バード・インフェルノ 死鳥菌のレビュー・感想・評価
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パンデミック、それは人間の尊厳を問う闘いである・・
アメリカのABCが製作した、まるで今のコロナ禍を予見したようなパンデミックテレビ映画です。
映画ではH5N1の鳥インフルエンザです、致死率40~60%と高く社会的混乱はコロナの比ではありません、医療崩壊、物流の停滞、治安の悪化など生々しい被害の様子が描かれます。
「コンテイジョン」は医療監修のしっかりしたドラマ仕立てでしたが本作はワクチン開発過程とかサイエンスの部分は端折って、パンデミックに晒された市井の人々を淡々と描くドキュメンタリー風に寄せています。マスクの配給を尋ねる少女に「中国製だから無理だ」と言い放つ役人のセリフのなんとリアルなことでしょう。
登場人物に散々感情移入させておいて死なせるお涙頂戴のドラマ仕立ては避けたかったのでしょう。
米国の第一感染者でありキャリアとなったコネリーの家族、感染症の専門家、医療現場の看護師と帰還兵の夫、バージニア州知事一家などの視点で身近でおこる混乱や悲劇を綴りますが場面転換が速く飽きさせません見事です。
アメリカらしく具体策は各州知事に委ねられバージニア州では隔離政策がとられますが対策センターのアイリス・バーナック博士は「既に手遅れ、隔離では防げない、この危機を乗り越えるには彼らの人間性を失わせないことが重要」と説く。知事は、「君は運命論者か、私には断固戦う責任がある」と突っぱねる。しかしながら有効策のないまま遺棄される死体の山を見た知事は人間の尊厳のようなものに気付くのだった。夫を亡くしたコネリー一家もご近所の一人住まいの老婦人が買い出しにも行けず餓死寸前のところを救い、地域ボランティア、共助の輪を広げてゆく。
なんとかワクチンも出来た矢先、アフリカで変異した亜種が蔓延を始めるのだった・・。
残念ながら今の世界情勢、医学では救える命にも限りあり、東洋哲学のような死生観に振らざるを得ないのは達観しすぎの感もあるが現実は厳しい。
未だ収束の見えないコロナ禍の中、追い打ちをかけるような厳しい現実を予見した映画があったとは驚きです。
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