狩り』を区別する必要性があると申し上げておきたい。
『レッド・パージ』の後に『赤狩り』が起こるのだ。
事件は全て闇の中であるが、手塚治虫先生の『奇子』、COMICSを読む事をお勧めする。
ジェイ・ローチ監督の信念
労働運動の旗手の脚本家
赤狩りに翻弄され苦難の創作活動を強いられた脚本家ダルトン・トランボの表現の自由への信念
赤狩りにより全盛期に別名義使用を余儀なくされたハリウッドの実力脚本家ダルトン・トランボの苦闘と復活の伝記映画。原案含め関わった作品には、「素晴らしき哉、人生!」「ローマの休日」「ガンヒルの決斗」「スパルタカス」「栄光への脱出」「いそしぎ」「パピヨン」などがあり、それらを観た時からは想像も及ばないハリウッド映画制作の裏側が赤裸々に描かれていて衝撃的であった。第二次世界大戦後の新たな緊張状態の冷戦の時代、共和党ジョセフ・マッカーシー上院議員の名からマッカーシズムとも言われる赤狩りは、共産党員やその思想を持つと思われる人たちを聴聞会に召還し議会侮辱罪を適用させ、禁固刑の実刑判決で弾圧した。言論の自由を制限してはならないとするアメリカ合衆国憲法を無視した下院非米活動委員会の強硬な姿勢と、その政治的プロパガンダの標的にされてしまったハリウッドの映画人の苦悩と悲劇には、時代も国も違う一映画ファンから見て、只々悲しいとしか言いようがない。第一回聴聞会の1947年から3年後、裁判費用の工面に疲れ果て上訴請求も棄却されて刑務所に収監されるシーンには怒りさえ覚える。
この作品を観る以前は、赤狩りに対する知識を積極的に得ることは無かった。赤狩りに協力した映画人では、エリア・カザンの名が挙がることが多くて知ってはいたが、今回名優エドワード・G・ロビンソンのトランボへの裏切りを知って正直驚くと共に、寝返りをせざるを得ない窮地に追い詰められたことにも心が痛い。この作品がトランボの立場で描かれているからではあるが、対して“アメリカの理想を守るための映画同盟”のメンバーで大スターのジョン・ウェインが悪役として描かれている。配役も軽く、この点は感心しない。映画として興味深かったのは、ヘレン・ミレンが演じた元女優のゴシップ・コラムニスト ヘッダ・ホッパーと言う女性の横柄で威圧的な態度でMGMの強者創始者ルイス・B・メイヤーやスター俳優カーク・ダグラスを脅迫するところ。言論の力で赤狩りを推進する影の立役者の存在感が強烈に描かれている。登場する監督では、オットー・プレミンジャーを演じたドイツ人俳優クリスチャン・ベルケルが出色。「帰らざる河」「栄光への脱出」「バニー・レイクは行方不明」しか観ていなが、経歴を読むとこのベルケルが演じたような傍若無人の堅物監督であったようだ。そんな監督が才能を認め「栄光への脱出」の脚本をトランボ作と公表する展開は気持ちがいい。出所後仕事を選べないトランボが低ギャラ覚悟で頼るB級映画専門の製作会社キング・ブラザーズの社長の描き方もいい。見に来てくれる観客を満足させる面白い映画を如何に創作するかに心血を注ぐ巨漢の熱血漢と、仲間の仕事を斡旋するために家族総動員で対応するトランボ家の人たち。後半の“アメリカの理想を守るための同盟”メンバーの脅迫に屈せず、暴力で対抗し追い払う場面のキング社長のキャラクター表現も面白い。反面、金の為に才能を浪費したくない脚本家仲間のアーレン・ハードの赤狩りに対する怒りを抑えきれず自滅していく悲劇も描かれている。
主演のブライアン・クランストンの堅実な演技は、この伝記映画の説得力を高めており、良妻賢母のクレオのダイアン・レインの美しさと落ち着きある演技は安心感を与える。すでに50歳の中年婦人になっても美しさは衰えず、良い役を得ていることは素直に嬉しい。娘二コラを演じたダコタの妹エル・ファニングも好演。カーク・ダグラス役のディーン・オゴーマンとエドワード・G・ロビンソン役のマイケル・スタールバーグは、どちらも似た雰囲気を醸し出していて良い。当時の映像も最小限に抑えてメリハリの利いた時代再現になっていると思う。1957年の最後のアカデミー原案賞のテレビ放送が流れてデボラ・カーが読み上げる候補作に、レオ・カッチャーの「愛情物語」とジャン=ポール・サルトルの「狂熱の孤独」、そしてチェーザレ・サヴァッティーニの「ウンベルトD」がある。「黒い牡牛」が未見なので断定はできないが、どれが受賞してもおかしくない作品が並んでいる。
赤狩りの裏事情を丁寧に再現して、ダルトン・トランボというハリウッド脚本家を知る上でとても分かり易い伝記映画に仕上がっています。これは、原作者ブルース・クックと脚本のジョン・マクナマラの功績が大きく、演出のジェイ・ローチと撮影のジム・デノールトの個性や技巧の高さを味わうまでの醍醐味は無かった。それでもテレビインタビューで、「黒い牡牛」の脚本家ロバート・リッチとトランボ自ら名乗り上げるシーンのクライマックス、ダグラスやプレミンジャーやホッパーが其々に反応するところは巧い。ハリウッド全盛期の1940年代から50年代に起こった共産主義への理不尽極まりない弾圧を振り返る意味と意義はありますが、実質は言論の自由と表現の自由の重要性を感じ取るべき映画でした。疑問が残るのは彼の畢生の映画「ジョニーは戦場へ行った」に全く触れなかったこと。エンドロールで語られた娘への感謝で、家族思いのトランボの印象で優しく終わっています。
ハリウッドの赤狩りというと、ディズニーとレーガンのイメージだったが
ヘレン様のエグい攻撃。
儲かりさえすれば、信条とか正義とかどうでもいいぜ、ゲハハハというハリウッドのゲスい映画屋どもが…最低なのに同時に最高に見えてくる不思議。なんかとてもアメリカ的だなあと思った。
ま、『黒い牡牛』はともかく『ローマの休日』くらいは観ないとなあ。
実録にハズレなし
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