「シュールなギャグがはまった」ザ・フラッシュ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
シュールなギャグがはまった
フラッシュというヒーローのことは全然きいたことがなかったし、ビジュアルも惹かれるものがなくて、なんかジャスティス・リーグのザコみたいな存在なんかな、と思ったのであまり期待せずに観た…。
期待値が低かったからなのかもしれないけど、むちゃくちゃ面白かった。こんなヒーローもの観たかったんだよ~、と思った。アントマン観たときも同じこと思った。
「人間が超高速で動けたらどうなるのか」ということについて科学的解釈をして能力やストーリーにつなげてるところが良い。身体だけが超高速でも、服が空気との摩擦で燃えてしまうとか(本当は摩擦ではなく断熱圧縮だと思うのだが…)、能力者がほかの人間を高速で移動させたら、その加速にほかの人間は耐えられないとか、瞬間的に変身するのは実は単に速く着替えてるだけだとか…。
もちろん全部が全部科学的に整合つくわけがないのだけど、やっぱ物語の中で提示された「なぜ?」に対して、科学的に説明できたりすると、快感がある。
身体を超高速で振動させたら壁を通り抜けられる、という能力はよくわかんなかったが、まあなんかそういう科学理論があるんだろう、という気にさせられる。
あと、洋画のギャグってあまりはまらないことが多いのだけど、このコミュ障気味のあんまりいけてないヒーローがくり広げるシュールなギャグがはまりまくってむちゃ面白かった。赤ちゃんをずらっとならべて得意げになってるフラッシュと絶叫してる看護師とか、能力を失った主人公がたったった…、って普通に走るシーンとか、とくに面白かった。
歴史改変によりマイケル・キートンのバットマンとかスーパーガールとか出てくるのもまあまあ面白い展開だと思ったけど、予告編で見過ぎてしまってあまり感動はなかったかな…。あとマルチバースのいろんなバットマンや(幻の)スーパーマンが出てきたっぽいけど、昔の作品とかなんだろうな…、くらいにしか思わなかった。マニア向けの映画なんだな、という疎外感をちょっと思った。
正直、歴史改変により未来が変わるとか、マルチバースとかは、そんな安っぽくバンバン出すものじゃないと思う。お互いに決して干渉できないからこそパラレルワールドなのであって、そんな簡単に違う宇宙に干渉できたらパラレルワールドとはいえない。
フラッシュというヒーローや過去の自分と協力する展開のストーリーとかは面白かったけど、最後のオチはいまいちだと思った。ちょっと雑に処理しすぎというか…。
「愛する者の命を救うために過去に行くが、逆に事態は悪化してしまい、それを正すために何度も過去に行くが、そのたびにさらに事態は悪化していき、最終的にすべてを無かったことにする」、みたいなパターンの物語って、一番有名な「バタフライ・エフェクト」も含めて、過去改変ものの様式美みたいなもんだと思う(さらにいえば、真のラスボスが時間軸の違う自分自身だった、とかも)ので、今さらそれをワンパターンだとかは思わないけど、使い古されたパターンであるからこそ、整合性とかストーリーの流れとかキャラの心の動きとかを丁寧にするべきだったのではないかなー、と思った。
一番「なんじゃこりゃ?」と思ったのが、フラッシュが未来に戻る途中で「闇落ちフラッシュ」にどつかれて時間移動を中断させられるところ。そんな風になったら、「アイツは誰だ?」「自分以外にも時間移動できるやつがいるのか?」とか気になるはずだけど、全くそういった疑問をもたないのは不自然すぎる。
あと、自由に時間移動できる能力をもつヒーローというのは危険すぎる。リアルにそんな能力をもつ存在があったら、正義のヒーローだって「その能力は絶対封印しろ。できないなら殺す」って言うと思う。その危険性があまり指摘されないのもナンダカナと思ってしまう。
フラッシュというヒーローは単体でも十分魅力的だと思うので、ほかのヒーローとかマルチバースとかに頼らず、単体作品としての続編がみたいなー、と思った。でも、MCUにおけるドクター・ストレンジみたいな役割になっていくんだろうか…。
そうですね。これだけマルチバース作品が横溢してしまうと……
パラレルワールドには簡単には(何かの犠牲を払わずには)入り込めないと言うルールを改めて徹底して、その上で入り込むスリルを筋書きの肝にするとか、して欲しいですね。