劇場公開日 2016年9月17日

「カニは友だち」レッドタートル ある島の物語 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5カニは友だち

2020年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 島でのサバイバル生活を過ごすのかと思ったら、いきなりイカダによる脱出劇。しかし、船底に何かがぶつかり、イカダはバラバラ。さらに大きなイカダを作り・・・と3度繰り返すも、赤いウミガメのおかげで砂浜に引き戻されるのだった。ある時、陸に上がったウミガメを恨みを込めて殺してしまう男。しかし、罪の意識に苛まれ、生き返らせようとするも手遅れ・・・その後、甲羅が割れ、そこには人間の女が一人倒れていた。

 色んな解釈ができそうな物語。細かく繊細な手描きタッチには優しさも感じられるが、人間の奥底にある憎悪も潜んでいる。序盤ではウミガメが産卵した砂浜から子亀がよちよちと海に向かっていく光景をじっと見ていた男。彼はカニも取って食おうとはしない。漂着したアザラシ(?)はちょっとだけ食おうと試みた。

 全ては男の妄想か?赤ウミガメは神の使いか何かで、男に子孫を残そうとする本能に応えたのか?どちらにしても幸せな一生を送ったに違いない男。しかし、赤ウミガメを殺した罪と贖罪については物語は答えてくれない。

 浦島太郎だったら、鶴の恩返しだったら、手塚治虫の「火の鳥」だったら?日本人の感覚からすれば、カメを助けなければこうした幸福感は得られないはず。もしや、ひとつの罪のために、カメとの異類婚姻譚で子孫を儲けるものの子どもを旅立たせてしまうといった罰なのか。それとも本当にウミガメ女が男に恋しただけ?などなど、頭を混乱させる内容でした。でも最後はちょっと悲しい。

kossy