「好みが極端に分かれるシニカルなコメディ」神様メール うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
好みが極端に分かれるシニカルなコメディ
セリフが文学的なのか、たまたま翻訳字幕担当の松浦美奈さんの意思が働いたのか、はっきりしませんが、使われる言葉は直感的で、無機質な塊のようなものばかりです。
日本人の大多数は、一神教に対するニュートラルな志向があるので、案外、抵抗なくこの映画の世界観を受け入れられるのかもしれません。
神様が、そこら辺にいるようなむさいおじさんで、そのあまりに暴虐な振る舞いに我慢できなくなった神の子エアが、兄である同じ神の子イエスのアドバイスに従って、人類の救済を求めて6人の使徒を探して旅をするという風変わりなコメディです。
見せ方がとてもスタイリッシュで、人間の「余命」がメールで届くというシチュエーションを一瞬で分からしめる面白さや、探し当てた使徒たちの、それぞれが持つ奇妙な価値観に共感を覚える語り口に加え、ダビンチの名画「最後の晩餐」を使った使徒たちが増えていくヴィジュアルなど、おとぎ話として楽しめる映画です。
神職の男が実物の神に馬乗りで殴り掛かったり、結婚関係の破綻よりも目の前の欲望を優先する人間の業など、シニカルな目線で愚かさをあぶり出し、神様を信じる人には受け入れがたいような描写があふれていますが、あえてタブーに挑んだブラックなユーモアが新鮮な驚きを感じます。
ひとりの少女のロードムービーとして見ても、楽しめますね。
ただし、結末にはかなりがっかりしました。とにかく、ありとあらゆる秩序が崩壊するさまを、肯定的に、ライトに、受け入れてしまう人間なんて、そんなにたくさんいるでしょうか?
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