「「ジャスティス・リーグ」の汚名を返上する快作」ザ・フラッシュ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「ジャスティス・リーグ」の汚名を返上する快作
マルチバースというよりは、タイムトラベルによる歴史改変の物語で、昔から何度も使われている題材だけに入り込みやすかったし、(スパゲッティーを使った説明も)分かりやすかった。
光速より速く移動することで時間を巻き戻すという「技」も、過去にスーパーマンが使っているので、そんなに違和感はないし、ある意味、(DCユニバース内での)理論的な整合性も保たれている。
歴代のバットマンやスーパーマンが出てくるところは、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」の二番煎じと言えなくもないが、それでも、マイケル・キートンの活躍は嬉しいし、彼が「いくら悪人を倒しても、両親は戻ってこない」と語る場面は、人生の年輪と戦いの虚しさのようなものが感じられて、しみじみとさせられる。
クリストファー・リーヴやニコラス・ケイジのカメオ出演にも、すでに亡くなっていたり、企画が幻に終わっているだけに、やはり胸が熱くなった。
そうしたゲストだけでなく、主演のエズラ・ミラーも、過去のトラウマがあり、ネクラで神経質なバリーと、そうした辛い経験がなく、天真爛漫て脳天気なバリーとを巧みに演じ分けていて、友人同士のようでもあり、師弟関係のようでもある2人の掛け合いには、バディ・ムービーのような楽しさがある。
それにしても、どんなに過去を変えても変えられない未来があるというのは分かるのだが、ヒーローたちが命を落とし、ヴィランが勝利するというバッドエンドが確定してしまうのは、この手の映画では極めて異例であるし、どこか釈然としないものがある。
「バズ・ライトイヤー」の時もそうだったが、過去に囚われた自分自身がラスボスだったという展開にも、やりきれない思いと後味の悪さが残る。
ただ、それだけに、主人公が母親の死を受け入れるという苦渋の決断に説得力が生まれるし、スーパーマーケットでの別れのシーンに目頭が熱くなるのだが・・・
何よりも、こちらの時間軸でのハッピーエンドには、予想通りとはいえ、やはりホッとさせられる。
ラストでジョージ・クルーニーが登場するに至り、「彼にとって、ブルース・ウェイン役は黒歴史ではなかったのか?」と驚くとともに、だったら、昨年の「トップガン マーヴェリック」のように、ヴァル・キルマーにも出演してもらいたかったと、少し残念な気持ちになったのであった。
AI技術で会話ができるようになったという記事も見かけましたが、やはり、体調が優れないのかもしれませんね。
もう一度、スクリーンで、ヴァル・キルマーの元気な姿を見たいものです。