「普段の生活に息苦しさを感じている人たちへ」ルーム catさんの映画レビュー(感想・評価)
普段の生活に息苦しさを感じている人たちへ
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最初は舐めてました。部屋から脱出してハッピーエンドだと思ってました。
そうじゃないんですよね。そこから先も大変なんです。騒ぐマスコミ、帰ってきた二人を受け入れられない父親、事件前の無傷だった学生時代には戻れないジョイ、そういった現実とも向き合わなくてはならない。グランマも義理のグランパも真剣に2人のことを考えてくれます。それでもジョイにとっては辛い。それを乗り越える勇気をくれるのがジャック。髪を贈るシーンで涙がこぼれました。
狭い部屋からの解放、広い社会と対峙し乗り越える解放、辛い過去を受け入れ乗り越える解放、その3つの解放が描かれていました。特殊な事件の映画ではあるけれど、これは決してわたしたちと無関係なことではないです。広い社会と対峙するのが怖い人、普段の生活に息苦しさを感じている人たちへの応援歌です。
子供を持つ身としては、ジョイの気持ちが痛いほど解りました。母親って、子への評価が自分の子育てへの評価だと思ってしまいがちです。異様な状況で育ったジャックですが、ジョイとしては精一杯愛情をかけ普通の子供と変わりなく育てた自負があります。だけど社会からは変わった経験をした親子と見られてしまう。テレビのインタビュアーが酷なことを訊くシーンがとても辛かったです。
最初出てきた時は髪が長くて女の子みたいで母親そっくりだったジャック。触れ合う人が母親だけだからそうなってしまいます。脱出後いろんな人と触れ合うことで段々と変化する、母親の分身から一人の独立した個性を持ちはじめる成長の映画でもありました。親子の絆をえがく映画でもあり、親と子はそれぞれ独立した人間なんだという映画でもあったと思います。
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