裸足の季節のレビュー・感想・評価
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海外のこと、と割り切れない
封建的な風土のなかで生きるトルコの姉妹。こんなに若い年なのに人生のレールを敷かれてしまう。必死で抗うけど、現実的なオチでやりきれない思いが残ります。程度が異なるけど日本でもあり得るんじゃないかな。2016年の映画だけどまだ昔のこと、と言えないのがつらい。
禁じられた姉妹たち
徹底的に自由を束縛される5人姉妹。
最初のきっかけは少年の首にまたがった(肩車をしてもらい騎馬戦をした)ことを股間を首におしつける淫らな行為とみなされて幽閉される。
以後、因襲か宗教か世間体かあるいは僻地の閉鎖性によるものか、なんなのかわからないが、5人姉妹には自主も権利も与えられず、家に閉じ込められ脱走するたび鉄格子を強化され、ほとんど女囚ものかランティモスの籠の中の乙女を見ている印象だった。
ばかりか処女膜の検査をうけさせられ年端もいかないうちに初対面の男と勝手に結婚させられ初夜に血が出ていることを確認するためシーツをみせろと言われる世界。継父に性的虐待をうける描写もある。姉妹のひとりは拳銃じさつをとげる。
時代設定も2010年代なので、なにが楽しくてこんな仕打ちをしているのかわからなかったが、保守的な因習もさることながら里親(継母父)の監督下であることが彼女たちの境遇を地獄にしていた、と思われる。
実親がいない火垂るの墓の兄妹みたいな境遇(=親類の家に居候になる)であり、徹底して自由を奪われ、まだ幼いうちにひとりづつ厄介払い(=嫁に出される)されていく。
脱走を真剣に考えるのも無理はなかった。
しかし脱走といっても末娘ラーレ(ドラマはラーレの視点で進行する)は、およそ10かそこいらの少女である。どうやって、どこへいけば、だれにすがれば・・・圧倒的に不利な条件の脱走劇はまるでミッドナイト・エクスプレス(1978)のようにはらはらさせた。
ラーレはしばしば近所を通るトラックのあんちゃんにクルマの運転を教わり、長女次女は嫁にやられ三女はじさつし四女とじぶんのふたりきりになったとき脱走計画を実行する。
内容はアムネスティインターナショナル推薦といった様相の男尊女卑世界だが演出が巧くサスペンスのように見ることができた。
概要によると監督Deniz Gamze Ergüvenはトルコのアンカラ生まれ。フランスに移住し映画学校ラ・フェミスを卒業している。初監督作である本作は彼女自身の体験を反映しつつ書いたそうだ。
邦題の裸足の季節を検索すると松田聖子の曲が出てくるが、おそらく制服少女らの装丁に裸足の季節と名付けることによって岩井俊二みたいな映画だと勘違いして見てくれる層を拾いたかった邦題だろうと思われる。が、とうてい裸足の季節なんていう感じの映画じゃなかった。
原題のMustang(ムスタング)は概して馬の品種を言うが、この映画では少女たちを調教されていない荒馬、あるいは調教を拒む荒馬と見立てた──のではないかと思われる。
ただしこの映画でもっとも恐ろしいのは少女らの諦観だった。末妹ラーレはまだ抗って逃亡してやろうという意欲・気力をもっている。でも姉たちは希望をうしない諦めの境地に入ってしまっていて、うつろな目がいちばんつらかった。
映画は称賛で迎えられ賞レースも幾つか勝ったがトルコ国内での評価は二分したという。
体制批判の映画でもあるゆえ、国内の賛否は分かるがトルコは西側のふりをしつつ親ロシアだったりで、微妙な国だ。西洋とオリエントが折衷している文化同様、規範にも東側と西側が混交している。時代設定ではエルドアンよりも前だが絶句するほど封建的な世界だった。
ちなみにトルコというと必ず親日だとかいうお人好しがいるが「親日」という言葉は人単位の話であって国単位の話じゃないと思う。
imdb7.6、RottenTomatoes97%と88%。
監督の眼は特筆もの
日本の民法もその例に漏れませんが、どこの国の民法も「父の捜索」を禁止しているのは、少なくないだろうと思います。
子供を産むことができるのは、物理的には女性だけに可能なことですし、真の父子関係は外形的には確定が難しいことから、「父の捜索」の禁止は、あらゆる法律関係の基盤となる親子関係(父子関係)を早期に確定させ、安定させるるために、法律が編み出した「生活の知恵」ともいうべきものなのだろうと思います。
