「箱庭の中の小さな部屋。」ルーム るるる〜さんの映画レビュー(感想・評価)
箱庭の中の小さな部屋。
食料やライフラインを支配し、鍵で自由を奪い、暴力で屈伏させることでしか女性と関わることができない無職のソシオパス。
犯人像はややステレオタイプ的だけれども、言葉や文化が異なっていても性犯罪者のイメージは世界で変わりないというのはちょっと驚いた。
歪んだ女性観、狂った倫理観、狭隘で閉じた世界観から産み出された、庭の片隅にある、あの天窓の付きの小部屋という病的で空疎な性犯罪者の世界。
誘拐され、監禁され、犯され、獣の子を身籠った少女にとってあの小部屋が世界の終わりだったはずだ。
けれども、生まれて来た子供にとっては小部屋こそが世界の始まりだった。
脱出を期に開かれてゆく少年の世界。
あまりの情報量の多さに、目映く正視できない様子を巧みなカメラワークと視覚効果で表現している。
救出後、世界の現実を突き付けられる。
いつの間にか母親となっていた少女に戸惑う被害者家族。
止まったままだった時間も失われた人生も、物凄い勢いで襲いかかってくる。
被害者なのに味方が誰もいないかの様な孤独感と絶望感。
この辺りが一番難しく重苦しいかもしれない。
誘拐監禁事件をモチーフにはしているけれど、世界の認識についてが本来のテーマなんだろうか?
だとしたら現代思想好きにはいい映画かもしれないけど、重苦しいテーマでジャック役の子役の名演が無ければ徹底的に胸を締め付けられるだけで映画館を後にしただろうと思う。
終盤にジャックが「この部屋縮んだ?」と問いかけるシーンは印象的。
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