「最後、もうひと押し欲しかった」君の名は。 saicacoolaさんの映画レビュー(感想・評価)
最後、もうひと押し欲しかった
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空にぬけるように広がる舞台。
それを包む大気に奥行きがあるのが分かる。
時や場所、性別を超えて見ず知らずの人と繋がるその奇跡を神秘的に描き出している。
夢のような情景に現実を感じるのは、作者がありのままにものを見て、そこに自分の見たいものを創造し重ねているからだと思う。
指摘されるような話の筋に対する違和感は人物の感情、物の道理を考慮しても特に強いものではなく創作上の自由の範囲を超えない。
人間間で心と体が入れ替わることや時間軸のずれに関する他の作品との類似性への指摘も、感じるところではない。
それは、入れ替わりに伴う神秘性そして、そのことの意味、それが向かう先を現実感を伴う奇跡のような情景とともに描き出していることによる。
この作品に私が求めるものは愛し合う男女間に起こる能動性。それにかかわる描写である。
もちろん話の筋における記憶に関する理由も重々理解するところなのだが、想う相手とのすれ違いや別れに対してあきらめがよすぎる。
作者監督の他の作品においても、相手への想いの現実における無力感が強く現れる。
相手を愛したいのであれば、あらゆる努力をしてほしい。
感傷に浸らずにちゃんと苦しんでほしい。
偶然に頼らず、二人の想いと、その行いで再会してほしかった。
最後、まごうことなくその言葉を言ってほしかった。
自ら紐を編み、繋がる二人をみたかった。
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