フラワーショウ! : 映画評論・批評

フラワーショウ!

劇場公開日 2016年7月2日
2016年6月28日更新 2016年7月2日よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

信念と情熱で夢に向かって突き進む主人公が、幸せな高揚感に浸らせてくれる

世界最古にして最高峰のチェルシー・フラワーショーに斬新なアプローチで臨み、史上最年少で優勝したメアリー・レイノルズ。その挑戦が描かれると聞けば、ガーデニングを愛する女性たちのツボを刺戟するキュートなサクセスストーリーを想像する人も多いだろう。確かに、いまや世界的なランドスケープ・デザイナーとして活躍するメアリーの夢の実現への道のりがハートウォーミングに描かれているけれども、これはたんなるサクセスストーリーではない。

なぜなら、著名な園芸家たちが最先端のデザインを競い合うガーデニング&フラワーショーに、アイルランドの田舎娘が野草とサンザシの木だけという型破りな庭で挑んだ原動力は、彼女が子供の頃から自然の力を感じ、自然本来の美しさを感じてもらいたいという想いだから。

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無名の女の子が挑戦の入り口に立つことすら難しいチェルシーへの扉が開かれるきっかけや、夢をかなえようとするメアリーや彼女を支持して集まる人々の姿の織り成す物語は、エンターテインメントとしてもウェルメイド。だが、その一方で、メアリーの夢の背景にあるビジョンを丁寧に描いているからこそ、観客も彼女の夢の庭園の実現にときめかずにいられなくなる。その丁寧さは、チャールズ皇太子も参加するフラワーショーでの造園作業の騒動がメインになるのかと思いきや、むしろ、肝心の庭園作りがなかなか始まらないことにヤキモキさせるくらい。

そんなサクセスストーリー以上にときめかせてくれるのが、彼女が愛する自然の美しさ。アイルランドの緑の風景はもちろん、はるかエチオピアの断崖からの臨む風景。そして、フラワーショーの常識を覆し、世界を変えることになった「ケルトの聖域」。自然の雄大さや、草木の繊細さをとらえた映像も、この作品のもう一人の主人公なのはいうまでもない。信念と情熱で夢に向かって突き進むパワーの持ち主でありながら、決して暑苦しくないメアリーのキャラクターとあいまって、幸せな高揚感に浸らせてくれる。

杉谷伸子

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