「【メディアが”真実”を追い求める際の難しさと、それでも屈しないジャーナリズム魂を描いた作品。】」ニュースの真相 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【メディアが”真実”を追い求める際の難しさと、それでも屈しないジャーナリズム魂を描いた作品。】
■ジョージ・W・ブッシュ大統領が再選を目指していた2004年。
CBSニュースのベテランプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、ブッシュの軍歴詐称疑惑を裏付けるスクープを放送する。
番組は大反響を呼ぶが、後にその証拠文書の字体から、保守派勢力に偽造と指摘され、メアリーたちは本来のブッシュの軍歴詐称疑惑から、自身たちの報道の確からしさへの疑念に巻き込まれて行く。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、実際に起きた事件のドラマ化だそうであるが、私はCBSニュースがスクープを取るために、デッチ上げた事件であるとずっと思っていた。
・だが、今作の製作サイドの制作スタンスは、メアリー・メイプス達は”真実”を暴いたが、”ある力”によって、それを捻じ曲げられた、という描き方をしているように思えた。
・メアリー・メイプスを演じたケイト・ブランシェットの、疑念に対し決然と向かって行く姿は流石の迫力であり、一方では信念を持ってスクープした”真実”が偽造と指摘され、追い詰められて行く姿も又、迫真であった。
・報道番組の”60ミニッツ”の実在するアンカーマン、ダン・ラザーを演じたロバート・レッドフォードも、見事なる貫禄ある演技であり、映画としてはとても面白く鑑賞した。
<只、矢張り気になったのは、メアリー・メイプス達の取材方法である。
それが、ジャーナリストにとっては常識なのかもしれないが、門外漢から見ると証言の得方が、電話での遣り取りに頼っている部分が多く、裏付けをしている様も描かれていない。
報道番組故の時間的制約が有ったのは、観れば分かるが、それでも刑事訴訟法で言えば”疑わしきは、被告人の利益に。”という司法の鉄則を学生時代に叩き込まれたモノとしては、”疑わしきは、罰する。”というようにメアリー・メイプス達が動いているように見えてしまったのである。
映画の再後半で、メアリーが”貴女の政治スタンスは?”と聞かれ”リベラル。”とハッキリ言うシーンがあり、彼女たちは確かに信念を持って”真実”を追求していたであろうことは、良く分かる。
だが、結果的にメアリーやその上司、仲間達はCBSから解雇され、ダン・ラザーもアンカーマンを辞めている。
私には、今作は、”ジャーナリズムが真実を追う難しさ”と、誤った方法で情報を集めると”意図せぬフェイクニュースになる”という事を伝えたかったのかな、とも思ったし、”大いなる力が働き、真実を曲げられた。”という事を伝えたかったのかな、とも思ってしまった作品である。
真摯なる心を持ったジャーナリズムが”真実”を追う事は難しいのだなあ、とも思った作品でもある。>