「新生DCUのスタートダッシュは、フラッシュが駆ける!」ザ・フラッシュ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新生DCUのスタートダッシュは、フラッシュが駆ける!
紆余曲折のDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)10年。
当初はMCUのようにスタートするも、途中から繋がりを曖昧にしたり、全く別個の単体作品が作られたりと、なかなか定着や一貫性に欠け…。
興行も大ヒットしたり、期待外れだったり、批評も酷評だったり、絶賛されたり。
トップの入れ替わりによって製作体制も変更。中には、お蔵入りになった作品も…。
そんな中エグゼクティブに就任したのが、ジェームズ・ガン。“ライバル陣営”からのまさかの参入。
ガンは今後10年間を見据えたユニバースを計画。残念ながら製作中止になった作品もあるが、一大仕切り直し。
DCEUからDCU(DCユニバース)へ。
その要となるDCにとって重要作品。
その期待に応える大絶賛の嵐。ヒーロー映画史上最高傑作!
…公開前から?
この公開前の謎の絶賛評は、あくまで“関係者”。そりゃあ公開前に駄作なんて言えやしない。こういうのってあまり当てにならないんだよね。
実際レビューが解禁されたら、そこまで大絶賛一色ではなく…。現時点でロッテントマト支持率67%。
今日発表された全米OP成績は約5500万ドル。決して悪い成績ではないのだが、おそらく関係者は最低でも1億ドル以上のスタートを狙ってた筈。数字だけ見れば期待外れ…?
個人的にはDCの今後のラインナップのみならず、今年公開の作品の中でも非常に楽しみにしていた。
MCUで言えば『アベンジャーズ/エンドゲーム』のような、DCのこれからを担う超重要ポジション。
DCもいよいよマルチバースを投入。
話題のアノ人のカムバック。
何より『ジャスティス・リーグ』で初お目見えしたフラッシュというキャラの面白さ。待望のその単体作。
地上最速のヒーロー。
電光石火。超光速。
移動中は周囲が超スローになる。
構えは珍妙な格好だけど。
スーパーパワーを持ち併せていないものの、その超光速で人助け。
ファストフード店で注文した朝食を待たされてる間にだってヒーローのお仕事。
このOPシーンが最高。バットマンからの要請で崩壊危機の病院から人命救出。赤ちゃんたち、危うし! お菓子でエネルギー補給しつつ、フラッシュならではの方法で。
犯人一味を追うのは、バットマン。演じるは、ベン・アフレック。危機に、あのウーマンヒーローも駆け付ける。
『ジャスティス・リーグ』の世界なのだから当然とは言え、降板が伝えられていたベンアフや第3弾製作中止でもう見れないと思っていた“彼女”を見れた事に、興奮感激! このOPだけでテンションが爆上がりしてしまった。
このOPだけで初見の人にも分かるようフラッシュのキャラを説明。
そんな彼の正体は、バリー・アレン。至って平凡な青年。ちょっとお喋りで少々ウザいのが玉にキズだけど…。
でもバリーの陽キャラが、辛気くさかったDCEUにユーモアや明るさをもたらした。
一見お気楽な今時の若者風だが、実は悲しい過去を抱えている。
母親が何者かに殺された。その容疑者は、父親。バリーも父も無実を訴え続けているが、確実な証明が無い。父はもう何処か諦めている様子…。
幼少時、まだ生きていた母も言っていた。諦める事も大事。
映画は諦めるな!…を訴えるのが常なのに、これは異例。でも世の中に於いて、誰だってそんな場に出くわした事がある筈。諦める事も一つの勇気。無理に続けていたら、身も心もボロボロになってしまう…。
が…、本当に諦めなければならないのか…? 何か方法はないのか…? この能力を宿った意味は…?
