「子供の成長が地味に感じ取れる」ルーム 森泉涼一さんの映画レビュー(感想・評価)
子供の成長が地味に感じ取れる
納屋に閉じ込められた親子ジョイとジャックの二人きりの生活が続く中、「モンテ・クリスト伯」をモチーフにし死体のふりで脱出を試みる考えは鋭い洞察力といっていいほど面白い。女性と子供、しかも閉じ込められ満足に栄養をもらえていない体で男に歯向かうのは無理だと判断した上での直観的な行動に理がかなっているようにも思える。
本番はこの脱出劇が終わった後に待っている。この監禁事件に群がるマスコミたちに追われる日々の中で、当分は静かに暮らしたいと願う親子。
着目したい点は監禁されていたのは子供だけではない点だ。ジャックは物心がついた時から納屋からの景色しか知らない、部屋が全てだと信じきっている子供。一方、母親のジョイも何年もの間監禁され深い傷をおっている。二人を客観視するとどうしても子供に感情を揺れ動かされるが、本作が秀逸なのは母親の目線にも立った描写を細かく描けているところにある。そしてここから派生して子供の成長を地味に描けているのも素晴らしい。
子供の素直で正直な気持ちと自身の知らない世界が入り込みすぎて困惑している感情を最大限に引き出す演出。心身ともに限界を感じた母親を見た子供の感情に変化を感じ、その様子が地味な成長へと繋がっているのが垣間見れるのは面白い。
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