「スクープか、誤報か」ニュースの真相 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
スクープか、誤報か
ジョージ・W・ブッシュが再選を目指していた2004年、米大手TV局CBSがあるスクープを掴む。
ブッシュが従軍時代、特別優秀な軍人でなかったのにも関わらず、父親の影響から優遇されていたという軍歴詐称。
報道は大反響を呼び、大スクープをしたと思えたが…。
今から20年前。何となくうすらぼんやりニュースで見て覚えているような…。
でも、どうなったかまでは知らない。
渦中の人物の回顧録に基づき事の顛末を描いていく。
スクープを掴んだのは、同局プロデューサーのメアリー・メイプス。
関係者の証言や裏付けも取り、報道番組『60 Minutes Ⅱ』でベテランキャスターのダン・ラザーが報じる。
大スクープに局は沸くが、急転直下。
各方面から信憑性を疑う声。メモに使われたフォントが当時無かった、軍からも確たる証拠は無い、さらに有力証言者が嘘を付いていたと…。
これは誤報ではないのか…?
メアリーはスクープの真実性を訴えるが、調査委員会が設けられ、窮地に立たされる…。
メアリーらがバッシングに負けず、ジャーリズムの正義を貫く展開かと思ったら、結果的にこれは誤報であった。
となると印象は変わってくる。
ジャーナリストとして間違いや責任を受け入れるのかと思いきや、メアリーは尚も真実だと訴える。
その結果、スクープに関わった多くの者が責任を問われ、ダン・ラザーは降板。メアリーは解雇。
局やTV業界や報道に関わる者を揺るがす大不祥事レベル。
ケイト・ブランシェットやロバート・レッドフォードは熱演魅せるが、当事者たちをヒロイックに描いているのはちと違和感を感じる。事実、各方面から論争や賛否両論。
脚本家ジェームズ・ヴァンダービルトの監督デビュー作で、実直な演出だが、ちとカタルシスに欠けた。
何故、誤報などしてしまったのか…?
何故、確かな事実確認をしなかったのか…?
言うに及ばず。現政権へのアンチ視点が目を眩ませ、先走ってしまった。
再選果たしたのが皮肉。
してしまった事は否を認め、責任を取らないといけない。
その真摯さがあれば、ジャーリズムは死なない。