悲しみのあまり、がむしゃらに走り出す。それは超光速を通り越して…。
そして遂に、ある方法と可能性に辿り着く。
がむしゃらに超光速で走り続けた結果、時を遡れた事を知る。
そう。過去に戻って、変えればいい。映画あるある。
が、これも映画あるある。過去を変えれば、必ず何かが起きる。
ならば、ダイレクトに母親を助けるとかじゃなく、影響が無いよう間接的に。
そこで思い付いたのが、トマト缶。
アレン家の運命を変えたトマト缶。あの日あの時あの場所で、このトマト缶たった一つだけ変えれば…。
過去を変えるに大小は無い。バリーは分かっていなかった。
たった一つのトマト缶を変えただけで…。
過去は変えられた。
変えた“今”に戻ってきたら、母親が生きている。父親もここにいる。
やった。成功した。
…と、思ったのも束の間。トラブル発生。
自分がもう一人いる…!
正確には、この時間軸の自分。
過去を変えて今に戻ってきたのではなく、変えた過去の時間軸に留まってしまっている。
あの時…。不思議な時空間で、何者かに放り出された時に…。
一刻も早く自分の世界へ帰らなければならない。
が、奇遇か運命の悪戯か、今いるのは、自分がフラッシュとなる直前。ある場所で雷と薬品を浴び、フラッシュとなった。
その運命も変えてはいけない。
ところがこの時間軸の自分が、チョーノーテンキなバカ。
自分はあの悲しみがあったから真面目な一面もあるが、どうやらこの自分は相当甘やかされて育ったようで…。
その言動にいちいちイライラ。…あ、でも、ジャスティス・リーグから見れば自分はこうなのかも…?
バリーの相棒は、まさかの自分!
どうもバリーです~、どうもバリーです~、二人合わせてバリー・アレンです~…な性格が全く違う双子漫才みたいなやり取り、掛け合いが面白い。
言うまでもなくそれは、一人二役と言うより、同一人物を巧みに演じ分けたエズラ・ミラーの演技力。
ミラーと言えば問題行動を幾度か犯し、本作のお蔵入りも危惧されたが、作品で魅せる個性は見事なもの。犯した罪は許されないが、更正の余地はあり。これからは真っ当に駆けよ!
Wバリーは運命の場所へ。
が、ここでまたトラブル発生。あの時と同じ状況で別バリーはフラッシュになったが、一緒に雷と薬品を浴び、自分はフラッシュとしての能力を失ってしまった。
と言う事は、自分の世界に帰れない…? おまけにフラッシュとなった別バリーはその能力ではっちゃけ。早速面倒を起こす。
過去を変えた代償はこれだけではなかった。
TVのニュースで、見た事ある光景、異星人…。
ゾッド将軍。
スーパーマンに倒された筈が、過去を変えた事により、あの時が再来。
再び地球の危機。スーパーマンやジャスティス・リーグを探し出さねば。
ところが、ワンダーウーマンもアクアマンもサイボーグも別人。ジャスティス・リーグが存在しない。
追い討ちを掛ける代償。これが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のリアルか…。
…え? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主演はエリック・ストルツ…?
ゾッド将軍が復活し、ジャスティス・リーグが存在せず、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主演がエリック・ストルツという、ここは全く別のマルチバース。
誰かいないのか…?
いた。
バットマン。
ウェイン邸を訪ねる。
が、自分が知るウェイン邸とは違う。
そしてそこにいたブルース・ウェイン/バットマンも、自分が知るブルース・ウェイン/バットマンではなかった…。
本作最大のサプライズ。
『バットマン』『~リターンズ』でブルース・ウェイン/バットマンを演じたマイケル・キートンのカムバック!
これが発表された時から信じられなかった。私のバットマン劇場初体験は『バットマン・フォーエバー』なので、まさかまさかマイケル・キートンのバットマンを劇場で見れる時が来るとは…!
今アメコミ界はマルチバースだらけ。うんざりの方もいるだろうが、こんなサプライズが出来るのもマルチバースのお陰。
老い、一線から退いたブルース。が、バリーの熱意に打たれ、再びバットマンのスーツをまとう。(ここの件、ちとあっさりし過ぎた感もするが…)
老いたとは言え、いざ戦線復帰すれば、活躍を見せる。マイケル・キートンのカッコ良さ。
そこに掛かるダニー・エルフマンのあのテーマ曲…!
またまたここでテンション爆上がり!
