はじまりへの旅のレビュー・感想・評価
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普通ってなんだろう。ヘンテコな家族が教えてくれる、本当の幸せ。
【賛否両論チェック】
賛:森で暮らす一家の旅を通して、何が普通で何が幸せなのか、思わず考えさせられるのが印象深い。
否:展開はかなり静かで淡々としているので、眠くなるかも。
父の独特の教育方針から、森の中で大自然に囲まれて暮らし、それが当たり前の環境で生きてきた子供達。そんな彼らが最愛の母の死に際し、葬儀に出るために大都会へと出てくると、一変して彼らの生き方は、普通ではない奇妙なものに映ります。どちらが正しいかというよりも、何が本当に幸せなのか、そうした生き方の普遍的なテーマを問いかけてくるような、そんな展開に考えさせられます。
同時に、新しい世界を体感した子供達自身にも、新たな葛藤が生まれるのがまた印象的です。ボウが訴える、
「僕は本で読んだ世界しか知らない!!」
という言葉が、それを象徴しているようですね。
展開は静かなので、気をつけないと眠くはなりそうですが、忙しい毎日に息詰まった時には、是非オススメです。
家族愛を感じるファンタジー
深く考えないで、そのまま没入して、観れば、結構楽しめる。
文明から途絶した山奥から、都会へ出てきた大家族の心温まるお話。
「嘘でしょう」と言いたくなるのが、
幾つあるかで、貴方の知性が試されます
そう言う意味では、「反文明」「反社会性」
的な内容です。決して真似をしてはいけません。結果せいぜい餓死するか、崖から転落するか、刑務所に入ることになるでしょう。
まあそれが映画の楽しみでもありますがね。
気楽に観てください。
世間の常識に疑問を突きつける映画
家族ものの感動ロードムービーかと思いきや、この映画は、観客である私達が普段信じていた価値観に対し、絶えず疑問を突きつけてくる社会的な問題作だった。
常識とは何か?社会とは何か?幸せとは何か?教育とは何か……そんないくつもの疑問を、観客に投げ掛けてくる映画なのだ。
当初私は、変わった家族の面白映画かと思い、鑑賞に臨んだ。だが、見事に予想を裏切られ、観た後はこの世界の見方が変わってしまったような、衝撃を受けることになった。
序盤は、厳格な父親ベン(ヴィゴ・モーテンセン)と6人の子供達の、世間から隔絶された森の中での生活を描く。ナイフで鹿等の獣を狩ったり、自給自足の生活や、山の中を駆け抜ける等の訓練、そして読書を通して、父親は子供達に立派な教養と強靭な肉体を与える。その教育方法は独特だが見事で、学校に行かずとも、長男は名だたる有名大学全てに合格するほど。社会とは切り離され、一見奇怪な暮らしを営む一家だが、その生活は満たされているように見える。
しかし、入院中の母が自殺したという知らせを受けたことから、家族は森を出て、母の遺言を果たすため、バスで遠く離れたニューメキシコへと旅立つことになる。
中盤は、これまで森に籠って生活していた家族が、初めて大都会や普通の人々に触れ、彼らの暮らしぶりを知ることで、子供達(特に長男や次男)が違和感を覚える様子を描く。そして、それまで家族に感情移入をしていた観客である私も、彼らと同時に、世間の常識のおかしさに疑問を持つようになった。
普通の人々からすれば、学校にも行かせず森の中で子供を育てたり、クリスマスではなくノーム・チョムスキーの誕生日を祝う家族は、カルトに見えるのも仕方ない。だがベンら家族の視点からすれば、一人で獲物も狩れず、本を読まずにゲームばかりする子供達の方が、生きる力の無い、か弱い人間達に見えてくるという不思議さ。
この辺りで、私は正直自分の常識や、信じていた価値観というものを疑わざるを得なくなったのだが、それはベンら家族も(逆の意味で)同じだったようだ。
後半、母の葬儀の乱入後に、旅を通して世間の常識に晒された家族は、あることをきっかけにバラバラになってしまう。
そして、それまで強い信念で父親をやっていたベンは、これまで子供達に行ってきた教育が、実は自分の価値観を刷り込んでいただけの、ただのエゴだったのではないか、と迷いを持つようになる……。
色んな家族の形がある、と時に人は言う。けれど、果たして社会は、世間の常識は、私達は、この映画の家族のような人々を、果たして実際受け入れることが出来るのだろうか……?
