劇場公開日 2017年7月29日

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「アイルランドの映像美!」ブレンダンとケルズの秘密 fuhgetsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5アイルランドの映像美!

2018年8月12日
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鑑賞方法:映画館

今池のシネマテークにて、映画「ブレンダンとケルズの秘密」観てきました。
前に予告編でこの映像美にもってかれ、内容はともかく絶対映画館で観とこうと。
で、大正解。
アイルランドのアニメーション技術、色彩感や深み、そこに渦巻きケルト模様、オオカミの妖精と、縄文的な感覚にも魅了される。
9世紀のケルズ修道院にバイキングが襲来し、不思議な力を持つケルズの書が出来上がるまでを描いたストーリーも音楽も、この絵を引き立たせるのになくてはならない内容。
書が完成し、万華鏡のように輝きながら浮かび上がって、まるで生きてるように動き出す光のシーンは圧巻!
見終わって窓から見た夕陽と布池教会のシルエットもすごかった。

物語は神界の縦軸と人間界の横軸を交差しながら進んでゆく。
人間界ではバイキングの襲来に備えて砦を築くケルズの修道院が舞台となる暗黒時代。
砦の外に広がる森には妖精や、だれも太刀打ちできない暗黒の魔物がいる。
どちらにも闇がありつつ、あきらめずにただひたすら光を取り戻していく物語。
女子供も皆殺しのバイキング襲来という恐怖の中、ケルトの人たちは一切の武器を持たず逃げるしかないという時代。
縄文以降の日本を想う。
幼いブレンダンは未完成のケルズの書と出会い、クリスタルの第三の目を手に入れキーローページを描き上げ、旅の中で青年となってついに完成し、光を取り戻す。
古代の石にも渦巻き紋。
ニューグレンジを思わせる場面も。
画面の至るところにケルトの渦巻き。
窮地の中でも希望があるのは、そんな再生の力を秘めた渦巻きにある。
妖精が力をかしてくれるとき、この渦巻きは画面一杯に回転。
そうした古代の叡智、再生の力による“救済”が物語の根底にある。
クリスタルでできた第三の目をつかって描かれたケルズの書は、妖精が描いたみたいっていうセリフがあるように、拡大鏡でなければ見えない極細部まで、ケルティックスパイラルで緻密に描かれたミクロコスモス。

fuhgetsu