バットケイブのコンピュータからスーパーマンを探す。
手掛かりあり。極寒の地の政府の地下施設に幽閉。
救出に向かう。しかし、そこにいたのは“彼”ではなかった。
過去を変えた影響はここにも。
いたのは一人の少女。スーパーマンではなく、いとこのスーパーガール。
地下に幽閉され力を失っていたが、陽光を浴び、力を取り戻す。
過去の映画やTVシリーズとは違うビジュアル。黒い短髪にスーパーマンと同じスーツ。
が、そのスーパーパワーはスーパーマンに匹敵。新星サッシャ・カジェが熱演。
遂に集ったヒーローたちだが、バラバラ。
ブルースの“何故自分の世界でもないのに、この世界を救おうとする?”の問いに、バリーは答える。“母さんがいる世界だから”。
自分が過去を変えようとした理由を話す。それを聞いてしまった別バリー。
ブルースは今一度、共に闘う事を決意する。
バリーはクレイジーな方法でフラッシュの能力を取り戻そうとする。失敗すれば命は…。
決行。失敗か…? その時、スーパーガールが手を貸す。
バリーは再びフラッシュに。
自分を幽閉した人類を憎んでいたスーパーガールだが、彼女も共に闘う。
ジャスティス・リーグ再結成。…いや、新生ジャスティス・リーグ誕生!
ゾッド将軍の相手はスーパーガールが。
空の敵はバットマンが。
地上の敵はWフラッシュが。
即席チームとは思えないほどの活躍を見せる。
旧バットマンや新スーパーガールに食われ気味と思いきや、やはり単体作。Wフラッシュがここで大活躍!
ノリノリのBGMに乗って、超光速を発揮。
善戦していたが、途端に形勢逆転。絶体絶命のピンチと悲劇が…。
ならば、過去に戻って変える。別フラッシュが時を遡る。
制止しようとするフラッシュ。
別フラッシュは何度も何度も何度も…。でも何度やっても、結果は同じ。
絶対に変えられない過去もある。母親の言葉が思い出される。諦める事も大事。
冷静な判断が付かなくなった別フラッシュはそれでも変えようとする。
その結果、恐ろしい事が…。
あの不思議な時空間。
そこに現れた謎の人物。その正体は…!
そして、信じられない光景を目撃する。
幾つものマルチバース同士が衝突し、崩壊していく…。
あのトマト缶一つ。自分の悲しい過去を変えようとして、あらゆる世界の滅亡を招いてしまうなんて…。
一体、どうしたら…?
予告編なんかだと、復活したゾッド将軍に新生ジャスティス・リーグが挑む大アクションのようだが、本作のメインはそこじゃない。
決して逃れられない運命。それにどう対峙するか…?
悲しい過去を変えたい気持ちは分かる。最悪の事態を回避したいのも分かる。
だが変えたからと言って、全てが良き方向になるとは限らない。現に、さらに最悪な事態に…。
諦める事も大事。運命を受け入れる。
それを受け入れた時、運命は決して不条理だけじゃない。
一筋の希望。光。新たな道が開ける。
バリーはある過ちを正す。それは同時に、別れを告げるという事。
最初から変えられない運命だったのだ。
が、最後の最後に別の運命が変わった…。
ホラーに手腕を発揮していたアンディ・ムスキエティがヒーロー大作初挑戦。
ド迫力&大スケールのアクション、笑い所もいっぱい、エモーショナルなドラマは興奮と感動を呼ぶ。
DCEUのみならずDC作品を見続けてきた人には堪らなすぎる大サービス!
フラッシュが目撃したあらゆるマルチバースのスーパーマン。白黒TVのスーパーマン、代表格のあのスーパーマン、さらには幻のスーパーマン…。“彼”はきっとこんな形とは言え喜んでいるだろう。
ラストシーン。バリーは元の世界へ…戻ったのか? 何故なら、そこに現れたブルース・ウェインは、まさかのアノ人…!
辻褄が合わなかったり、強引だったり、荒唐無稽も多々あるが、それも含めての面白さ!
ヒーロー映画史上最高傑作とまではいかないものの、直近で見たヒーロー映画やDC作品では最上級。
個人的には、メチャ面白かった。
新生DCUの今後に心配もあったが…、
これなら期待出来そう!
この調子で駆け抜けろ!DCU!