劇場公開日 2016年8月26日

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「何回でも見たいとそう思える作品」君の名は。 こばと。さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何回でも見たいとそう思える作品

2016年9月5日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

新海誠監督の最新作ということで過去作からの大ファンだった自分にとっては初日にぜひ行かなくてはと見に行きました。
感想としては新海誠の最高傑作という言葉しか出てきません。
新海誠の映画といえば、素晴らしい背景が世界観とキャラの心境を語り、詩的なセリフがそれらに色を加えていく。そんな文学的な作品が多かったと思います。その技法ゆえに秒速のような受け手にとってはBADエンドに見えてしまう残念なことが多々ありました。
しかし、今作ではその失敗をふまえてなのかは分かりませんが、かなり改善され文学的というよりは、エンタメ的な方へと方向性を変えました。その結果新海誠のコアユーザーにしか響かせることのできなかった世界観が一般的なユーザーがその世界観に入り込むように楽しめるようになり現在のような大ヒットに繋がっています。
今まで主人公が女々しいと嫌悪感を抱く人たちが多かったのですが今作では主人公の性格そのものが素直かつ単純、そして爽やかとかなり感情移入がしやすくなったと思います。文学的な表現は表面的には出さずシナリオ背景へと姿を隠し、素晴らしいイラストと、楽曲を邪魔しないように真っ直ぐに入ってくるストーリー。例えるならば水を飲むかのように体に溶けていくようなそんな不思議な感覚です。本当に素晴らしい調律が取れたがゆえにこの作品は奇跡の一作だと思います。自分自身書いたように、新海誠の大ファンではありますし、期待はしていますがおそらくこの作品を超える作品を作ることはもう出来ないでしょう。それほどまでに奇跡のような作品だと思います。
話はかわりますが前作からのファンの方が総じて新海誠らしくない、作家として書きたいことを曲げてしまうのはどうなのかと言われていますね。ですが僕はそれを全否定します。
前文でも書いたように表現の仕方を変えただけで本質的には同じことを新海誠は書いていると思っているからです。それこそ、君の名はと秒速では全く同じ主題を書かれているのではないでしょうか。
君の名はでは、過去で死んでしまった彼女と出会うために必死になる主人公。この状況はまさに気持ちを捨てきれずあかりのかけらを探し続けた秒速の貴樹と全く同じでしょう。そして、最後のシーンでは、君の名はではお互いに惹かれあったがゆえにあのエンドになった。秒速ではお互いにお互いだと分かりながらも過去を振り返らずに前を向いたがゆえにあのエンドになった。ただそれだけの違いだと思っています。まるでBADエンドが新海誠かのように語る人もいますが、新海誠の描きたいものはそこではなく、二人の気持ちのぶつかり合いなのではないでしょうか。
だからこそ過去作からのファンの皆さんもこの作品をらしくないと吐き捨てるのではなく、彼の表現が変わった。彼の世界観がみんなに伝わりやすくなったと喜ぶのがファンなのではないでしょうか。

こばと。