一般の社会生活の上でも、女性(とくに女の子)にだけ、貞操教育に力か入れられたり、「慎ましさ」が求められたり、家庭の中に閉じ込められたり、結婚後は社会を離れて家庭に入ることが強く求められたり…というのも、考え方・目的として、前記のような法律制度と共通の基盤に基づくように、評論子には思われます。
法律制度は、それはそれで一定の合理性があるとも言えるのでしょうけれども、それを離れて社会生活一般にまで、そういう「規制」(?)を推し及ぼすというのはいかがなものでしょう。
そして、本作のような世の中が「かつては、あった」という時代が来ると良いと思うのも、また評論子だけではないと思います。
声高に叫ぶ訳でもなく、しかし余すところなく鮮やかに剔抉した本作のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の眼(観察力、洞察力)は、特筆すへきものと評論子は思います。
佳作と言えると思います。
すごい
少女達の青春のきらめきと、自由への咆哮が主題。
冒頭の下校のシーンは眩しさに目が眩むような美しさでした。
反骨精神の権化のような姉妹で、胸がスカッとします。
後半にかけての鬱屈した雰囲気も好きです。
進まないストーリーの中で気怠く過ごす姉妹の美しさが目に毒です。
とにかく彼女たちの関係性も含めて、背徳的なまでに美しい姉妹でした。
自由を求める叫びが聞こえる様な映画でした。
たしかに彼女たちは吠えています。
せめて二人は輝いて!
今でも実際にある慣習なのだろうか。虐待だよね、児童相談所に通報ものだよね。しかも、あのオジサン、おかしいでしょ、言ってることと、やってることが。毒づきながらも、美しい危うい妖しい5人姉妹と情景の美しさに引き込まれる。脱出に成功したものの、相談相手を間違えれば、連れ戻される。賢くあれ、少女たちよー、と声援を送らずにいられなかった。邦題の意味がよく分からない。
第一作目とは思えない
両親が亡くなり、祖母と叔父に引き取られた五人姉妹がいた。
学校で男友達とはしゃいでいたのを近所の人に告げ口され、叔父は家に軟禁してしまう。
長女は好きな男にプロポーズさせてうまくいく。
次女は見合い結婚させられ、初夜でうんざりしてしまう。
三女は訳あって自殺、四女が見合い結婚する日に、五女が籠城、逃亡を図る。
悲劇ではあるが最後は応援してしまう。
見る価値あり
イスタンブールに憧れてるから
トルコの随分田舎の方なんでしょう。
日本の武家社会を思わせるような
時代錯誤の女性蔑視の世界…
5人姉妹かぁ、すごいなぁ。
序盤、チクった近所のおばさんの家へ
5人が猛然と抗議に行くところは怖かった(笑)
5人がじゃれてるところ、
サッカー観戦に行くところは
本当に清々しくてよかった。
見てるのが照れ臭いくらいだった。
テーマとしてはとても重く暗い部分のはずなんだけど、
5人姉妹の華やかさがそれを紛らわしていて、
お陰でちゃんと見れたようなきもする。
現実と考えるとひどい話。
しかし結婚式で祝いの席で
銃を打つ世界って…
あの弾どこ行くんだよ。
最後に希望
2017-02
トルコ何度も行ったから、あぁぁ、イスタンブール離れれば離れるほどこういうのまだ残ってんだろうなぁって実感みたいなものがあった。
最初、孫たちに厳しく当たるように見えるおばあちゃんが、自分の意思でそうしたいというよりも「息子に言われるから、息子に言われることから守らないと」っていう気持ちでやってるんだろうなというのがわかってよけいに切ない。おじがほんと最悪なやつだから、トラックの兄ちゃんがいて救われたな。
若さと自由の輝き
開幕早々、海辺で制服姿のままびしょ濡れになって遊ぶ美しい5人姉妹。
クッソ、一緒に戯れてぇ…。
絵に書いたような美人姉妹の物語と言うと、昨年邦画でも秀作「海街diary」があった。
が、本作はあちらのような見ていて癒されるハートフルな作品ではなく、瑞々しさの中にも刺がある「ヴァージン・スーサイズ」のような雰囲気を醸し出す。
トルコの田舎町。
両親を亡くし、厳格な祖母と叔父に育てられた5人姉妹。
海辺での一件が事の始まりだった。
男の子たちとただ遊んでいただけなのに、淫らな行為と決めつけられ、以来家に軟禁。
度々抗うが、やがて大人同士が勝手に決めた見合いで、上から一人一人嫁いでいく…。
まず目も心も奪われるのが、眩く光輝く5姉妹の無邪気さと映像美。
とにかく、この5姉妹がヤバい!