その意味で、この映画は単なる家族愛についての物語ではなく、観る人の価値観や良識を鋭く問いかけてくる、ある種の問題作のように思えた。
反面教師なハートフルムービー
社会性の欠如は
生きる上では大きな足枷だろう。
さらに頭でっかちでは
おいらとしては先行きかなり不安。
究極の教育方針に
馴染んでいる子供たちに
可笑しくもうすら寒さを感じてしまったが
それでもラストはしっかりと
ほっこりさせていただきました。
とてもよかった
山でサバイバル生活をする一家の話でワクワクしたのだが、もうちょっと狩や自給自足ぶりを見せて欲しかった。また、欲を言えば、家族の殺人マシーンぶりも見せて欲しかった。
焚き火の明かりで読書するのは目が悪くなるのではないだろうか。虫やダニにどう対処しているのか気になった。
長男がキスをされた途端、プロポーズするところがとても童貞らしくて面白かった。女の子の性も描いて欲しかった。
そんな彼らが文明社会と折り合いをつけなくてはならないところが悲しかった。しかし、お父さんもちょっと頑なすぎる。葬式に赤いスーツはどうかと思うし、本当に遺灰をトイレで流すのもどうかと思う。
お父さん以外全部好き。
登場人物、素敵。
映像、素敵。
演出、素敵。
テンポ、素敵。
お父さんの教育、大っ嫌い。
「ロリータ」の考察が、
そのままお父さんと子供達の関係に、
ピタリとハマる。
ラストシーンで、少し胸を撫で下ろす。
嗚咽が…
人里離れた山の中で暮らす、父親と子供6人。学校には通わせず、狩猟して生肉を食べたり、崖を登って滝行したり、けったいなスパルタ教育をする親父かと思ったら、『カラマーゾフの兄弟』や私もいつか読もうと思ってまだ手を出せていないジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』や物理学の本など、書物を通じて子供を教育し、クリスマスの代わりに人権主義者のノーム・チョムスキーの誕生日を祝って、物質主義、資本主義の問題点を教え、教室で学ぶ以上の知識を子供に与えている。それが、入院していた母親の死によって、祖父母の家で行われる葬式に向かうことに。
父親は確かに変わっているけど、それもこれも全て子供のため、妻と一緒に理想の教育を考えて実行していること。途中で立ち寄った、自分と正反対の妹夫婦の教育方針(というか普通の家庭教育)に対して強く否定するわけではなく、子供の反抗に対してもきちんと耳を傾ける。実際、妹夫婦の息子達よりも教育効果が上がっていることは誰の目にも明らか。
6人の子どもと力を合わせて愛する妻を失った悲しみを乗り越えていた、のに。祖父母の家で、それが綻び始めた。
妻と話し合って築き上げたこの教育方針は子供を傷つけることだったのではないか、と気づいて、とても辛い決断をする。それは自分自身の生き方の否定にも繋がることである。愛する人達と信念の両方を失って、生き直す主人公。
ヴィゴ・モーテンセンは50年代生まれなので、子供達の年齢からするともう少し若い俳優でも良さそうだけど、彼でなければならなかったんだろう。
アカデミー賞授賞式で彼の隣にいた、太ったロン毛の若者が息子だそうで、彼自身の教育方針に主人公と通じるものがあったのかもしれないと思った。
「悪意のない過ち」に気づかないうちは、本人も周りの人間をも不幸にする
この家族に肯定的な意見が多いことに、大きく違和感を感じずにいられない。
信念のある子育てを徹底していることには頭が下がる。それが、「普通」でないとしても。変人であることを否定するつもりもない。家族愛は強固だし、一人一人がたくましい。
だけど、どうも違うんだよなあ。
徹底したコメディなら笑って面白かったんだろうが、どこか説教クサかった。
たしかに、食事中にゲームに気をとられるような子供がいいはずはない。しかし、だからと言って、8歳(だったか?)にして合衆国憲法を諳んじ、その精神を自分の言葉で語れるようになることも、どうかと思う。そりゃ頭脳明晰で結構だろうが、この年代は友達と遊び、子供社会における社会性を身に付けることの方を、僕が親なら優先したい。
結局、ミッションのいくつかは犯罪なのだ。
救いは、親父が自らの「悪意のない過ち」に気づき、最後にようやく、ちょうどいい着地点での生活をはじめたことくらいか。
観る環境、年齢などで味わいが違う正解が無い作品。
観る前から、結末が想像出来てしまう気がしていたのですが…
どちらの生き方が良いとか、そう言う言う話では無く、核となる部分は人と人との繋がり。
自身の環境やまた見返す年齢によって、まったく違った味わい方が出来 年月を経て楽しめる作品では無いでしょうか。
映像もセンスもあり色あせない魅力を感じました。
