ブレンダンとケルズの秘密のレビュー・感想・評価
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ニコニコ・ワクワクの鮮やかな映像
3Dアニメが全盛の中で、アイルランドのアニメスタジオ、カートゥーン・サルーンの手書き感を残した画作りはやっぱり素敵だな。
アイルランドの国宝で、「世界で一番美しい本」とされる「ケルズの書」が書き上げられるまでの修道僧の少年と森の少女の活躍を描いたお話です。鮮やかな色使いとお伽噺っぽい冒険物語はニコニコ・ワクワクと観ていられます。そして、本作の世界が自作の『ウルフ・ウォーカー』(2020)へと繋がって行く事もしっかり感じられました。
アイルランドの文化や歴史を知っていたらもっと深く楽しめたんだろうな。
ちなみに、本作のテーマである「ケルズの書」の各頁のデジタル画像は、トリニティカレッジ図書館のオンラインコレクションで観る事が出来ます。
民話が好きな方にはおすすめ
ケルティックなサウンドに乗せたアニメーション。
作画が実に海外っぽく、その動きにも独特なものがあります。
民族的な意味合いが強く、そういった意味では少し地味な側面も。
前半はひたすら閉塞的な風景と色使い、アシュリと出会ってからの色彩は対比が効いていて素晴らしい。特に森が何とも美しいんですね。
ずっと緩やかな流れですが、自立する決意ができた頃から急に面白くなる。
陰鬱なトーンだった色味は色彩を帯び、音楽も合わせて変化していきます。
それとテイストは違うものの、随所に「もののけ姫」を強く感じます。
あと、バイキングが攻め入った時の絶望的な描写は見事。
最後は絵本を閉じるかのような、実に静かな終わり方。
民話が好きな方にはおすすめな作品ではないでしょうか。
アイルランドの映像美!
今池のシネマテークにて、映画「ブレンダンとケルズの秘密」観てきました。
前に予告編でこの映像美にもってかれ、内容はともかく絶対映画館で観とこうと。
で、大正解。
アイルランドのアニメーション技術、色彩感や深み、そこに渦巻きケルト模様、オオカミの妖精と、縄文的な感覚にも魅了される。
9世紀のケルズ修道院にバイキングが襲来し、不思議な力を持つケルズの書が出来上がるまでを描いたストーリーも音楽も、この絵を引き立たせるのになくてはならない内容。
書が完成し、万華鏡のように輝きながら浮かび上がって、まるで生きてるように動き出す光のシーンは圧巻!
見終わって窓から見た夕陽と布池教会のシルエットもすごかった。
物語は神界の縦軸と人間界の横軸を交差しながら進んでゆく。
人間界ではバイキングの襲来に備えて砦を築くケルズの修道院が舞台となる暗黒時代。
砦の外に広がる森には妖精や、だれも太刀打ちできない暗黒の魔物がいる。
どちらにも闇がありつつ、あきらめずにただひたすら光を取り戻していく物語。
女子供も皆殺しのバイキング襲来という恐怖の中、ケルトの人たちは一切の武器を持たず逃げるしかないという時代。
縄文以降の日本を想う。
幼いブレンダンは未完成のケルズの書と出会い、クリスタルの第三の目を手に入れキーローページを描き上げ、旅の中で青年となってついに完成し、光を取り戻す。
古代の石にも渦巻き紋。
ニューグレンジを思わせる場面も。
画面の至るところにケルトの渦巻き。
窮地の中でも希望があるのは、そんな再生の力を秘めた渦巻きにある。
妖精が力をかしてくれるとき、この渦巻きは画面一杯に回転。
そうした古代の叡智、再生の力による“救済”が物語の根底にある。
クリスタルでできた第三の目をつかって描かれたケルズの書は、妖精が描いたみたいっていうセリフがあるように、拡大鏡でなければ見えない極細部まで、ケルティックスパイラルで緻密に描かれたミクロコスモス。
美しい書
歴史的背景はよく知らなかった。
内を守り、外に出そうとしないおじさんの存在は、モアナも同じ背景であるが、自らの意思と判断で社会へと踏み出す少年の普遍的な物語がよく描かれる。闇が支配する世界においても、人類と社会の証である文明と智を遺すというのも普遍的なテーマであるし、この書の存在自体がその証明である訳だが、先のテーマ設定と併さって、王道といっていい物語に仕立てられている。
美しい書と対になる美しい画、その表現の妥協ない創造性の高さ。圧倒される。
とにかく綺麗
綺麗というか美麗というか…アートアニメーションとしてとても秀逸な作品です。
キリスト教信仰を守るために本を書き残そうという少年が、ケルトの(要するに異教なんですが)物語に溶け込んでいくのが不思議ですが、日本人には理解できる感覚のはず。
飽きさせないケルト音楽も素敵。
☆☆☆★★★ 宮崎駿の正当なる継承者の長篇デビュー作。 宮崎駿はエ...
☆☆☆★★★
宮崎駿の正当なる継承者の長篇デビュー作。
宮崎駿はエンタメ性に拘るが。この監督の場合は、より土着性やアート志向への拘りが強く。それは長篇デビューの本作品から遺憾無く発揮されている。
話の内容自体が日本人には馴染みが薄く、且つ『ソング・オブ・ザ・シー』と比べてもとっつき難いので、なかなか作品の良さを伝え難いのが残念。
それでも観た人なら解って貰えると思うのですが。今回も『ソング…』同様に、その色使いの凄さに圧倒されました。
とりあえず貴方がアニメーションのファンならば、絶対に観て損は無い…と断言しておきます。
(2017年8月16日 恵比寿ガーデンシネマ2)
過酷な前半を耐え後半怒濤の感動
歴史的な伝承や伝説が中心の話であり、そこに史実や哲学的な要素も絡んできて、正直、多少の事前知識を要すると感じた。
鑑賞の下地となるべきものが欠落していた自分にとって、この作品の前半部分はかなり忍耐を要した。何度も意識が飛んでしまい、もはや物語について行けないとまで感じた。
しかし終盤、物語が急展開を迎えると、前半部分の欠落など気にすることなく、壮大な物語を大いに堪能し、作品に潜む志を強く感じて、芸術性豊かな絵と相俟って、すっかり感服してしまった。
また特に付け加えたい感想として、音楽の素晴らしさがある。アイリッシュとヨーロピアンジャズを掛け合わせたサウンド、時に軽快で時に哀愁漂うその音色も十二分に作品を盛り立てていたと感じた。
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