皆、揃いも揃ってボリューミーなロングヘアーの美人。
その魅力は「海街diary」の4姉妹や「ヴァージン・スーサイズ」の5姉妹といい勝負。
陽光を浴びながら、生足を重ね合わせて5人で寝そべるシーンは官能的な匂い。
クッソ、一緒に寝そべりてぇ…。
彼女たちの輝きを余す所無く映し捉えている。
あまり馴染みの無いトルコという国。
その田舎町の現状をまじまじと見知らされる。
封建的な制度、古い習わし、厳しい躾…日本だったら一体いつの時代だ?と思わされるしきたりに縛られる。
映画だから過剰に描かれているのもあるだろうが、全てがフィクションではない筈。
その窮屈さ故に中盤突然起きた事件にドキリとした。
5姉妹や映像の美しさを取り除けば、本作は危うさと脆さを秘めている。
そんなデリケートさを、感受性豊かな瑞々しい作品に仕上げた女流監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの手腕に魅了される。
話の主軸は末の妹ラーレ。演じたギュネシ・シェンソイのあどけなさと初とは思えない達者な演技力が一際印象に残る。
映画は、ラーレのある反抗と脱出で締め括られる。
思い切った行動だが、これは精神面の自立や意志の強さと感じた。
大人の言う事にいちいち反抗するワガママ娘たちと思われたって別にいい。
満ち溢れた若さと輝きと自由は、誰にも抑えられない。
美しい映画
厳しい教育?の中にあって、ただただ光る少女たちの奔放さ。
素敵な姉妹でした。
あの封建的な感じがトルコの現在なのかはわかりませんが、あんな生活は耐えられません。
ひとりが亡くなったのは最後まで引きずりました。
全員そろっての自由がよかったな…
『世界はひとつ』ではない。
世界は広く、様々なしきたり慣習はあれども…なんだかんだで恐ろしいのは「女」という生き物だな、と思った一本。
「自由」という言葉が引き合いに出されるが、制限はあれどもこの映画に出てくる女の子は皆自由奔放だよ?
器用に出来るか出来ないかだけが、姉妹の明暗を分けているだけで。
もちろんトルコの田舎の閉鎖的な風習、そしてどうしようもない雄社会も描かれているが。
それ以上に五姉妹の強かさが目立った作品。
隅々まで瑞々しい美しさをとらえながら 抑制的に描かれる物語
隅々まで少女たちの瑞々しい美しさをとらえながら
抑制的に描かれる物語。
残酷さや窮状を表現する名目で
少女の身体を晒しはしない。
そうした女性の身体の映し方自体が、
彼女たちが逃れようとする牢獄と同じものに根ざすのだ。
眩しいほどにみずみずしい美しさと
ストイックなまでの厳しさ。
こういう作り手があらわれたのは掛け値なしにうれしい。
この世もなかなか悪くないじゃないか、
足音が軽くなっていくのがわかった。
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