家族の幸せ
とても面白かった。いわゆるロードムービーなんだけど、ちょっと変わった家族の成長を描いたハートフルな作品。
普通って何に?常識って?夫婦って?家族って?大人と子供の境界線って?教育って?愛って?色んな疑問を投げかけられゆく感じ。それを子供たちや家族の成長とともに、最後は意外な形で納得がいく結末を迎える。伸び伸びとしている子供たちがとにかく可愛い。葛藤したり認め合ったり人生って素敵と思える作品。観て良かった。
映像も大自然の情景豊かで全体的にカラフル♪笑って泣けて元気が貰える、観終わった後清々しい気分で笑顔になれるかな。オススメです。
偉大な家族
簡単に言うと風変わりな一家が山から下りてお母さんの葬式に向かうというお話ですが、奥が深い作品でした。
お父さんの教育は風変わりだけど子供たちは立派に育ってる。
普通に学校に行っている子よりもズバ抜けて頭が良く体も丈夫。
でも、子供たちは何か欠けてる感じがしました。
最初は感情なのかなと思っていたけど、お母さんが亡くなった事を聞いて皆号泣してたし、そうじゃない。
でも、その反応に私は少し違和感がありました。
上手く言えないんですが何か普通に見えなかったんですよね。
この映画のチラシに「普通ってなんですか?」って書かれてるんですけど。
その答えに実に困る。
テーマとしてすごく難しい。
ベンの教育は全てが間違いではないと思うけど極端過ぎたのかなと思いました。
ベンの妻や子らへの想い後悔。
子供達のお父さん、お母さんへの想い。
兄弟姉妹同士の想い。
家族の在り方とか難しい内容もあったけど、しんみりと泣いてましたね。
ラスト光景はとっても良かった、あのスタイルがあの家族には一番あってる気がします。
コメディではなかった
楽しくコメディを観る気で来たのだが…
あれま、びっくり、大まじめじゃないか。
だいたいチョムスキーって誰だよ? さっそく調べてきたよ。米国の多く引用された有名学者にしてアナーキスト、労働組合を中心にした無政府主義、アナルコ・サンディカリズムを唱えた。…なんて、歴史や思想に詳しくなるために観たんじゃなーい!
自然の中で、心身を鍛えながら、自然を食み、本から学習するという生活が素晴らしいか、という話だが、作者は肯定的に描き、自分はあまり肯定的ではないことがわかった。
だから、あれあれという間に終わった感じ。
ただ、主人公も子役たちも上手だったので、退屈ということはなかった。
みんなの評価を見て、こういう生き方に肯定的な人が多いことには少しびっくりしました。
どんな家族にも訪れる「変化」を描いた物語
ホームスクーリングが珍しいことではないアメリカの社会では、極端に考えればこういう家族がどこかにあってもおかしくないかもしれない。森の中で子どもたちを育て教育し心身ともに鍛え上げる。「LIVE」よりも「SURVIVE」をより叩き込むようなその家族の方針は、確かに風変わりに違いないが、その分、知性も体力も一流の超人を産み育てている。しかしこの映画は、そんな彼らの風変わりさを笑ったりするコメディ映画ではないし、彼らが特別な何かを成し遂げるサクセスストーリーでもない。ひとつの少し風変わりな家族を通じて、どんな家族にも必ず訪れる「変化」の時期が描かれていた。
大きなきっかけは母親の自殺で、「今まで通りに暮らそう」という父親の言葉とは裏腹に家族全員に抗えない心の変化を生み出す。そしてそれを引き金に、反抗期を迎えた次男の存在と、巣立ちの時期を控えた長男の存在が、今まで通りの家族像に大きな揺さぶりをかける。でもこういったことって、彼らたち家族だけに起こり得たことじゃなくって、私たちが育った家族の中でも、そしてこれから私たちが築くかもしれない家族の中でも、普通に起こる出来事。風変わりな家族の風変わりな物語に見えて、普遍的な「家族の変化」の様子を、ユニークかつとても正直に描いていて、とても好感が持てたし、後半に進むにつれて、大きく心動かされる部分があった。
やはりこの家族を率いる父親像として、ヴィゴ・モーテンセンの存在は大きな役割を果たした。彼が持つ野性味と、群れを感じさせない一匹狼感、それでいて雄大な度量を感じさせるところなんか、この役柄にぴったり。逆に、ヴィゴ・モーテンセンじゃなくちゃ説明がつかないのでは?と思うほど。彼自身も、この役柄を風変わりな男としてではなく、一人の父親として捉えて演じている様子が窺えるような真摯さを感じ、静かに胸を打つ深い愛のこもった素晴らしい演技を見せてくれていた。
それと・・・。やっぱり男の人は髭を剃ってた方が若々しくなって良いよね(美しい男は特に)というどうでもいいことを思ったりして。
お父さん!
