「彼らの生き様をずっと見守っていたくなる」はじまりへの旅 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
彼らの生き様をずっと見守っていたくなる
シカを狩り森の中で鍛え焚火のまわりで勉強する家族、あらすじと予告編で分かっちゃいたけど実際スクリーンの映像で見るとやっぱり面白い。
父と6人兄弟それぞれ個性的であり純粋でたくましくて、もうそれだけで魅入られる。
母親の自殺がきっかけになって森からニューメキシコへ向かい、都内の人間と交わる家族。
自然界でたくましく生きてきた人間と社会のルールに従って生きてきた人間、価値観の違いが強く表現されてた。
多分どちらも正しくて正しくないんだと思う。
自分の力で生き抜き、考え、学びの喜びを知る生活って人間本来の姿だと思うし、そう生きる姿は美しく見える。
でもそれだけじゃやっぱりだめなんだと。
学校で集団の中で学び、社会に出て働いてお金を稼ぐいわゆる普通の生活って実際必要だし人間の成長に結びつくはず。
この映画の父親ベンは面白いけど偏っていたと思うし、でもそれに気付くことができて良かった。
子供達も自分の生き方を自分で選択して、結果ちょうどいいところに収まったんじゃないかな。
ヴェスパーが屋根から落ちた時はもうどうなるのかと気が気でなかったけど、森で鍛えていた結果か大事に至らず安心したし、反抗期気味のレリアンもうまく和解できて良かった。
母親の描写がかなり少なかったのは気になった。
子供達と母親が接してる場面が無かったのでイマイチそこの絆の強さが伝わってこなかった。
母親が精神病で苦しんでいたり、両親が子供達のことで色々揉めていたりしていたのは説明されていたけど実感がないので観てる側からすると唐突に感じてしまう。
それでも家族で愛し合っていたことは分かるし、最後の火葬のシーンなんて倫理的にどうなのって思いつつ歌と演奏も相まってすごくジーンと来ちゃった。
とにかく色々な人に共感できた映画。
コメディ要素は多くて笑えるしほっこりするんだけどシリアスでもあって
現代社会への風刺やナチュラリストへの風刺、家族のあり方や人生どう過ごすか、色々グサグサ刺さるものも多かった。
今の私に力を与えてくれる、観て良かったと思える映画だった。