森の中で自給自足。サバイバルな毎日を送っている家族。母が自殺してしまい、子供達と葬式に乗り込むっていう話、そして、母は火葬を希望していたから、土葬を掘り起こして、家族で燃やして、空港のトイレに流してしまうっていう話。
ストーリーを纏めたらこうなってしまうけど、本当に感動した。
ボロ泣きもボロ泣き。久々に頭痛くなるくらい泣いた。
ハンカチティッシュを忘れてしまった為に鼻水が物凄いこたになってしまった、、。
映画館に行くのに忘れるなんてバカでした。
コンピューターやゲーム、テレビ等には全く縁のない、いえば変わり者になってしまっているヒッピー家族。
だけど、芯が通った父の行動や言動が胸打つ。子供達も一時反発しそうになるけど、父の事を本当に愛していて戻る。
父も義父等からの助言を受け、気持ちの変化が起きる。その時の父の葛藤する表情が物凄くよかった
説明が難しすぎて上手くいえないけど、本当に感動した。
子供の気持ちもわかるし、父の気持ちも、妹の気持ちも、義父の気持ちもわかる。
だからこそ苦しいし、優しい気持ちになれる!
また見たい。そしてDVD欲しい
親子の絆は教育でつくるものではない
どうも予告映像はミスリードを誘おうとしてるのか、コメディ映画っぽい印象を受けたけど、結構真面目なテーマを扱った見応えある作品だった。
森では頼りになる長男のボウが町で女の子に会うと硬直してしまうのが、とても微笑ましかった。特にカーキャンプ場でのメアリとのやり取りは笑えた。
そんな風に素朴に育った子供たちだが、生きるための知識と教養は恐ろしいほど植え付けられている。
俗世間から切り離される一方で、性のことや近親の自殺など普通は子供には包み隠す様なことを教えられてきた子供と、それらをオブラートに包んで教えず、逆に俗世間にはまみれて育った義妹夫婦の子供との対比が面白い。スニーカーのメーカーも知らず、TVゲームも触った事がないが、憲法や生物学や物理学など大学生並みに知識を備え格闘術まで身につけた子供と、普通の一般的な子供。主人公の教育と義妹夫婦の教育はどちらが子供にとって良いのだろう?と考えさせられた。
ただ、主人公の教育で現金とは無縁の生活ゆえの、絶対に擁護できない部分があって、主人公の教育方針を正当化するのは分が悪い。それは義父との子供たちの教育について議論した際に露呈した。主人公もそのおかしさに気づいてはいたろうが、資本主義への嫌悪故に見逃していたのだろうね。義父にそこを追求されると何も言い返せなかった。
あまりに行き過ぎた自然主義はカルト宗教に近く、様々な出来事を通してベンは自分の考えの至らなさを受け止め、そして父として成長します。親子の絆も感動的です。観た後、爽快な気持ちになれました。
ただ、妻のレスリーの自殺の原因がハッキリとしないのが釈然としない。子供たちの母を慕う気持ちと、子供たちを置いてあの世へ旅立った母との気持ちの差に乖離を感じずにはいられなかった。
そしてこの映画を観れば、健全な人間を育てるには教育勅語が必要とか言ってる人間の滑稽さに気づけるはずです。
ポリシー貫くって時々すごくハード
すごく好み。作品のテーマとしてある「"ふつう"と"自分のポリシー"の折り合いに悩む人間」「自省という在り方」の描き方が好き。あと、色合いがオシャレ。
チョムスキーとか毛沢東主義とかエスペラント語とか焚き火の回りで読んでた本(タイトル一個も覚えてない…)とか権利章典とか、彼らの価値観の裏づけになる小ネタがいっぱいあったんだけど、私はどれも碌に知らないので、その辺をわかってたらもっと楽しめる範囲が広がったと思う。
回想でしか登場しない、母・レスリーは、森から出てふつうに子供を育てるべきか、森に篭って自分たちが大事だと思う事を徹底的に習得させるべきか、その間で苦しんでたのだろうなと思う。
ベンもレスリーも無思考な右倣えが嫌いで、ふつうに暮らすのも苦痛だし正しいとも思えない、けれど一方で完全に世間と切り離されて生きる事はとても難しい。子供にとっては強い肉体と深い洞察を育む環境は素晴らしいけど、選択肢を狭めてもいる。
ベンの教育方針は民主的とも独裁的とも取れるし、良いとも悪いとも取れる。
レスリーの死因や性知識や、高度な物理学や哲学のように、大人が"まだ早いから"と子供から遠ざけるような情報でもストレートに与える点は、自由と議論を尊ぶ立派な父親のように見える。そうかと思えば、コーラを"毒の水"と誤魔化したり、ふつうのお祝いをよく知らないレリアンにクリスマスがチョムスキーの誕生日に勝る理由を説明させて議論を装った異論の叩き潰しをしたり、独裁的な側面もある。
中盤で「ロリータ」を読んでいるキーラの感想は、ベンにも当てはまるなと思う。間違いなく深い愛情はあるけど、判断力の無い子供を偏った世界に切り離してる。一方で、ふつうの育て方なら本当にそれは子供の権利を侵害していないのかっていう疑問も頭をよぎる。資本主義やキリスト教やその他膨大なふつうを押し付けて、それ以外の生き方を否定するのだとしたら、それだって子供の選択肢を奪っている。森に子供を隔離する親も褒められたものじゃないけど、娘の希望を無視してキリスト教式の葬儀を強行するような親も、難しい事柄は子供から隠して権利章典も碌に学ばせられない親も、どれも省みるべき点はある。
ベンがただの毒親では終わらなかったのは、自省が出来たところ。ボウやレリアンから反発を受けて、ヴェスパに怪我をさせて、レスリーの苦悩を手紙から読み取って、自分の在り方を問い直せた。ベンが今までを否定した事で、子供は再び選択の機会を得、自発的にやりたい方へ進むことができた。科学が宗教と違う点は、科学に「絶対」が無く常に自己否定の可能性を内包してる点だと聞いたことがある。ベンは科学と論理の立場で、家族の自由を確立したんだなと思う。
キャッシュ家ほど極端な例は珍しいけど、世間一般と自分との距離の取り方で悩むって、多くの人が直面している事だと思う。何もかも右倣えは窮屈で仕方ないけど、世間から指図を受けない世界へと完全に引籠もるのも難しい。思春期に「普通ってなんですか?!!!?!??!??」ってキレたことあるし、正直今でもそう思う時ある。火葬がいいって言ってるのに、自分以外の人間や下手したら顔も知らない赤の他人から、キリスト教の土葬が幸せって決めつけられて押し付けられる。議論の余地もなく。こんなの屈辱以外の何物でも無い。葬式に超オシャレなヒッピースタイルで乗り込むシーンとか、墓を掘り返すシーンとか、トイレに遺灰を流すシーンとか、粛々とロックで、観ていてとても良い気分だった。
キャッシュ家が大変なのはこれからだな、と思った。森から出て、人に交わるようになった子供達やベンは、"自分の哲学"と"世間一般のふつう"の間で、折り合いをつけなきゃいけない。ボウが言ったように「本で読んだ事以外何も知らない」状態で、未知の"ふつう"と適切な距離感で付き合わなきゃならない。でも、サバイバルと学問で身についた基礎力で、なんとかなるんだろうなと思わせるラストシーンだった。
パパが最高
見たことがない、すばらしい家族愛!パパの判断にものすごく共感できるが、普通の生活をしている妹の気持ちも分かる。でも子供は親をちゃんとみて育ち、親を驚かせるほど成長している。もっと宣伝して広めて欲しい
全162件中、121~140件目を表示